鉄道会社の2021年度決算

日経の5月14日記事

鉄道大手18社の2022年3月期の連結決算が13日出そろった。前の期は全社で赤字だった最終損益は東急、近鉄グループホールディングス(GHD)など14社で黒字転換した。コロナ下で鉄道事業はなお低調だが、不動産事業などの割合が大きい私鉄を中心に収益が底入れした。

上場25社と東京地下鉄の計26社がウェブに掲載している決算短信に基づいて、各社の決算を比較した。なお昨年5月17日の記事で紹介した2020年度決算では、JR4社、大手私鉄14社と東京地下鉄を比較したが、今回は上場中小私鉄5社を含めた。コロナ前の2019年度からの回復度合いをみるため、2019年度(上段)、2020年度(中段)、2021年度(下段)の数字を比較した(単位:百万円)。

  売上高 営業
利益
純利益 運輸部門
売上高
構成比 2019年
増減
営業
利益
利益率
JR東日本 2,946,639 380,841 198,428 1,994,522 67.7%   250,575 12.6%
1,764,584 -520,358 -577,900 1,095,730 62.1% -45.1% -532,369 -48.6%
1,978,967 -153,938 -94,948 1,207,735 61.0% -39.4% -285,346 -23.6%
JR東海 1,844,647 656,163 397,881 1,419,006 76.9%   617,643 43.5%
823,517 -184,751 -201,554 523,346 63.6% -63.1% -183,328 -35.0%
935,139 1,708 -51,928 708,083 75.7% -50.1% -8,327 -1.2%
JR西日本 1,508,201 160,628 89,380 933,416 61.9%   105,313 11.3%
920,046 -245,507 -233,166 469,736 51.1% -49.7% -252,168 -53.7%
1,031,103 -119,091 -113,198 544,126 52.8% -41.7% -251,521 -46.2%
JR九州 432,644 49,406 31,495 166,266 38.4%   19,848 11.9%
293,914 -22,873 -18,984 88,656 30.2% -46.7% -37,629 -42.4%
329,527 3,944 13,250 102,009 31.0% -38.6% -22,299 -21.9%
東武鉄道 653,874 62,653 35,530 211,801 32.4%   37,659 17.8%
496,326 -13,577 -24,965 155,122 31.3% -26.8% -5,224 -3.4%
506,023 24,732 13,453 169,940 33.6% -19.8% 11,759 6.9%
西武HD 554,590 56,823 4,670 160,259 28.9%   22,829 14.2%
337,061 -51,587 -72,301 115,346 34.2% -28.0% -9,817 -8.5%
396,856 -13,216 10,623 123,649 31.2% -22.8% -5,748 -4.6%
京成電鉄 274,796 28,320 30,110 160,449 58.4%   17,921 11.2%
207,761 -18,056 -30,289 104,216 50.2% -35.0% -25,677 -24.6%
214,157 -5,201 -4,438 117,084 54.7% -27.0% -12,735 -10.9%
京王電鉄 433,669 36,024 17,875 127,391 29.4%   13,345 10.5%
315,439 -20,866 -27,519 86,506 27.4% -32.1% -16,413 -19.0%
299,872 740 5,585 97,241 32.4% -23.7% -2,699 -2.8%
小田急電鉄 534,132 41,103 19,923 170,422 31.9%   21,641 12.7%
385,978 -24,190 -39,804 114,043 29.5% -33.1% -25,937 -22.7%
358,753 6,152 12,116 129,028 36.0% -24.3% -5,491 -4.3%
東急 1,164,243 68,760 42,386 211,048 18.1%   27,018 12.8%
935,927 -31,658 -56,229 148,551 15.9% -29.6% -26,014 -17.5%
879,112 31,544 8,782 162,927 18.5% -22.8% -3,937 -2.4%
京浜急行電鉄 312,751 29,489 15,650 118,888 38.0%   12,875 10.8%
234,964 -18,420 -27,211 76,737 32.7% -35.5% -21,434 -27.9%
