京成空港線運賃の遠距離逓減度

北総鉄道の運賃値下げを実現する会(北実会)と京成との公開質問状のやり取りは興味深い。
北実会の主張は、京成が第1種事業者である北総鉄道に対して支払う線路使用料が不当に安いため、北総の運賃値引きが十分でない、というものである。その理由として、京成が新スカイライナーの乗客数を過小に見積もって特急料金収入を予測し、また京成の一般特急の線路使用料がこの運行により減少する北総鉄道の運賃収入の補填分のみにとどまっていることを指摘している。この議論は、説得力がある。京成は、要求されているデータを開示すべきだろう。
北実会の批判は、前回も書いたように、京成空港線の「近距離激高・遠距離激安」の遠距離逓減運賃体系にも及んでいる。この批判に対し、京成は、同様に遠距離逓減となっている都営地下鉄、京阪、神戸電鉄を例に挙げ、各社局の最高運賃額を1とした指数比較のグラフを示して、「鉄道会社の運賃カーブは、各社固有の事業環境によって様々であり」、空港線だけが遠距離逓減運賃ではないと反論している。
北実会は、「これは詭弁が過ぎる」と「運賃の実額」で示したグラフを提示し、「都営も京阪も北総・空港線運賃の半分以下、貴殿が差配する北総・空港線がいかに異常な高運賃であるかが一目瞭然で争う余地もないでしょう」と反論する。しかし、北総の運賃が高いということから、この議論がはじまったのであり、北実会の反論は循環論法である。遠距離逓減運賃を持ち出したのは、これにによって短距離区間北総線内だけ)の旅客が損をしている、これを改めれば北総区間の運賃をさらに値引きできるという主張をするためだろう。絶対額の議論ではないはずだ。
京成が例に挙げた4社局の対キロ運賃カーブを以下のグラフに、近似指数関数(y=m*x^n)とともに示す。
ここで指数nは、遠距離逓減度を示す。n=1であれば対キロ比例であり、nが0に近くなるほど遠距離逓減度が増し、均一運賃はn=0となる。京成がいうように、空港線はn=0.422で、この4社局の中で遠距離逓減度は最小である。
空港線の遠距離逓減運賃は、このブログで指摘したとおり、もともと遠距離逓減制である北総線自体の運賃との整合性を取りながら都心と空港間の運賃を現行の本線運賃並みに抑えるための策であった。北総線の運賃カーブとこれを延長した空港線のカーブを次のグラフに示す。

このグラフから、空港線(n=0.422)は、北総線の現行運賃(n=0.486)よりも小さく、さらに遠距離逓減になっていることがわかる。北実会は、この点を指摘して、京成に反論すべきだろう。
なお、白井市が市議会に再提案した北総鉄道への補助金支出については、まだ結果が報道されていない。