東京メトロの株式売却

4月12日の記事東京メトロの事業計画に書いたように、東京メトロ都営地下鉄とのサービス一体化の一環として、平成23年度は九段下駅のホームの壁撤去などを行い、「通算運賃制度や乗継割引の拡大等について具体的な検討を行い、平成23年夏までに結論を取りまとめます。」としていた。新たな運賃制度がどのようになるか注目していたが、夏を過ぎてもまだ発表がない。
そんななか、各紙のサイトに、財務相のメトロ株売却発言が報じられている。引用するのは、東京新聞の記事

メトロ株売却明言 財務相「JT株も検討」
 安住淳財務相は五日、テレビ朝日の番組で、東日本大震災の復旧・復興に充てる財源を確保するため、政府が保有する東京メトロ株(簿価千七百四十九億円)を売却すると明言した。日本たばこ産業(JT)株についても、一部の売却を検討する方針を示した。 
 株式を上場していない東京メトロには、政府と東京都が出資。安住氏は「(東京メトロ株の売却は)大丈夫だ」と指摘したが、売却先は明らかにしなかった。(後略)

東京メトロの事業計画は、国土交通省財務省、東京都及び東京メトロの「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」の2月3日の会合で合意された今後の取り組みについてに基づくものである。サービスの一体化は合意の第3項で、1項と2項は、経営の一元化と政府保有東京メトロ株式売却について、

1.経営の一元化については、財務状況、組織形態等、様々な課題があることから、協議を続ける。
2.東京メトロの早期完全民営化の課題については、法律を踏まえ、協議を続ける。

となっている。「法律を踏まえ」とは、東京地下鉄株式会社法附則第2条

(この法律の廃止その他の必要な措置)
第二条 国及び附則第十一条の規定により株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法(平成十三年法律第五十八号)に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする。

を指す。国と東京都に対し、すみやかに保有株を売却して、東京メトロを完全民営化するよう求めている。
ところが、この合意が経営一元化論者の東京都猪瀬副知事によると、メトロ株売却をストップ、一元化を目指すとなってしまう。

2月3日に国土交通省で開かれた「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会(第4回)」で、3つの点について合意した。最初に、経営の一元化について、引きつづき協議を進めていく。
つぎに、東京メトロの「早期完全民営化」(株式売却)についても協議をつづける。東京メトロ法(東京地下鉄株式会社法)には株式の早期売却が定められていたが、東京メトロが上場し、株式が売却されたら、一元化は不可能になる。その株式売却をストップさせる合意を初めて文書で獲ち取れたのである。

どう読めばこんな解釈になるのだろうか。早速、猪瀬副知事は財務相に噛みついた。メトロ株売却説明求め申し入れ 猪瀬都副知事と報じられている。
ところで、通算運賃制度や乗継割引の拡大の話に戻ると、2月3日の協議会の会議資料に、東京メトロが提案した2種類の乗換運賃軽減案が記載されている。第1案は、東京メトロ都営地下鉄を乗り継ぐ旅客に対し、両社局の営業キロを通算し、都営地下鉄の運賃を適用するというもの。第2案は、現行の乗継割引を100円に拡大するもの。白金高輪に加えて九段下がラッチ内乗継ぎになるのに、この方法で機能するのだろうか。