265,237 3,510 12,529 84,624 31.9% -28.8% -9,954 -11.8%
相鉄HD 265,100 26,423 14,631 39,283 14.8%   5,844 14.9%
221,136 -3,148 -13,057 29,769 13.5% -24.2% -3,899 -13.1%
216,684 3,998 1,855 32,302 14.9% -17.8% -1,991 -6.2%
名古屋鉄道 622,916 47,363 28,879 161,214 25.9%   21,577 13.4%
481,645 -16,354 -28,769 104,995 21.8% -34.9% -17,866 -17.0%
490,919 2,932 9,370 113,269 23.1% -29.7% -4,960 -4.4%
近鉄GHD 1,194,244 49,380 20,561 214,740 18.0%   27,686 12.9%
697,203 -62,115 -60,187 145,154 20.8% -32.4% -24,670 -17.0%
691,512 3,864 42,755 153,250 22.2% -28.6% -2,721 -1.8%
南海電気鉄道 228,015 35,223 20,811 99,494 43.6%   12,953 13.0%
190,813 5,552 -1,861 65,446 34.3% -34.2% -13,599 -20.8%
201,793 12,190 4,021 82,283 40.8% -17.3% -7,382 -9.0%
京阪HD 317,103 31,123 20,121 91,157 28.7%   10,862 11.9%
253,419 -1,265 -4,574 63,910 25.2% -29.9% -9,658 -15.1%
258,118 13,408 9,589 69,046 26.7% -24.3% 173 0.3%
阪急阪神HD 762,650 95,170 54,859 222,478 29.2%   40,056 18.0%
568,900 2,066 -36,702 152,355 26.8% -31.5% -5,108 -3.4%
746,217 39,212 21,418 157,182 21.1% -29.3% 5,629 3.6%
西日本鉄道 389,446 16,411 6,678 85,205 21.9%   4,511 5.3%
346,121 -9,501 -12,074 48,441 14.0% -43.1% -11,838 -24.4%
427,159 13,953 9,873 62,958 14.7% -26.1% -4,699 -7.5%
新京成電鉄 21,302 2,919 2,355 16,025 75.2%   1,225 7.6%
17,415 -689 -1,085 12,211 70.1% -23.8% -2,149 -17.6%
18,872 603 520 13,294 70.4% -17.0% -968 -7.3%
富士急行 52,290 4,492 1,581 19,516 37.3%   1,993 10.2%
30,451 -3,098 -2,786 8,254 27.1% -57.7% -2,981 -36.1%
35,083 761 376 10,541 30.0% -46.0% -1,202 -11.4%
京福電鉄 12,494 832 198 7,774 62.2%   211 2.7%
10,448 -338 -338 5,207 49.8% -33.0% -1,224 -23.5%
11,603 500 673 5,838 50.3% -24.9% -615 -10.5%
神戸電鉄 22,751 2,083 1,006 12,763 56.1%   903 7.1%
20,231 698 187 10,674 52.8% -16.4% -679 -6.4%
20,517 1,065 519 11,411 55.6% -10.6% -46 -0.4%
山陽電気鉄道 51,633 4,146 2,879 19,501 37.8%   1,377 7.1%
43,490 781 422 15,307 35.2% -21.5% -1,738 -11.4%
34,151 1,499 5,967 16,092 47.1% -17.5% -1,005 -6.2%
広島電鉄 32,910 -309 629 21,713 66.0%   -1,682 -7.7%
25,409 -6,057 -3,291 14,733 58.0% -32.1% -7,174 -48.7%
27,395 -4,523 -1,053 15,202 55.5% -30.0% -6,422 -42.2%
東京地下鉄 433,147 83,917 51,391 380,998 88.0%   70,999 18.6%
295,729 -40,299 -52,927 253,393 85.7% -33.5% -50,791 -20.0%
306,904 -12,117 -13,397 273,780 89.2% -28.1% -23,656 -8.6%

