JR四国運賃値上げに伴う旅規改定

JR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)を更新し、5月20日JR四国運賃値上げに伴う旅規改定を追加した。

既報(2022年9月10日の記事)のとおり、JR四国は、100キロまでの運賃を賃率に拠らない対キロ区間制とし(77条の3、1項1号)、三島会社の100キロまでの運賃はすべて対キロ区間制になった。101キロからの200キロまでは、賃率を3円/キロ引き上げ、19円20銭とした(77条の3、1項2号)。201キロ以上の賃率は据え置き、本州三社、三島会社と同賃率*1JR四国は、これまで61キロ以上1,000キロまでの運賃を別表第2号イの2で特定していた*2が、同別表は削除され、100キロ以上の運賃は本来の対キロ運賃に戻ることになる。

また、1996年の運賃改定時に擬制キロ制を導入した際、激変緩和措置として制定された地方交通線関連の特定運賃(普通運賃:77条の7ほか、定期運賃:95条の3ほか)が廃止された。このため、別表第2号イの2のほか、11の別表が削除された。また、旅規85条の2の児島・宇多津間の加算運賃に対し、85条の3で規定していたこれを緩和する特定運賃が廃止され、85条の2の本則どおり適用されることになった。

*1:JR九州は101キロ以上

*2:JR九州も対キロ制の101キロ以上2,000キロまでのほとんどのキロ帯において特定額

「JRの運賃計算ルールは複雑すぎる」更新

JRの運賃計算ルールは複雑すぎるを更新した。3月18日及び4月1日実施の次の運賃・料金改定を反映した。

  • 認可上限運賃改定(3月18日東急、4月1日近鉄
  • 区間特定運賃改定(4月1日JR西日本
  • 鉄道駅バリアフリー料金の新設(3月18日関東、4月1日関西)
  • JR東海等の繁閑期区分の変更及びシーズン別特急料金のグリーン車・寝台車への適用(4月1日)
  • JR西日本の「のぞみ」・「みずほ」特急料金改定(4月1日)

主な改定は、表4の特定運賃設定区間。東急と近鉄の運賃改定によりJRの特定運賃が安くなる区間が出た。渋谷・桜木町間は、東急・横浜高速の渋谷・みなとみらい間よりも20円安くなった。JR西日本は昨年3月29日、315の特定区間中競合私鉄より運賃が安い34区間で特定運賃の値上げを届け出た。その後4月15日近鉄が運賃改定を申請し(9月2日国土交通省から認可)改定したため、近鉄との競合区間はすべてJRの方が安くなった。JR難波・奈良間は大阪難波近鉄奈良間より100円安い。

バリアフリー料金は、乗車距離にかかわらず区間ごとに10円収受されるので、分割購入のメリットを減少させる側面がある。田端・横浜間の品川分割運賃は、従来150円、23%安かったが、バリアフリー料金加算後は140円、21%に縮小した。

鉄道事業者の運賃比較は、5月20日実施のJR四国の運賃改定後更新する予定。

 

 

福岡市営地下鉄七隈線延伸に伴う運賃値上げ

本日福岡市営地下鉄七隈線天神南から博多まで延伸開業した。英語ページのRailway NewsRailways of Japanを更新した。

七隈線博多駅は、空港線博多駅と150m離れているが、改札内乗換えが可能で、地下の動く歩道で連絡する。福岡市営地下鉄のサイトによると、七隈線各駅から博多駅までの所要時間は、天神南・天神の乗換えに比べ14分短縮するとのこと。天神南・天神のラッチ外乗換は廃止される。このため七隈線から貝塚線及び空港線の乗継で運賃*1が変わる区間が出る(のりかえ駅変更に関するお知らせ)。

空港線の天神・博多間の営業キロ2.5キロに対し、七隈線天神南・博多間は1.6キロと短いので、七隈線の各駅から空港線博多・福岡空港間に乗継ぐときは、9駅間で運賃が下がる(2区260円→1区210円:薬院・博多間など2区間、3区300円→2区260円:六本松・東比恵など2区間、4区340円→3区300円:茶山・福岡空港など3駅間、5区360円→4区340円:橋本・東比恵など2区間)。

