最近のJR旅規改定公告

JR東海運送約款の改正履歴はこまめにチェックしていたのだが、12月20日付と12月27日付の「旅客営業規則の一部改正」が掲載されていた。
12月27日付は、4月1日施行の「持ち込み禁制品の一部見直しに伴う改正」で、12月28日の記事で取り上げた旅規の改定条文が明確になった。12月20日付は、「グランクラス(A)を設備した特別急行列車の運転区間変更等に伴う改正」とされ、別表第1号の3は「はやぶさ」「はやて」の運転区間に仙台発着を追加削除、1月1日施行としている。また、2018年3月17日遡及適用で183条(乗車券類の表示事項)と223条(特殊指定共通券の様式)が改定された。183条は、3月17日施行の改正時に第2項が挿入されたのに、第3項に残っていた「前項」を「第1項」に訂正したもの。223条は各様式の改正から漏れていた、西暦表示への改定。
ウェブに掲載しているJR北海道JR九州の旅規改定公告とJR東日本JR西日本JR四国のウェブの旅規(日付は最終更新日)をあわせてチェックしたところ、次のような差異があった。


 
JR東海
公告
JR北海道
公告
JR九州
公告
JR東日本
18/06/29
JR西日本
18/11/20
JR四国
18/04/01
183条 2018/12/20付 2018/11/21付 2018/08/20付 反映 反映 反映
223条 2018/12/20付 2018/11/21付 2018/11/26付 様式省略 様式省略 様式省略
別表1号の3 2018/12/20付 なし 2018/11/26付 未反映 省略 省略

JR九州の223条改定は2018年3月17日遡及適用ではなく、2019年1月1日2018年10月1日施行となっている。また、別表1号の3に仙台発着が記載されていない。JR東日本の旅規は、2018年6月29日現在となっていて、別表1号の3に仙台発着も記載されている。6月29日は、昨年4月時点で未反映だった183条2項及び290条を訂正した日だろうか。なお、2016年3月26日の85条1号の改定(JR北海道に係る加算運賃の規定に、北海道新幹線の開業によって生じた「幹線相互を乗車する場合」を追加)をいまだに記載していない。
よくわからないのは、別表1号の3の改定。グランクラス車両を連結した仙台発着の「はやぶさ」は以前から運転されている。別表1号の3は北海道新幹線開業の2016年3月26日に新設されたものだが、当時のJR東海の改正履歴では仙台発着が記載されており平成28年2月24日付参照)、旅規ポータルのJR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)に反映している。その後削除された形跡はなく、JR東海は過去の条文を忘れているのだろうか。
183条と223条については、JR東日本旅規改訂履歴を更新し、2018年3月17日付改定に追加した。

旧国名駅関連ページ更新

読者から駅の漏れと誤りの指摘を受け、「国名*」駅−駅名接頭・接尾語考(2)及び別表旧国名駅を更新した。27駅を追加、2駅を削除して国名駅は累計941駅、現存604駅となった。
追加した駅には、飯山線信濃平及び飯山鉄道時代の信州平がある。これまで非国名接頭語駅としていたが、平は地名で、常磐線の平駅と区別するための国名駅と認定した。他は廃止または改称により現存しない駅。不覚だったのは、市名になっていて市名と駅名の関係(市代表駅)に記載していた大分交通宇佐参宮線の豊後高田を見逃していたこと。遠州鉄道遠州助信駅等9駅も漏れていたが、ほとんどは区別する他国の国名駅や単独基本地名駅がなく、国名としての遠州ではなく社名を冠したものと思われる。
削除したのは、讃岐富士(琴平急行電鉄)と播州中村(国鉄・鍛冶屋線)。前者の富士は地名ではなく、ご当地富士の飯野山で非国名接頭語駅。後者は播丹鉄道(1943年買収)の播鉄中村駅(買収時中村町駅に改称、1990年鍛冶屋線廃止)の誤記だった。

2018年の回顧

2018年は三江線が廃止され、新線開業はなかった。
2019年には、3月16日のおおさか東線全通、夏の沖縄都市モノレール延伸がある。19年度下期に相鉄新横浜線のJR連絡区間の開業が予定されているが、JRのダイヤに大きな影響を与えるので、20年3月にずれ込むのではないか。また、3月23日山田線の宮古・釜石間が復旧、三陸鉄道に移管され、盛・久慈間163キロがリアス線として運行を開始する。一方、4月1日石勝線夕張支線が廃止され、2018年11月30日で運行を終了していた関西電力の関電トロリーバスが4月中に正式に廃止となる。
今年は、旅規ポータルの旅規アーカイブに旧国鉄の連絡運輸規則(1970年1月1日現行、1986年11月1日現行)と、別表(1986年11月1日現行及び1987年4月1日JR開業版)を掲載した。
3月、6月、9月、12月に全国のJR駅五番勝負を開催、多くの方に参加いただいた。来年も3か月ごとに行い、第7回は新線開業・ダイヤ改正にあわせて新駅開業がある前、3月8日(金)から11日(月)まで開催する予定。
来年も、デスクトップ鉄のサイトとブログをよろしくお願いします。

