続・北総線運賃訴訟第4回口頭弁論

9月5日の記事では触れなかったが、被告(国)の準備書面(3)で気になる点があった。確認したいことがあったのと、書いておきたいネタが続いたので、1週遅れになってしまった。
それは、京成の第2種区間は従来の相互乗り入れと変わらないから、運賃収入を北総に帰属すべきであるという原告の主張に反論した、次の箇所である。

 京成高砂駅から印旛日本医大駅までの間を乗車する旅客については、京成電鉄成田空港線にかかわる運送約款において、北総鉄道が発売する乗車券を購入し、これを所持するものとされており、この乗車券を所持する旅客は、成田空港線の列車に乗車できるとされている。(「旅客営業規則(成田空港線適用)」13条の2(乙第48号証))。
 すなわち、京成電鉄成田空港線)の運行する列車に乗車するか、北総鉄道の運行する列車(北総線)に乗車するかにかかわらず、旅客は北総鉄道が発売する乗車券を購入し、これを所持して列車に乗ることになるのである。
 旅客が北総鉄道が発売する乗車券を購入して成田空港線に乗車するのは上記運送約款によるものであって、旅客が常に北総鉄道と旅客運送契約を締結しているためではないから、本件区間1ないし3*1において列車を利用する旅客が常に北総鉄道と旅客運送契約を締結しているかのように述べる原告らの上記主張は失当である。

京成の旅客営業規則(成田空港線適用)第13条の2は、

(乗車券の購入および所持の特例)
第13条の2 前条第1項の規定にかかわらず、成田空港線のうち、京成高砂〜印旛日本医大間を乗車する旅客は、北総鉄道が発売する乗車券を購入し、これを所持するものとする。
2 前項に規定する乗車券を所持する旅客は、成田空港線の列車に乗車することができるものとする。

という条文である。前条第1項とは、JR等の旅規と同様、乗車券の購入・所持義務を定めた条項。旅客運送契約は「旅客等が所定の運賃・料金を支払い、乗車券類等その契約に関する証票の交付を受けた時に成立する(JR旅規第5条)」というのが原則である。北総鉄道の旅規は確認していないが、旅客が北総鉄道に運賃を支払い、乗車券の交付を受けるのだから、北総鉄道と旅客運送契約を締結したと解すのが自然だろう。
京成が京成高砂・印旛日本医大間で乗車券の発売をしていないというのは知らなかった。都営地下鉄の第2種区間白金高輪駅には、東京メトロ都営地下鉄の券売機が並んで設置されており、都営の券売機で第2種区間の160円区間の乗車券も発売している。Wikipediaによると井原鉄道のと鉄道も第2種区間総社駅七尾駅に自社の券売機を設置しているとのことである。
こうしてみると、京成は実質を欠いた第2種事業者といわざるを得ない。原告が問題にしていない*2のに、被告はなぜこんな議論を持ち出したのだろう。「従来の乗り入れと変わらないから、運賃収入を北総に帰属すべきである」という原告の主張を補強しているように思える。
北総と京成との第1種・第2種事業者の関係は、経営基盤が弱いほうが第1種事業者である点で、これまでと異なっていると繰り返し、指摘した。これに加え、自前の乗車券を発売しない第2種事業者というのもかなり異質である。
都心から成田空港まで運行する以上、京成は、北総鉄道区間について、中抜けの相互乗り入れではなく、事業者になる必要があった。それなら、京成は、北総区間については、第1種事業者になるべきだろう。高砂・小室間の線路を北総から買い取り、すでに京成の100%子会社の千葉ニュータウン鉄道が第3種事業者として線路を所有している小室・日本医大間とあわせて、第1種事業者となったほうがすっきりする。そうなると北総が第2種事業者として列車を運行する意味が薄れるから、6月29日の記事にいただいたコメントのように、京成が北総を吸収合併することが究極の解決策かもしれない。

*1:京成高砂・印旛日本医大

*2:少なくとも、公開されている訴状と原告の準備書面に京成が自前の乗車券を発売していないという指摘はない