富山地方鉄道の片道乗車券発売要件

昨年1月27日1月30日の2回にわたって、環状線を有する鉄道事業者の片道乗車券の発売要件と運賃計算キロの通算・打切りの規定について書いた。富山地方鉄道の旅規が未確認だったが、知人が富山を訪れた際調査してくれた。

(普通乗車券の発売)
第12条 旅客が列車に乗車する場合は次の各号に定めるところにより片道乗車券・往復乗車券を発売する。
(1) 片道乗車券
  普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車する場合に発売する。
(2) 往復乗車券
  往路または復路とも片道乗車券を発売できる区間、経路を同じくして往復1回乗車する場合に発売する。
(旅客運賃・料金計算上の営業キロの計算方)
32条 旅客運賃・料金を計算する場合のキロ程は、発着区間営業キロ程による。
2 営業キロ程に生じる1キロ未満の端数は、これを1キロメートルに切り上げる。
3 前項の規定にかかわらず、社が定めた区間に特定旅客運賃を設定する。

第12条第1号には、折返しまたは環状線一周を除くという例外規定がない。また、JRの旅規第68条に相当する運賃計算キロの通算、打切りの規定もない。片道乗車券の発売要件の例外規定はないのは東急と同じだが、東急には「同一方向に連続する場合」という運賃計算キロの通算規定がある。
あらためて、各社の旅規を比較すると次のとおりになる。

事業者 片道乗車券の発売要件 運賃計算キロの通算 運賃計算キロの打切り
JR 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。キロを打ち切る場合は、打切りとなる駅まで 同一方向に連続する場合 環状線一周、復乗、新幹線と在来線を新下関・小倉・博多で直接乗継ぐ場合
東武、西武、名鉄近鉄 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返し・環状線一周を除く 同一方向に連続する場合 環状線一周、復乗
阪急 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返し・環状線一周を除く 同一方向に連続する場合 環状線一周、折返し
東京都 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く 同一方向に連続する場合 環状線一周、復乗
京成 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く 同一方向に連続する場合 復乗、千原線成田空港線と他路線との乗継
東京メトロ神戸新交通 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く 同一方向に連続する場合 なし
東急 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車 同一方向に連続する場合 なし
富山地鉄 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車 なし なし
名古屋市大阪市 乗車経路の連続した最短経路により片道1回乗車 最短経路により計算 なし
神戸市 なし 実乗車経路のキロを通算して計算 環状線一周、復乗

富山地鉄が発売要件の例外として折返し・環状線一周を規定しないのは、普通旅客運賃計算経路の「連続した区間」だけで十分ということなのだろうか。しかし、運賃計算キロの通算・打切り規定がないから、運賃計算経路が連続しているかどうかの判定はどうするのだろう。運賃計算キロを通算するのは「同一方向に連続する場合」という規定がないから、折返しの片道乗車券も発売できると読めてしまう。
一方、稲荷町〜寺田〜岩峅寺環状線区間通過(発着はダメ)については、最短キロで運賃計算し、経路の指定をせず、う回乗車を認めているから、環状線一周を越える片道乗車券の発売を否定しているようにも読める。同様の環状線通過・発着の規定がある東京メトロや東急に、環状線一周を越える片道乗車券の例外規定がないのも、同じ理由かもしれない。