一方、七隈線から貝塚線及び空港線祇園駅以西への乗継は天神南・天神のラッチ外乗換から博多駅のラッチ内となり、所要時間が増加するほか、運賃が上がる区間が168駅間に及ぶ(1区210円→2区260円:渡辺通大濠公園など11区間、2区260円→3区300円:渡辺通貝塚など41区間、2区260円→4区340円:薬院・室見、3区300円→4区340円:野蒜・赤坂など51区間)、3区300円→5区360円:六本松・姪浜など2区間)、4区340円→5区360円:野蒜・赤坂など48区間)、4区340円→6区380円:福大前姪浜)、5区360円→6区380円:橋本・室見など13区間)。

交通局は、運賃が上がる区間の負担軽減措置として、ICカード乗車券(はやかけん)で乗車する場合、2024年3月31日まで増加運賃の1/2をポイントで還元するとしている。また定期券については、博多駅延伸前の経路(天神・天神南乗換)での乗車に限定した「天神経由特別定期券」を従来通りの運賃で発売する。

路線延長に伴い既設区間の運賃が上昇するというのは理解しがたい。交通局サイトにこの検討経緯を示した市議会への報告資料が掲載されている。当初の令和2(2020)年2月19日の報告では、

定期料金については,原則どおり,利用者が選択した経由地に基づく乗車距離に応じた料金とし,普通料金及びICカード料金については,同一目的地であれば,乗車距離が異なる場合であっても同一料金とするもの。
具体的には,普通料金及びICカード料金については,発駅・着駅が「空港線箱崎線」及び「七隈線」にまたがる場合は,実際の乗車経路にかかわらず,最短距離で料金を定める(下図-①)(注:西新・別府間の例。博多経由の12.5キロ(4区)ではなく天神・天神南経由の18.4キロ(3区)で計算)こととするが,発駅・着駅がいずれも「空港線箱崎線」のみ又は「七隈線」のみにある場合は,当該路線のみを乗車したとみなして,料金を定める(下図-②)(注:大濠公園福岡空港間の例。天神・天神南及び博多経由で乗り継いでも、実乗車キロの6.8キロ(2区)は適用せず、空港線の7.7キロ(3区)で計算)こととするものである。

ところが翌年の令和3(2021)年2月19日の報告では、国土交通省との協議において、前記図-②の例は、「実際の乗車距離に応じて定めている現在の認可運賃を超えるため、鉄道事業法に基づく上限運賃変更認可申請を要する可能性がある。(中略)また経路の特定ができるにも関わらず距離に応じた運賃としない点、普通券と定期券の取り扱いに差を設ける点について指摘を受けた。」として、 定期料金、普通料金・ICカード料金 共通で

① 天神・天神南駅間における改札外乗継ぎを廃止し、空港線箱崎線七隈線を跨
いで乗車する場合の乗換駅を博多駅のみとする
② ①を前提として、実際の乗車距離に応じた料金を定める

とした。改札外乗継ぎ廃止の理由として、

を挙げている。また、負担緩和策としてポイント還元と、天神駅天神南駅間の乗継ぎのみができる割引定期券の発行を検討するとした。1年後の2022年2月18日の市議会では、この実施案が報告された。

当初案に対する国土交通省の指摘は、大濠公園福岡空港間を天神・天神南及び博多経由で乗り継いでも、実乗車キロより長い空港線営業キロを適用することにあった。環状線区間を有する多くの事業者が行っているように、乗車経路にかかわらずすべて最短距離を適用すれば問題なかったのである。実乗車キロによる運賃を実現するために天神駅天神南のラッチ外乗継を廃止したことは、利用者に時間的にも金銭的にも負担増を強いることになり、大いに疑問である。

福岡市高速鉄道乗車料金等条例施行規程は、令和4年5月31日施行版から改定されておらず、第42条(乗車券の効力)第6項に天神・天神南の乗継ぎが残っている。

6 乗車券(定期券及び1日券を除く。)は、券面表示区間内の途中の駅で下車して出場したときは、前途無効とする。ただし、乗継ぎ(天神駅及び天神南駅の一方の駅で改札を受けて出場してから2時間以内に他方の駅で改札を受けて入場する場合をいう。以下同じ。)を行う場合は、この限りでない。

 