JR本州3社と東京地下鉄広島電鉄以外の21社が最終損益黒字となった(2020年度は神戸電鉄山陽電気鉄道のみ黒字)。ほとんどが不動産部門等の黒字によるもので、運輸部門の営業利益が黒字なのは、東武、京阪HD、阪急阪神HDの3社だけである。また、西武HDが営業利益赤字で最終損益が黒字となっているのは、西武建設の売却益を特別利益に計上したためとのこと(日経記事)。

なお運輸部門とは、各社の運輸業、都市交通事業セグメントで鉄道、バス等の旅客運輸部門であるが、次のように旅客運輸以外の事業が含まれている。

JR東日本 旅行業、清掃整備業、駅業務運営業、設備保守業、鉄道車両製造事業、鉄道車両メインテナンス事業
西武HD 沿線生活サービス業、スポーツ業*1
東急 空港運営事業
南海電気鉄道 貨物運送業、車両整備業
阪急阪神HD 流通事業*2
広島電鉄 航空運送代理業
東京地下鉄 鉄道施設等の保守管理

*1:遊園地、狭山スキー場など

*2:阪急・阪神百貨店は連結していないので、駅売店等と思われる

西九州新幹線の旅規上の扱い

9月22日開業する西九州新幹線の運賃・特急料金をJR九州が発表した(4月27日リリース)。興味深いのは次の箇所。

諫早~長崎間は、長崎本線として並行する在来線が存在するため、長崎本線営業キロ(24.9 キロ)と同一とし、480 円とする旨認可申請を行いました。その他の区間については、建設キロを営業キロとしますので、認可申請は行いません。

諫早・長崎間は新在同一扱いとなり、旅規16条の2が次のように改定されると思われる。

東海道本線(新幹線)、山陽本線(新幹線)、鹿児島本線(新幹線)、長崎本線(新幹線)、東北本線(新幹線)、高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)及び信越本線(新幹線)に対する取扱い)
第16条の2 次の各号の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区とは、同一の線路としての取扱いをする。
(1) 東海道本線及び山陽本線中神戸・新下関間    東海道本線(新幹線)及び山陽本線(新幹線)中新神戸新下関
(2) 東北本線    東北本線(新幹線)
(3) 高崎線上越線及び信越本線    高崎線 (新幹線)、上越線(新幹線)及び信越本線(新幹線)
(4) 鹿児島本線中博多・新八代間及び川内・鹿児島中央間    鹿児島本線(新幹線)中博多・新八代間及び川内・鹿児島中央
(5) 長崎本線諫早・長崎間 長崎本線(新幹線)諫早・長崎間

一方、大村線竹松駅諏訪駅の中間に新大村駅が設置され、新大村・諫早間も並行在来線となる。この区間は、「大村線中新大村・諫早間 大村線(新幹線)中新大村・諫早間」のように同一扱いされない。

新大村・諫早間の新幹線の営業キロは建設キロの12.5キロで、運賃280円。一方在来線は、新大村駅が竹松と諏訪のちょうど中間に設置されるとすると、13.8キロ(擬制キロ:15.2キロ、380円)となる。新幹線と並行在来線で運賃が異なるのは、前例がある。1996年1月10日の三島会社の運賃改定により、山陽新幹線新下関・博多間新幹線と在来線の運賃が異なることとなった。同区間は新在別線となったが、旅規に16条の3が新設された。

(新幹線と新幹線以外の線区の取扱いの特例)
第16条の3 次の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区に関し、第26条第1号ただし書、第2号ただし書及び第3号にそれぞれ規定する普通乗車券の発売、第68条第4項に規定する鉄道の旅客運賃計算上の営業キロ等の計算方並びに第242条第2項に規定する区間変更の取扱いにおける旅客運賃・料金の通算方又は打切方については、前条第1項の規定を準用する。
山陽本線新下関・門司間及び鹿児島本線中門司・博多間    山陽本線(新幹線)中新下関・小倉間及び鹿児島本線(新幹線)中小倉・博多間

新下関・博多間は新在別線だが、乗車券の発売要件や運賃計算においては、新在を同一路線として取り扱うということ。これに基づき、従来どおり東京都区内-福岡市内などの往路新幹線、復路在来線という往復割引乗車券が発売されている*1。新大村・諫早間も同じ取り扱いになり、往路新幹線・復路在来線の往復乗車券が発売されるのではないだろうか。

西九州新幹線は、線路名称としては、西九州新幹線武雄温泉・諫早間及び長崎本線(新幹線)諫早・長崎間となるのだろう。旅規16条の4は、並行在来線がJRから分離された整備新幹線区間について、新幹線は単一の路線として扱うという規定だが、西九州新幹線も単一路線として追加されることになるだろう。

東北新幹線北陸新幹線九州新幹線及び北海道新幹線及び西九州新幹線に対する取扱い)
第16条の4 東北新幹線盛岡・新青森間、北陸新幹線高崎・金沢間及び九州新幹線新八代・川内間及び北海道新幹線新青森新函館北斗及び西九州新幹線武雄温泉・諫早については、単一の線路として旅客の取扱いをする。

 

