北総線運賃訴訟第4回口頭弁論

6月28日6月29日の記事で、北総線の運賃認可取り消しを求めた行政訴訟について、第3回口頭弁論までの原告(北総線沿線住民)と被告(国)の主張を紹介した。7月28日に第4回口頭弁論が開かれたが、これに提出された原告と被告の準備書面が8月末になって北総線裁判の会のサイトに掲載された。相変わらず原告適格が議論になっているが、運賃認可問題に絞って、原告が第3回口頭弁論に提出した準備書面(2)の論点と被告の準備書面(3)の反論を対比して紹介する。

原告の主張 被告の主張
北総鉄道が第1種事業者、京成が第2種事業者である京成高砂・小室間は、従来の京成車両の北総線乗り入れと運行形態が変わらないのだから、北総は同区間の運賃収入全額を収受し、京成が要した経費を北総が京成に支払う方式に変更するすべきである。 鉄道旅客運送契約において旅客に対し運賃債権を有すのは、実際に旅客を運送する第1種ないし第2種事業者であるから、第1種の北総のみが運賃を収受する権利があるという原告の主張は失当である。
北総と京成がともに第2種事業者である千葉ニュータウン鉄道の第3種事業者区間(小室・印旛日本医大間)は、千葉ニュータウン鉄道が同区間の北総運賃収入全額を収受し、北総は運行・維持管理に関する実費の補填を受けるという条件であるのに対し、京成は運賃収入を収受し、北総の運賃収入減少分の線路使用料を払うだけと、線路使用条件が異なるのは、不平等である。 千葉ニュータウン鉄道第3種区間における京成空港線の線路使用条件の認可において、北総鉄道の経営について考慮する必要はない(これは、北総鉄道千葉ニュータウン鉄道間の線路使用条件認可において考慮すべきもの)。また、線路使用条件の認可は事業者間の自由な経済活動によって設定されるのが原則だから、異なる条件で認可されることはむしろ当然であり、違法ではない。
北総の運賃は、初乗りから中間距離までの運賃が異常に高いメタボ運賃であり、運賃設定の裁量権の範囲を超え、違法である。 鉄道会社の運賃制度の決定は、経営判断に委ねられており、また北総のような遠距離逓減運賃は他社も採用しており、違法ではない。
前回の感想とダブる点があるが、あらためて感想を記す。最初の論点である第1種・第2種事業者の運賃収入の帰属については、原告の主張に無理があり、それぞれが運賃収入を得た上で、第2種事業者が支払う線路使用料について問題とすべきである。ここで、第1種北総、第2種京成の関係は、経営基盤が強い事業者が第2種事業者となっている点で、これまでの第1種・第2種事業者の関係(JR旅客会社対JR貨物東京メトロ都営地下鉄JR西日本井原鉄道)と異なる。その観点から、京成が負担している線路使用料が妥当であるかを議論すべきであろう。
第2点については、原告が京成と千葉ニュータウン鉄道の線路の使用条件の認可処分の取り消しを求めたことに関する議論である。被告は手続き論でこれを拒否しているが、それなら原告は、京成に対する使用条件に対し不平等な、北総鉄道千葉ニュータウン鉄道間の線路使用条件(北総開発鉄道と旧住宅・都市整備公団との協定を引き継いだもので、同区間の累積欠損が解消するまで適用)の認可取り消しをもとめるべきだろう。また、京成とその100%子会社千葉ニュータウン鉄道との間の線路使用料が自由な経済活動によって設定されたというのは無理がある。
北総の遠距離逓減運賃が違法という原告の主張に対する被告の反論は妥当である。原告は、北総線内の利用者の負担において京成空港線の都心・成田空港間の運賃が低く抑えられていると言いたいのだろうが、北総線の運賃体系がもともと、延伸のつど運賃上昇カーブが寝てゆく遠距離逓減運賃を採用しており、成田空港線の運賃もその延長線上に定められている(「鉄道事業者の運賃比較」図4参照)。
繰り返しになるが、北総線の運賃認可問題において議論すべきは、運賃収入の帰属や遠距離逓減運賃体系ではなく、第2種事業者が第1種または第3種事業者に支払う線路使用料(京成高砂・小室間:京成→北総、小室・印旛日本医大間:京成・北総→千葉ニュータウン鉄道)の妥当性である。