*1:福岡市営地下鉄の用語は料金

私鉄の鉄道駅バリアフリー料金規定

3月18日は、首都圏の鉄道事業者が鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始した日でもあった。2月8日の記事に書いたとおり、JR東日本の旅規は、鉄道駅バリアフリー料金を運賃とは別の特殊料金として、旅客運賃と「あわせ収受する」と規定した。バリアフリー料金を適用した東京メトロ東武鉄道西武鉄道小田急電鉄相模鉄道横浜高速鉄道各社の3月18日改定の旅規もJR東日本と同様の規定であるが表現が異なる。

西武は、JR東日本の規定にもっとも近い。「第9節 鉄道駅バリアフリー料金」を新設し、

(鉄道駅バリアフリー料金)
第140条 鉄道駅バリアフリー料金は次のとおりとする。
(1) 大人片道普通旅客運賃とあわせ収受する額 1乗車につき10円
(2) 定期旅客運賃(通学定期旅客運賃を除く。)とあわせ収受する額
     1ヵ月 600円
     3ヵ月 1,710円
     6ヵ月 3,240円

と規定、普通運賃と「あわせ収受」するとした。

(旅客運賃と鉄道駅バリアフリー料金のあわせ収受)
第66条 第140条に定める鉄道駅バリアフリー料金は、当該乗車にかかる旅客運賃(前条第1号イに定める通学定期旅客運賃を除く。)とあわせ収受することとし、鉄道駅バリアフリー料金のみでは取り扱わない。

東武小田急も、東武と同様それぞれ「第8節 鉄道駅バリアフリー料金」を新設しているが、次のとおり旅客運賃に加算するとし、「あわせ収受」という表現をとっていない。

(旅客運賃と鉄道駅バリアフリー料金の合計額の計算方) 
第72条 普通旅客運賃には規則第130条に規定した料金を加算するものとし、普通旅客運賃と鉄道駅バリアフリー料金の合計額を基準に運賃を算出するものについては、これを基準に計算するものとする。
2 通勤定期旅客運賃には規則第131条に規定した料金を加算するものとし、通勤定期旅客運賃と鉄道駅バリアフリー料金の合計額を基準に運賃を算出するものについては、これを基準に計算するものとする。 

東京メトロは折衷版で、

(鉄道駅バリアフリー料金)
第42条の3 旅客運賃のうち、鉄道駅バリアフリー料金を加算するものについては、旅客運賃と鉄道駅バリアフリー料金をあわせて取り扱うこととし、鉄道駅バリアフリー料金のみでは取り扱わない。
2 旅客運賃を基準に算出するものについては、旅客運賃及び鉄道駅バリアフリー料金の合算額を基準として計算する。

とし、第51条、第57条などで、普通運賃・通勤定期運賃に鉄道駅バリアフリー料金を加算すると規定。横浜高速鉄道は、普通運賃・通勤定期運賃に加算するという規定だけ。

相鉄の旅客営業規則はあいかわらず、2021年7月1日施行版だが、3月18日改定の対照表(トップページからリンクされていない)を見つけた。バリアフリー料金規定は東武小田急スタイル。また新横浜線延伸区間の加算運賃を規定している。昨年12月30日限りで廃止された普通・時差・土休日回数券の規定は削除されていない。

東京都営地下鉄もメトロ南北線と共用する三田線目黒・白金高輪間にバリアフリー料金が加算されるが、東京都地下高速電車旅客営業規程は改定されていない*1

各社のICカード乗車券規則は、PASMOの標準約款にあわせてほぼ同文*2

(鉄道駅バリアフリー料金)
第6条の3 第6条第2項に規定した大人片道普通旅客運賃には、鉄道駅バリアフリー料金として1乗車につき10円を加算するものとする。
2 大人片道普通旅客運賃を基準に運賃を算出するものについては、前項により算出した大人片道普通旅客運賃を基準として計算するものとする。

ここでもJR東日本は「あわせ収受」である。

IC運賃と鉄道駅バリアフリー料金のあわせ収受)
第29条の2 旅客規則第140条第1項に規定する区間内相互発着となる区間に乗車する場合は、同条第2項第1号に定める鉄道駅バリアフリー料金を第33条から第35条及び第37条に規定するIC運賃とあわせ収受します。

本日旅規ポータルのリンク集及びJR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)を更新した。旅規改訂履歴には4月1日施行の改定も含めた。

