1999年の名鉄旅規掲載

阪神1962年旅規、西武の1999年旅規、阪急の2000年旅規に続き、旅規ポータルの旅規アーカイブスに名古屋鉄道旅客営業規則(1999年2月1日現行)を掲載した。岐阜市内線など600V線区が廃止される前の旅規で、運賃制度面でも興味深い規定がある。
39条に対キロ区間制運賃の区間と均一運賃の区間が記載され、この両者にまたがるときは、43条でそれぞれの運賃を合算すると規定されている。均一区間を中間に介して対キロ区間区間を乗り継ぐときは、前後のキロ程を通算する。25条の2の「乗継特定普通乗車券」の発売区間は、岐阜市内線揖斐線や、美濃町線の均一区間と対キロ区間区間にまたがる区間などが細則で定められており、56条の2で20円引きとされている。
名鉄は、名古屋本線以外の区間擬制キロを採用し、ローカル線の運賃を割増ししている。42条の線区の区分は擬制キロの換算率によるものだが、旅規に換算率は規定されていない。「運賃計算キロ程」自体が換算率で除した擬制キロになっているのだろうが、旅規には駅間ごとの運賃計算キロ程表が記載されていない。
当時高山本線直通の特急「北アルプス」があり、117条の5に車内券発行機で発行する「北アルプス号」用車内券の様式が規定されている。様式は省略したが、社線内用として新名古屋・犬山間の、連絡用として新名古屋・高山間の特急券が記載されている。しかし、旅規には急行券の発売や、急行料金の条項がない。単行規程の「北アルプス号の旅客の取扱いについて」で名鉄線内の乗車についても、規定していたようだ。
追記(4月29日):名鉄の旅規には、構成上大きな特徴がある。ウェブに旅規を掲載しているJR・私鉄各社の編・章構成と異なり、名鉄は、各社の第1編総則と第2編旅客営業の第1章通則を統合して、第1章総則としている。なお、長崎電軌の旅客運送規則及び公営地下鉄の旅規に相当する料金条例施行規程も章が最大の単位で、編はない*1
JRをはじめとする各社が第1編総則、第2編旅客営業という構成をとっているのは、もちろん旅客及び荷物営業規則の時代に第3編として荷物営業が存在していたためである。国鉄は1974年10月1日施行の改定で、荷物編を荷物営業規則として分離、旅客営業規則と改称して第3編を削除した*2。旅客営業だけになったのに、第1編、第2編の構成を変えなかった。
旅客及び荷物営業規則時代には、第14条の旅客営業キロ程とは別に、荷物編の第370条に荷物運賃計算キロ程が定められていた*3。第7条の営業キロの端数処理が第1編総則に規定されているのは、旅客キロ程と荷物キロ程に共通であったためである。しかし、旅客編だけになったのに、営業キロの端数計算が第14条の営業キロの前に出てくるのは順序が逆だ。
名鉄の旅規は、第8条を「キロ程」とし、第1項で営業キロ程を、第2項で端数処理を定めている。IGRいわて銀河鉄道は、第1編と第2編の構成はJR等と同じだが、第10条の「営業キロのは数の計算方」の前に、第2編から移行して第9条「営業キロ」を置いている。

*1:札幌市と神戸市は章立てせず、条を連ねている

*2:荷物編にあった携帯品の一時預り及び遺失物の回送を旅客営業編に移管

*3:鉄道のキロ程は旅客と同じだが、航路は青函が113キロに対し300キロ、宇高が18キロに対し50キロと3倍弱、自動車線は鉄道の5倍となっていた