追記(1月2日):コメントがあった関電トロリーバスの廃止時期は、Wikipediaの「関電トンネルトロリーバス」の「4月中旬に鉄道事業(トロリーバス)を廃止し、一般乗合旅客自動車運送事業(充電式電気バス)に変更する」との記載によった。Wikipediaの記事には出典が明記されておらず、信頼性に欠ける。一方、コメントに引用された北陸信越運輸局の文書は、廃止に関するパブリックヒアリングの実施に関するものである。北陸信越運輸局のサイトで廃止認可の公示を探したが、見つけられなかった。なお、関西電力2017年8月28日付リリースには、北陸信越運輸局に対し鉄道事業廃止の届出を行ったとあるだけで、廃止日は明記されていない。

来春の旅規改正項目

来春のJR旅規改正に関係するリリースが2件出た。一つは、おおさか東線に適用する運賃について国土交通省近畿運輸局認可申請したというJR西日本のリリース。新規開業区間は、特定都区市内、電車特定区間および大都市近郊区間に含まれることになった。特定都区市内の拡大は認可申請で、他は報告という扱い。
南吹田駅吹田市に立地するが、既開業区間東大阪市内のJR河内永和高井田中央JR俊徳道、JR長瀬、衣摺加美北とともに大阪市内駅となる。八尾市の久宝寺は除外された。旅規86条の大阪市内は、

大阪市内(新加美駅を除く南吹田駅高井田中央駅JR河内永和駅JR俊徳道駅JR長瀬駅及び衣摺加美北駅を含む。)

となるのだろう。
もう一つは、手回り品ルールの改正に関するJR6社連名のリリース。2018年6月9日に発生した東海道新幹線「のぞみ265号」車内における刃物による殺傷事件を受けて鉄道運輸規程昭和17年2月鉄道省令第3号)が改正されるのに伴い、19年4月1日から刃物を持ち込み禁止の対象にするもの。2017年6月の新幹線車内ガソリン焼身自殺の結果、2016年4月28日から旅規別表4の可燃性液体の適用除外項目が縮小されたことに続く改正。

追記(12月30日):コメントを受け、高井田中央を挿入した。
おおさか東線久宝寺を除き大阪市内駅となることで、「大阪市内」発着の乗車券で、久宝寺経由の加美・新加美間の区間外乗車が認められるか注目される。認められれば、基準規程150条2項

規則第86条第5号の規定により発売した大阪市内発又は着の普通乗車券を所持する旅客に対しては、次の図に掲げる太線区間(注:塚本・尼崎・加島間)の全部又は一部について、別に運賃を収受しないで、乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。ただし、尼崎駅が券面区間外である場合は、尼崎駅で下車しないで太線区間の全部を乗車する場合に限る。

に追加されることになるだろう。
もう一つ、鴫野・放出間は、片町線おおさか東線の二重戸籍になるのだろうか。

追記2(1月2日):12月31日のコメントについて。
基準規程155条は(現在も2011年当時の規定どおりであれば)、特定都区市内発着の乗車券と境界駅まで(から)の乗車券とを併用して、券面経路と異なった境界駅まで(から)の乗車を認める規定である。この条項は2006年1月現行版基準規程にはなく、2009年4月現行版に初めて記載された*1。この規定により、実際の乗車経路の運賃よりも安い乗車券を併用して他経路の乗車ができる(JR旅客制度特例の変遷「その他の他経路乗車」参照)。155条9、10号に大阪市内着(発)の乗車券と加島駅発(着)の乗車券(尼崎以遠立花、塚口方面)と併用して、塚本・尼崎(尼崎・塚本)間の他経路乗車ができると規定されている。
150条2項に塚本・尼崎・加島の区間外乗車が規定された*2のは、1997年3月8日のJR東西線開業時であり、155条よりも早い。久宝寺が1駅だけ大阪市内から外れるのは、尼崎と同じ状況であり、区間外乗車が本筋と思う。150条2項の区間外乗車に規定されれば155条にも規定されるだろうが、150条2項に規定されず、155条だけに規定されることはないと思う。

*1:以前からローカルルールとして存在したかは不明

*2:現行規定とは若干条文が異なる

鉄道事業者の運賃比較更新

鉄道事業者の運賃比較を更新、2018年12月版として掲載した。10月2日の万葉線、12月1日の北越急行の運賃改定を反映したもので、運賃ランキングをアップデートした。
北越急行は消費税の転嫁を除くと、開業後初めての値上げ。2015年の北陸新幹線金沢開業により、「はくたか」の通過がなくなり、大幅な収入減になった際も値上げせずにいた。今回10%の値上げで、運賃ランキングは得点順が34位から44位に、勝率順が37位から49位に順位を落とした。しかし、第3セクターの中では、えちごトキめき鉄道(JR運賃を踏襲)とIRいしかわ鉄道に続く3位で、あいの風とやま鉄道や特急・快速通過収入がある伊勢鉄道よりも運賃水準が低い。
万葉線は初乗り運賃を150円から200円に、各キロ帯も50円の値上げで、運賃ランキングは得点順が88位から150位に、勝率順が85位から150位に大幅に下がった。
追記(12月24日):コメントを受けて、黒部峡谷鉄道の新運賃を運賃ランキングに反映した。得点順位、勝率順位とも174位(高いほうから3位)で変更はない。脚注7、9も改訂した。