*1:東京都地下高速電車ICカード乗車券取扱規程も同じ

*2:東京メトロは「ものとする」がない

2023年運賃改定

2023年春の運賃改定(2022/09/10)、続・2023年春の運賃改定(2022/12/15)の続報。前記事の表に追加する。

上限運賃変更認可申請を行ったのは次の各社。新たに京急京福が申請した。

事業者 実施時期 改定率(普通・通勤・通学) リリース(申請・認可)
東急電鉄 *1 2023/03/18 13.5% 13.8% - 2022/01/07 2022/04/09
近畿日本鉄道 *2 2023/04/01 17.2% 18.3%  9.2% 2022/04/15 2022/09/02
JR四国 2023/05/20 12.5% 28.1% 22.4% 2022/08/26 2022/12/09
伊豆箱根鉄道 2023/04/01 *3 10.3% 24.0% 10.1% 2022/09/21 2022/12/26
静岡鉄道 2023/04/01 10.8% 17.6% - 2022/10/26 2023/01/10
京福電気鉄道 2023/04/01 13.6% 13.3% - 2023/01/27  
南海電気鉄道 2023年10月  9.0% 12.3%  4.5% 2022/10/28  
京浜急行電鉄 2023年10月 10.7% 11.9% - 2023/01/13  
北陸鉄道 調整中 11.3% 11.0% 11.0% 2023/01/31  

認可された上限運賃の範囲で値上げするのが、次の3社。伊豆急行泉北高速鉄道は、上限運賃まで値上げするが、あいの風とやま鉄道は上限運賃の90%程度への値上げ。

事業者 実施時期 改定率(普通・通勤・通学) リリース
あいの風とやま鉄道 2023/04/01 6% 6% 2% 2022/12/16
伊豆急行 2023/03/18 2.3% 1.5% 1.5% 2022/12/16
泉北高速鉄道 2023/10/01 4.37% 3.39% - 2023/01/19

上限運賃の範囲で実施している特定運賃等を廃止または改定するのは、次の各社。

事業者 種別 区間 実施時期 リリース
新京成電鉄 特定運賃廃止 京成津田沼~北習志野 2023/03/18 2022/09/09
JR西日本 特定運賃廃止改定 315の特定区間中34区間 2023/04/01 2022/03/29
しなの鉄道 乗継割引運賃廃止 JR東日本えちごトキめき鉄道 2023/04/01 2022/12/16

2021年12月に創設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」によってバリアフリー整備を目的とした値上げを行うのは次の各社。新たに届け出た事業者はない。

事業者 対象エリア 実施時期 算額
(普通・通勤(1・3・6ケ月))
リリース
JR東日本 電車特定区間 2023/03/18 10 280  790 1,420 2022/04/05
東京メトロ *4 全線 2023/03/18 10 370 1,050
-1,060
1,990
-2,000
2022/04/25
阪急電鉄 全線(神戸高速線を除く) 2023/04/01 10 380 1,080
-1,090
2,050
-2,060
2022/08/03
阪神電気鉄道 全線(神戸高速線を除く) 2023/04/01 10 380 1,080
-1,090
2,050
-2,060
2022/08/03
西武鉄道 全線 2023/03/18 10 600 1,710 3,240 2022/08/04
小田急電鉄 全線 2023/03/18 10 600 1,710 3,240 2022/08/04
神戸電鉄 全線(神戸高速線を除く) 2023/04/01 10 380 1,080
-1,090
2,050
-2,060
2022/08/04
京阪電気鉄道 全線(大津線および鋼索線を除く) 2023/04/01 10 370 1,050
-1,060
1,990
-2,000
2022/08/05
山陽電気鉄道 全線 2023/04/01 10 360 1,020
-1,030
1,940
-1,950
2022/08/10
大阪市高速電気軌道 全線 2023/04/01 10 380 1,080
-1,090
2,050
-2,060
2022/08/10
JR西日本 電車特定区間 *5 2023/04/01 10 300  900 1,800 2022/08/19
横浜高速鉄道 全線 2023/03/18 10 600 1,710 3,240 2022/09/02
西日本鉄道 全線 2023/03/27 10 370 1,050
-1,060
1,990
-2,000
2022/09/21
東武鉄道 全線 2023/03/18 10 600 1,710 3,240 2022/10/19
相模鉄道 全線 2023/03/18 10 600 1,710 3,240 2022/10/21
JR東海 名古屋近郊 *6
東海道新幹線 *7
2024/04/01 *8 10 300  900 1,800 2022/11/17