史上最長片道切符の旅

1982年6月23日の東北新幹線大宮・盛岡間開業から、7月1日の仁堀航路廃止までの8日間、国鉄・JRの最長片道切符は史上最長だった。最長片道切符ルートの変遷 1961-2020に書いているように、ルートは様似⇔枕崎、券面距離は13,423.5キロ(鉄道13,222.5、航路201.0)。枕崎を6月23日に出発すると仁堀航路の廃止にまにあい旅行可能だった。

2015年9月15日記事2017年3月22日記事で、2年弱かけて史上最長片道切符のルートを旅行した史上最長片道切符を夢想する旅のAsaPi!氏を紹介した。廃止された区間は、代行バス、民間フェリー、自転車などを駆使して完遂した。

YouTuberの霧島氏が史上最長ルートを旅行し、旅行の動画を史上最長片道切符の旅にアップしている。旅行は松山まで進み現在中断中とのことだが、動画のアップは2日目の国分まで。この間のルート(JR線以外は経路を表示)は、

枕崎-鹿児島中央-隼人-栗野(山野線バス)宮之城(宮之城線バス)川内(肥薩おれんじ鉄道)八代(高速バス)えびの-都城-国分

南九州のネットワークが充実していた国鉄時代ならではの最長片道ルートで、栗野から吉松、隼人から国分と隣の駅に戻る。ただし、吉松駅は通過していない。肥薩線は2020年7月の豪雨で運休していて、並行する国道219号も不通で代行バスが運転されていない。タクシーで八代インターに行き、えびのインターまで高速バスに乗車、えびの駅まで歩いて、史上最長ルートに戻った。

山野線、宮之城線は、国鉄時代に乗車したが、沿線風景は記憶に残っていなかった。翌日の大隅線も同じだろう。

鉄道事業者の資本関係(3)

続いて第3回は西日本の私鉄及び公営事業者。Gはグループの略。

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関西の近鉄GHD、京阪HD、阪急阪神HDは会社分割で旧鉄道事業者持株会社に移行した。第2回に書いた東急と西武の対比、持株会社のもとに鉄道事業者がぶら下がるか、鉄道事業者の下につくかは、三者三様。京阪は傘下の鉄道事業者をすべて持株会社の下に置く東急型。近鉄は西武型で、近畿日本鉄道が本体から分離した各事業者にそれぞれの第3種事業者とともに出資する。

阪急阪神HDの下には、阪急電鉄阪神電気鉄道と上場会社神戸電鉄が並び、さらに阪神が上場会社山陽電気鉄道などを、阪急が能勢電鉄北大阪急行電鉄などを傘下に置く。旧阪急電鉄が出資していた神戸電鉄は、持株会社化に伴い阪急HDに移行したが、阪神が出資の山陽は、阪神本体とともにグループ入りし、阪神出資のまま継続。旧阪急電鉄出資の能勢電鉄などは分社化した現阪急電鉄に移管された。

神戸高速鉄道には、阪急阪神HD傘下の第2種事業者4社と神戸市が出資している。大阪モノレールへの出資は、近鉄・京阪の持株会社阪急電鉄

富山地方鉄道立山黒部貫光は株式を持ち合い、相互が筆頭株主になっている。本社の所在地も同じで、富山県北陸電力みずほ銀行などが両社の株式を保有している。

大井川鐡道はかつて名古屋鉄道のグループ会社だった*1。2015年北海道のホテル会社エクリプス日高が事業再生支援のスポンサーとなり、増資を引き受けるとともに名鉄から株式を取得、2017年完全子会社とした。

伊勢鉄道の株式を所有している三岐鉄道筆頭株主太平洋セメント。現在も藤原工場(旧小野田セメント)の原料、製品の貨物輸送を行なっている。太平洋セメントは、石灰石の貨物輸送を行っている岩手開発鉄道(旧小野田セメント)と秩父鉄道(旧秩父セメント)の筆頭株主でもある。

*1:1996年の「鉄道要覧」によると持株比率6.93%

鉄道事業者の資本関係(2)

 


鉄道事業者間の資本関係の第2回は東日本の私鉄及び公営事業者。

第1回と同様社名の太字は鉄道事業者(*は貨物専業、**は第3種事業者)、水色の網掛けは上場会社。地方公共団体は、鉄道事業者のみ記載。%は持株比率で赤は過半数所持、青は筆頭株主を示す(比率は「鉄道要覧」記載の2021年3月31日現在の数字。富士急行関連と非鉄道事業者の持株比率はウェブで検索した)。

