1月13日京急が10月実施の運賃改定を国土交通省に申請した(リリース)。普通運賃の平均改定率は10.7%だが、短距離区間の改定率を高くし、40キロ超の区間では値下げしている。現行運賃と改定運賃をプロットすると、カーブが寝た長距離逓減運賃になっている。
鉄道事業者の運賃比較で、京急とJR東日本の運賃を比較している。京急の運賃改定とJR東日本の電車特定区間のバリアフリー料金加算で、表1が次のように変わる(上段は現行運賃、下段は改定運賃。赤字は特定運賃)。
区間 | 京急 | JR東日本 | ||||
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品川から | キロ | 分 | 円 | キロ | 分 | 円 |
京急久里浜/久里浜 | 56.8 | 56 | 800 710 |
63.6 | 77 | 1,100→940 1,110→950 |
横須賀中央/横須賀 | 49.9 | 47 | 650 620 |
55.6 | 67 | 940→820 950→830 |
逗子・葉山/逗子 | 46.8 | 44 | 650 620 |
48.1 | 57 | 820→730 830→740 |
横浜 | 22.2 | 17 | 320→310 350→320 |
22.0 | 17 | 400→300 410→310 |
京急川崎/川崎 | 11.8 | 10 | 250→240 280→240 |
11.4 | 10 | 220 230 |
京急蒲田/蒲田 | 8.0 | 6 | 200 230 |
7.6 | 10 | 170 180 |
京急とJR東日本には、京浜間と対三浦半島間の二つの競合関係がある。京急は、三浦半島区間ではJRに比べ距離が短く時間的にも有利なため、距離比例的な運賃体系をとり長距離運賃を高く、競合が激しい短距離区間の運賃を安く設定している。
京急の資料によると、コロナ過によって2021年度の輸送人員は2017年度の75.6%にとどまる。今後毎年2%の増加を見込んだ2026年度の推定も91.5%と2017年度に及ばない。とくに定期客が88.3%と、定期外客の95.3%よりも低く予想している。
背景には三浦半島の人口減がある。2010年国勢調査以降の沿線4市町と神奈川県全体の人口推移を示す(2022年は推計人口)。
2022(推計) | 2020 | 2015 | 2010 | |||||
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横須賀市 | 379,803 | -2.1% | 388,078 | -4.6% | 406,586 | -2.8% | 418,325 | |
逗子市 | 56,609 | -0.8% | 57,060 | -0.6% | 57,425 | -1.5% | 58,302 | |
三浦市 | 40,943 | -2.7% | 42,069 | -7.1% | 45,289 | -6.3% | 48,352 | |
葉山町 | 31,431 | -0.7% | 31,665 | -1.3% | 32,096 | -2.0% | 32,766 | |
神奈川県 | 9,232,794 | 0.0% | 9,237,337 | 1.2% | 9,126,213 | 0.9% | 9,048,331 |
神奈川県全体では増加(2022年推計人口はわずかに減少)しているのに対し、4市町は長期低落傾向にある。とくに、横須賀市と三浦市の落ち込みが大きい。京急が従来の距離比例的運賃を遠距離逓減運賃に変更にするのは、三浦半島の人口減のなかで、JRとの対抗から輸送人員増加施策に転じたと考えられる*1。京急の資料には、「都市近郊リゾートみうらの創生」として、次のように書かれている。
横須賀・三浦エリアはコロナ禍に伴う郊外の居住・レジャーに対する価値観が変化し,その魅力が高まる一方,今後はさらなる人口の減少が懸念されております。今回申請する鉄道旅客運賃は 41 ㎞以上の区間(例:品川駅から金沢八景駅以遠,横浜駅から三浦海岸駅以遠等)を現行よりも値下げすることで三浦半島の新たな需要創出と沿線活性化に寄与いたしたいと考えております。引き続き企画乗車券やイベント列車等によるお客さま誘致や MaaS・デジタルきっぷといったDXの拡充などと合わせ,沿線のみなさまと連携しながら観光・定住の両面から三浦半島に多くの人々が来訪していただける仕組みづくりを進めてまいります。