追記1(2月1日):北陸鉄道の上限運賃変更申請を追加。

追記2(5月22日):あいの風とやま鉄道の運賃改定について訂正。上限運賃の範囲内の届出だった。

*1:除くこどもの国線

*2:除く鋼索線

*3:駿豆線大雄山線は2024年春

*4:白金高輪・目黒間は東京都も

*5:2025年春を目途に野洲~京都、京都~亀岡、京都~城陽松井山手~長尾、尼崎~新三田日根野関西空港西明石網干山陽新幹線西明石~姫路を含む)に拡大する計画

*6:東海道本線豊橋~大垣、中央本線名古屋~多治見、関西本線名古屋~四日市武豊線

*7:東京~品川(フレックス定期券は東京~新横浜)、豊橋岐阜羽島、京都~新大阪

*8:関東は2023/03/18、関西は2023/04/01

回数券廃止続く

2022年6月21日の記事以降も、回数券廃止が続いている。昨年12月30日の相模鉄道、12月31日の関東鉄道に続き、東京メトロ東急電鉄が2月28日、山陽電気鉄道が3月31日で回数券の発売を終了する。

同記事の表に漏れていた会社と新規に廃止された会社を加え、再掲する。

事業者 廃止対象 発売終了日 リリース
京阪電気鉄道 京阪線鋼索線 2020/12/31 2020/07/10
JR九州 JR西日本連絡回数券以外 2021/06/30 2021/04/20
区間 2021/09/30
西日本鉄道 区間 2021/07/31 2021/06/17
JR西日本 ICOCA区間 2021/09/30 2021/03/31
区間 2022/09/30 2022/06/29
東武鉄道 区間 2021/09/30 2021/07/14
京都市営地下鉄 昼間割引回数券*1 2021/09/30 2021/05/26
江ノ島電鉄 区間 2021/12/31  
愛知環状鉄道 区間 2021/12/31  
横浜市営地下鉄 普通回数券*2 2022/03/31 2022/04/01
叡山電鉄 区間 2022/03/31 2022/02/08
小田急電鉄 区間 2022/07/31 2022/03/08
大阪モノレール 区間 2022/07/31 2022/04/22
新京成電鉄 区間 2022/08/31 2022/06/17
JR東日本 区間 2022/09/30 2022/04/26
JR東海 区間 2022/09/30 2022/06/10
JR四国 区間 2022/09/30 2022/06/16
阪神電気鉄道 区間 2022/09/30 2022/03/10
JR北海道 区間 2022/09/30 2022/07/19
相模鉄道 区間 2022/12/30 2022/10/21
関東鉄道 区間 2022/12/31 2022/11/25
東京メトロ 区間 2023/02/28 2022/10/25
東急電鉄 区間*3 2023/02/28 2022/12/16
東京都 地下鉄、日暮里・舎人ライナー 2023/03/17 2022/12/22
鹿島臨海鉄道 区間*4 2023/03/17 2022/12/20
山陽電気鉄道 区間 2023/03/31 2022/08/08
阪急電鉄 区間 2023/04/30 2022/08/08
能勢電鉄 区間 2023/04/30 2022/08/08

問題なのは各社がひろく周知せず、ひっそりと廃止していることである。東京メトロは、メトロポイントクラブの「ランク制度」がスタートするというリリースに「なお、2023年2月28日(火)の発売をもって一部を除く回数乗車券の発売を終了いたします。」と書かれているだけ。駅に掲示されているポスターもみかけない。ポイントの付与を前面に打ち出したリリースで、ついでに回数券の廃止を記載しているのはこれまでも見られたが、東京メトロのように一行ですませたものはなかった。