持株会社制をとっているグループで、複数の鉄道事業者持株会社のもとにぶら下がる形態と、主たる鉄道事業者が他の鉄道事業者の株式を保有する形態とがある。東急は前者で、持株会社東急の下に東急電鉄伊豆急HDなどが並ぶ形。各社の株式を所有していた旧東京急行電鉄持株会社に移行した後も、そのままである。西武は、西武鉄道伊豆箱根鉄道近江鉄道の株式を保有。株主が国土計画から西武HDに変更になっただけで、西武鉄道自体の法人格は変更がない。

富士急行は、伊豆箱根鉄道が会社分割した十国峠の子会社化、富士山麓電気鉄道の分社化を記載した。岳南電車の親会社の岳南鉄道も、伊豆箱根鉄道の前身である駿豆鉄道が出資し設立した。岳南鉄道への出資比率25.5%は富士急行本体によるもので、ピカ、富士急トラベル、富士急静岡タクシーなどグループ各社の出資を併せると80%を超える。

みちのりHDは、経営不振の地方交通企業に出資し、再建をになう持株会社岩手県北バス、会津バス茨城交通などバス会社が傘下にあり、最近東証スタンダード市場上場の佐渡汽船に出資した(Kabutan市場ニュース)。

追記(4月17日):コメントをいただき、小田急の相鉄HDに対する出資を記載し、相関図を更新した。

小田急が相鉄の株式を所有しているという記憶はあったが、「鉄道要覧」は鉄道事業者の主要株主しか記載しておらず、相鉄HDの株主構成のチェックを怠っていた。なお、小田急の持株比率は徐々に低下している。2021年3月21日の日経記事は、小田急持株比率が20年11月の5.81%から4.38%に低下したと報じている。手元にある1996年版「鉄道要覧」によると、1996年3月31日現在の旧相模鉄道に対する小田急の持株比率は7.06%だった。

 

鉄道事業者の資本関係(1)

鉄道事業者が他の事業者の株式を所有する所有・被所有の資本関係を図で示す。

第1回は、JR。社名の太字は鉄道事業者(*は貨物専業、**は第3種事業者)、水色の網掛けは上場会社。地方公共団体は、鉄道事業者のみ記載した。%は持株比率で赤は過半数所持、青は筆頭株主を示す(「鉄道要覧」記載の2021年3月31日現在の数字)。

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JR東海は、上場会社のJR九州の株式を取得している。

JR貨物は、旅客営業兼営の鹿島、水島を含む各地の臨海鉄道の筆頭株主。臨海鉄道は、高度成長期に臨海コンビナートの貨物輸送を行うため国鉄地方公共団体、立地企業の出資で設立された。国鉄の出資がJR貨物に承継された。1962年の京葉臨海鉄道が第1号で、秋田臨海鉄道が2021年3月31日限りで運行を終了し、現在9社。

JR貨物は、第2種事業者として線路を借りて運行している道南いさりび鉄道肥薩おれんじ鉄道にも出資しているが、同様のIGRいわて銀河鉄道やあいの風とやま鉄道などの株式は所有していない。道南いさりびと肥薩おれんじは、自社の旅客列車はディーゼルカーで運行*1し、JR貨物のために電化を維持していることと関係があるのか。

 

