続・京成成田空港新線の運賃体系

12月17日の記事で、京成成田空港新線の運賃体系について

筆者は、北総線及び京成本線の運賃との整合性をとりながら、都心と空港間の運賃を抑えるために、上野・日暮里と空港第2ビル・成田空港との間に特定運賃が設定されるだろうと予想していた。しかし、京成は極端な遠距離逓減運賃を採用することによって、これを実現した。

と書いた。この「極端な遠距離逓減運賃」についてさらに検討してみる。
先日の記事にグラフで示したように、京成空港線の運賃は、53キロの路線にもかかわらず、運賃の上昇勾配が徐々に寝てゆく遠距離逓減運賃で、キロと運賃とが対数関数で近似される関係になっている。グラフ1で京成空港線の運賃を京成本線及び小湊鉄道と比較してみる。小湊鉄道の運賃は、対キロ運賃に近く、ほぼ比例的に上昇する。短距離区間では空港線よりも安いが、16キロで逆転し、その後は空港線の運賃と大きく乖離してゆく。京成本線の運賃は、典型的な対キロ区間制運賃で、近似式は初乗り運賃の下駄をはいた一次関数となる。

このように、鉄道運賃の高低を議論するときは、初乗り運賃と運賃上昇勾配の二つの要素を評価する必要がある。この二つの指標を数値化すべく、対キロ運賃表をエクセルで回帰分析してみた。空港線のような近似式が対数関数となる例も含めて、強引に線形回帰分析を行った。
相関式は一次式(y = ax + b)となり、aが運賃上昇勾配、bが初乗り運賃のレベルを示す。回帰分析の対象とした事業者は均一運賃の舞浜リゾートラインを除く千葉県内のすべての事業者とJR本州三社の幹線と地方交通線、これに一般に運賃が高いとみなされている大井川鉄道(本線)及び会津鉄道、安いと評価されている東急及び東京メトロを加えた*1。得られた数値aとbを表に示す。

ab
京成空港線13.67343.8
京成本線11.17102.9
京成千原線18.18151.8
北総鉄道20.59246.5
小湊鉄道33.0677.8
新京成4.82131.8
つくば17.44138.9
東葉高速28.50161.1
流鉄14.2996.7
銚子電鉄28.57124.3
いすみ鉄道18.35150.9
千葉都市モノレール23.74159.1
JR幹線16.3343.8
JR地交線25.5418.2
東急6.23120.0
東京メトロ4.26158.0
大井川鉄道44.6221.9
会津鉄道32.0980.8
これを偏差値に変換してグラフ2にプロットしてみた*2

x軸がa、y軸がbで、運賃は右上が高くなる。京成空港線は、初乗り運賃が高く、上昇勾配が小さい典型的な遠距離逓減運賃であることがわかる。これに対して、対キロ運賃制のJRは、初乗り運賃が低く、上昇勾配が大きくなる。ともに運賃の絶対水準は異なるが、東京メトロが前者のタイプ、大井川鉄道が後者のタイプである。
このグラフから高いといわれている北総鉄道の現行運賃がそれほど高くないこともわかった。東葉高速と比較すると、3キロ超から17キロまでの同一キロ帯では20円高い。しかし、12キロ超から上昇勾配が段階的に変化する遠距離逓減制となっているため、33キロまでの全区間で見るとかなり緩和されている。京成空港線の遠距離逓減運賃は、これをさらに極端にしたものである。また、準大手私鉄である新京成の運賃が東急並みに安く設定されていることも、グラフ化による意外な発見だった。
なお、前回

1998年千葉急行電鉄の経営を引き継いで京成千原線としたときと同様、本線と乗り継いでもキロは通算されず、乗継割引も設定されない模様。

と書いたが、京成の運賃表を眺めていて、京成千原線各駅から本線への乗継ぎに割引があることを発見した。千葉中央から15キロまでの区間には、40円(京成千葉千葉寺・大森台間は50円、京成千葉と学園前以遠は70円)の乗継割引がある。空港線高砂以遠の京成線の乗継割引が設定されるかもしれない。

*1:運賃表は各事業者の最長キロ地帯まで。ただしJRは100キロまで

*2:偏差値といってもすべての鉄軌道事業者を対象としたものではなく、あくまでも回帰分析を行った18サンプルの中での偏差値である