東急の旅規改定

東急の運送約款・規約のページが更新され、12月14日改定の旅客営業規則が掲載された。大井町線有料座席指定サービスQシートの導入に伴うもの。10月23日リリースの「列車指定券」の用語は記載されておらず、東横線S-train座席指定券に統一された。また、「車内で列車指定券は販売しませんのでご注意ください。」と記載されていたが、車内でも発売されるようだ(以上、10月28日記事参照)。
第61条(座席指定券の発売)は、「団体旅客に対する座席指定券大井町線座席指定列車は除く。)は、団体用座席指定券兼補充団体乗車券によって発売する。」となっただけで、第3項の「座席指定列車に、座席指定券を事前に購入しないで乗車した旅客に対しては、当該列車の車内で、座席、乗車駅及び乗車区間を指定した座席指定券を発売する。」は改定されていない。
第139条の2(座席指定料金)第1項に、第2号として大井町線座席指定列車の「大人・小児 400円」が記載された。第182条の4(座席指定券の効力)第1項は、

座席指定券を所持する旅客は、その券面指定された当該列車に限って、東横線座席指定列車においては、券面に表示されている区間を乗車することができる。また、大井町線座席指定列車においては、乗車駅からたまプラーザまでの区間とする。ただし、たまプラーザ以遠においても当該座席は、旅客の降車駅まで継続して使用することができる。

と改定された。第219条(座席指定券の様式)に大井町線座席指定列車の改札窓口発行の指定券の様式が、第221条(車内座席指定券の様式)に「車内座席指定券および座席変更券」と「座席変更券(現金購入)・ 座席変更券(web 購入)」の様式が、第221条の2(座席指定特別補充券の様式)に「大井町線座席指定列車 座席指定特別補充券」が追加された。

JR2019年春ダイヤ改正

昨日JR各社から2019年春のダイヤ改正が発表された。共同リリースで旅客列車関係の目玉とされているのは、次の8件。

  1. 東海道・山陽新幹線「のぞみ」の所要時間を短縮します
  2. 北海道新幹線青函トンネル内)の速度向上により所要時間を短縮します
  3. 上越新幹線E7系を投入します
  4. 山陽・九州新幹線「みずほ」を増発します
  5. 中央線特急の利便性を向上します
  6. 北陸線の特急を増発します
  7. 東海道山陽線に特急を新設します
  8. 7つの新駅を開業します

3の上越新幹線のE7系投入により、グランクラスが新設される。「なすの」などのグランクラスと同様、アテンダントによる軽食・ドリンク等のサービスはない。「E7系の投入により、新潟駅では「とき」と特急「いなほ」のすべての定期列車が同じ ホームでお乗り換えいただけます」というのは、新潟駅新幹線の11番ホームには今まで2階建てのE4系が入線できなかったということ?
5は、「あずさ」「かいじ」をE355系に統一し、自由席を廃止するという既報に加え、富士急行線直通の特急「富士回遊」と「中央ライナー」「青梅ライナー」に代わる特急「はちおうじ」「おうめ」の新設が発表された。すべてに座席未指定券が適用され、新宿・八王子間はライナー料金510円から特急料金の750円(事前購入)に値上げとなる。
7は、大阪・姫路間の通勤特急「らくラクはりま」。普通車指定席特急料金は次のとおり「J-WESTチケットレス」サービスを利用すると大幅に割引となる(11月30日リリース)。

区間 J-WESTカードあり J-WESTカードなし 通常購入 自由席特急券 自由席回数特急券
大阪〜姫路間 720円 1290円 1490円 970円 780円
大阪〜明石間 620円 1290円 1490円 970円 780円
大阪〜三ノ宮・神戸間 490円  970円 1170円 650円 560円

ダイヤ改正に合わせて新設される駅は、JR西日本おおさか東線の南吹田、JR淡路、城北公園通、JR野江のほか、梅小路京都西(JR西日本山陰本線)、糸島高校前(JR九州筑肥線)。また4月のJヴィレッジのグランドオープンに合わせて、JヴィレッジJR東日本常磐線)が臨時駅として開業する。一方JR北海道根室本線の直別、尺別、初田牛が廃止される。
目玉に取り上げられていない各社の発表では、JR四国の「高速バス(室戸・生見・阿南大阪線)との乗換により、阿南〜海部間の移動が便利になります!」が興味深い。牟岐線の一部列車を阿南駅どまりとし、徳島バスの阿南〜海部間のバスに接続したダイヤが示されているが、JR運賃は適用しない。徳島県が進めている牟岐線阿佐海岸鉄道DMV化の布石だろうか。