上場鉄道事業者の時価総額

先週月曜日4月4日から東京証券取引所の市場区分が再編された。上場している鉄道事業者持株会社)は25社あるが、その所属市場と時価総額は次のとおり。

鉄道事業者 上場会社 コード 新市場 旧市場 時価総額*1
東武鉄道 東武鉄道 9001 プライム 1部 612,241
相模鉄道 相鉄HD 9003 プライム 1部 217,785
東急電鉄 東急 9005 プライム 1部 991,044
京浜急行電鉄 京浜急行電鉄 9006 プライム 1部 345,252
小田急電鉄 小田急電鉄 9007 プライム 1部 734,047
京王電鉄 京王電鉄 9008 プライム 1部 620,901
京成電鉄 京成電鉄 9009 プライム 1部 574,129
富士山麓電気鉄道 富士急行 9010 プライム 1部 205,543
秩父鉄道 秩父鉄道 9012 スタンダード JASDAQ 3,414
新京成電鉄 新京成電鉄 9014 スタンダード 1部 23,149
東日本旅客鉄道 東日本旅客鉄道 9020 プライム 1部 2,592,994
西日本旅客鉄道 西日本旅客鉄道 9021 プライム 1部 1,204,148
東海旅客鉄道 東海旅客鉄道 9022 プライム 1部 3,228,020
西武鉄道 西武HD 9024 プライム 1部 406,593
西日本鉄道 西日本鉄道 9031 プライム 1部 204,035
広島電鉄 広島電鉄 9033 スタンダード 2部 25,331
近畿日本鉄道 近鉄グループHD 9041 プライム 1部 660,644
阪急電鉄阪神電気鉄道 阪急阪神HD 9042 プライム 1部 859,471
南海電気鉄道 南海電気鉄道 9044 プライム 1部 260,826
京阪電気鉄道 京阪HD 9045 プライム 1部 303,216
神戸電鉄 神戸電鉄 9046 プライム 1部 25,757
名古屋鉄道 名古屋鉄道 9048 プライム 1部 402,056
京福電気鉄道 京福電気鉄道 9049 スタンダード 2部 6,000
山陽電気鉄道 山陽電気鉄道 9052 プライム 1部 46,001
九州旅客鉄道 九州旅客鉄道 9142 プライム 1部 390,894

旧1部上場の新京成電鉄を除く21社が最上位のプライムに、新京成、2部の広島電鉄京福電気鉄道及びJASDAQ秩父鉄道がスタンダードに移行した。プライム市場の上場基準は、株主数800人以上、流通株式数20,000単位以上、流通株式時価総額100億円以上である*2。過渡的措置の適用も含めて旧1部上場2177社のうち1839社(84.5%)がプライムに移行したが、この基準は欧米市場と比較してきわめて甘いと言われている。

神戸電鉄時価総額はプライム上場鉄道会社で最小の258億円だが、時価総額ランキング44位で鉄道会社トップ、JR東海の3兆2280億円の0.8%*3である。また神戸電鉄は、阪急阪神HDが株式の27.2%を所有しており、流通株式の時価総額は100億円台。

富士急行時価総額が2,055億円と高いのが意外だった。大手私鉄で最小の西鉄の2,040億円を上回り、相鉄の2,178億円に迫る。2021年3月期の3社の決算は次のとおり(単位百万円)。

会社 売上高 純利益 総資産 純資産 PBR 予想PER
富士急行 30,451 -2,786 101,601 24,682 8.38倍 167.9倍
西日本鉄道 346,121 -12,074 707,804 169,946 1.23倍 28.7倍
相鉄HD 221,136 -13,057 619,410 139,309 1.57倍

売上高、総資産、純資産ともに大手2社と比べ少ないのに時価総額がほぼ同じということは、富士急行の株価が高いということ。富士急行はPBR(株価純資産倍率)、予想PER(株価収益率)*4ともに圧倒的に高い(株予想Proによる)。富士急行の株価が高く評価されているのはなぜだろうか、ウェブで検索して次の記事を見つけた。

  • コロナ前の2019年の記事だが、2019年8月27日の週刊エコノミスト Onlineに「09年8月を起点に(鉄道会社)各銘柄の騰落率を見ると、最も上昇率が高いのは富士急行で、3月に一時4・8倍を超えた」とある。
  • 2013年6月24日の日経は、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)が富士山の世界文化遺産への登録を正式決定したのを受け、24日の東京株式市場では関連銘柄の売買が膨らんだ。富士山を訪れる観光客が増えるとの見方から、周辺でレジャー施設を運営する富士急行株が年初来高値を更新。」と報じている。
  • 2021年2月15日の東洋経済ONLINEの記事によると、「(富士急の)株高の理由として、富士山に次世代型路面電車LRT)を走らせる「富士登山鉄道」の構想が進んでいることを挙げる見方もある」とのこと。

追記(4月16日):コメント頂いたとおり新京成はスタンダード市場だった。本文及び表の誤記を訂正するとともに、JR東海及びトヨタ自動車との時価総額の比較を新京成からプライム市場で最少の神戸電鉄に変更した。

*1:単位百万円、4月11日終値

*2:スタンダードはそれぞれ、400人、2,000単位、10億円

*3:時価総額トップのトヨタ自動車の34兆2859億円の0.07%

*4:2022年3月期は各社とも黒字転換が予想され算出できるが、相鉄の予想はない