前記事の表に漏れていたのは、阪神京都市営地下鉄横浜市営地下鉄。両市営地下鉄は対照的で京都市が昼間割引回数券、横浜市普通回数券を廃止した。

JR北海道相模鉄道がウェブに掲載している旅規は、それぞれ回数券廃止以前の2022年10月1日、2021年7月21日現行版で、回数券発売の条項が残っている。

追記1(1月27日):コメントの東京都を追加。

追記2(1月30日):コメントの鹿島臨海鉄道阪急電鉄能勢電鉄を追加。なお、表は2020年以降に廃止された鉄道の回数乗車券を記載している。

*1:普通回数券は存続

*2:昼間割引、土休日割引回数券は存続

*3:世田谷線の回数券は発売終了後10年間有効

*4:サッカー観戦回数乗車券は存続

京急の運賃改定

1月13日京急が10月実施の運賃改定を国土交通省に申請した(リリース)。普通運賃の平均改定率は10.7%だが、短距離区間の改定率を高くし、40キロ超の区間では値下げしている。現行運賃と改定運賃をプロットすると、カーブが寝た長距離逓減運賃になっている。

鉄道事業者の運賃比較で、京急JR東日本の運賃を比較している。京急の運賃改定とJR東日本電車特定区間バリアフリー料金加算で、表1が次のように変わる(上段は現行運賃、下段は改定運賃。赤字は特定運賃)。

区間 京急 JR東日本
品川から キロ キロ
京急久里浜/久里浜 56.8 56 800
710
63.6 77 1,100→940
1,110→950
横須賀中央/横須賀 49.9 47 650
620
55.6 67 940→820
950→830
逗子・葉山/逗子 46.8 44 650
620
48.1 57 820→730
830→740
横浜 22.2 17 320→310
350→320
22.0 17 400→300
410→310
京急川崎/川崎 11.8 10 250→240
280→240
11.4 10 220
230
京急蒲田/蒲田 8.0 6 200
230
7.6 10 170
180

京急JR東日本には、京浜間と対三浦半島間の二つの競合関係がある。京急は、三浦半島区間ではJRに比べ距離が短く時間的にも有利なため、距離比例的な運賃体系をとり長距離運賃を高く、競合が激しい短距離区間の運賃を安く設定している。

京急の資料によると、コロナ過によって2021年度の輸送人員は2017年度の75.6%にとどまる。今後毎年2%の増加を見込んだ2026年度の推定も91.5%と2017年度に及ばない。とくに定期客が88.3%と、定期外客の95.3%よりも低く予想している。

背景には三浦半島の人口減がある。2010年国勢調査以降の沿線4市町と神奈川県全体の人口推移を示す(2022年は推計人口)。

  2022(推計) 2020 2015 2010
横須賀市 379,803 -2.1% 388,078 -4.6% 406,586 -2.8% 418,325
逗子市 56,609 -0.8% 57,060 -0.6% 57,425 -1.5% 58,302
三浦市 40,943 -2.7% 42,069 -7.1% 45,289 -6.3% 48,352
葉山町 31,431 -0.7% 31,665 -1.3% 32,096 -2.0% 32,766
神奈川県 9,232,794 0.0% 9,237,337 1.2% 9,126,213 0.9% 9,048,331

神奈川県全体では増加(2022年推計人口はわずかに減少)しているのに対し、4市町は長期低落傾向にある。とくに、横須賀市三浦市の落ち込みが大きい。京急が従来の距離比例的運賃を遠距離逓減運賃に変更にするのは、三浦半島の人口減のなかで、JRとの対抗から輸送人員増加施策に転じたと考えられる*1京急の資料には、「都市近郊リゾートみうらの創生」として、次のように書かれている。

横須賀・三浦エリアはコロナ禍に伴う郊外の居住・レジャーに対する価値観が変化し,その魅力が高まる一方,今後はさらなる人口の減少が懸念されております。今回申請する鉄道旅客運賃は 41 ㎞以上の区間(例:品川駅から金沢八景駅以遠,横浜駅から三浦海岸駅以遠等)を現行よりも値下げすることで三浦半島の新たな需要創出と沿線活性化に寄与いたしたいと考えております。引き続き企画乗車券やイベント列車等によるお客さま誘致や MaaS・デジタルきっぷといったDXの拡充などと合わせ,沿線のみなさまと連携しながら観光・定住の両面から三浦半島に多くの人々が来訪していただける仕組みづくりを進めてまいります。

 

*1:JR対策では品川・横浜間、品川・京急川崎間の特定運賃を継続する。また、長距離区間の値下げは横浜で乗り換えていた旅客を品川に誘導するねらいもあるのだろう