続々・連絡運輸の8の字切符

よねざわいずみさんから、「新版 種村直樹の汽車旅相談室」(自由国民社、2000年)に、8の字通過連絡運輸について記載されているとの教示を受けた。このブログで、二度にわたって8の字通過連絡運輸の記事(連絡運輸の8の字切符続・連絡運輸の8の字切符)を書いたが、JRの見解を知らずに書いていたのはうかつだった。

同書の46ページに「ほくほく線通過後の飯山線乗車」という記事がある。「・・・犀潟(ほくほく線)六日町−越後川口(飯山線)豊野・・・」という切符を購入しようとしたら、「十日町で線路がぶつかるから2枚のきっぷになる」といわれた。通過連絡は犀潟・六日町間しか認められておらず、十日町は同一駅といえないのではないかという質問である。

これに対し、種村氏は、JRの対応は次の理由で正当であると回答している。

  1. 十日町駅は、JR東日本北越急行の連絡運輸の接続駅*1である。
  2. したがって両線の十日町駅は、同一駅とみなされる。
  3. その同一駅を2度通れば営業キロまたは運賃計算キロを打ち切る。

1と2の間には論理の飛躍があるが、この回答から、JRは「JR線と連絡社線を通じた乗車経路が連絡運輸の接続駅で環状線一周となる場合は、当該接続駅でJR線のキロを打ち切る」というルールを定めていることが明確になった。このルールに基づき、北越急行に加えて、智頭急行佐用が接続駅)でも8の字通過連絡運輸は認められず、一方でいわて沼宮内・二戸が接続駅でないため、「いわて沼宮内(JR)八戸(青い森鉄道IGRいわて銀河鉄道)盛岡(JR)いわて沼宮内」の通過連絡運輸切符は発売された。

問題は、このルールの透明性である。すなわち、このルールを定めた条項が旅客連絡運輸規則に見当たらないことである。連絡運輸規則の片道乗車券の発売におけるキロの打ち切り規定は第16条にあり、前にも引用したが次のとおりである*2

(1)片道乗車券
 普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車船(以下「片道乗車」という。)する場合に発売する。ただし、旅客規則第68条第4項の規定により鉄道の営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切つて計算する場合は、当該打切りとなる駅までの区間のものに限り発売する。

旅客営業規則第68条第4項は、JR線の運賃計算経路が環状線一周または複乗になった場合のキロの打ち切り規定である。JR線と連絡社線の運賃は個別に計算するのだから、JR線と連絡社線を通じた運賃計算経路なるものは存在しない。したがって、この規定は連絡切符のうちのJR線部分のみに適用されるものである。これを「JR線と連絡社線を通じた乗車経路が連絡運輸の接続駅で環状線一周となる場合は、当該接続駅でJR線のキロを打ち切る」と読めというのは無理がある。

JRがこの解釈をとるなら、旅客連絡運輸規則に明文化すべきである。それとも私が明文規定を見落としているのだろうか。

話は変わるが、「新版 種村直樹の汽車旅相談室」には、この記事の直後に、JR東が通過連絡運輸を1社しか認めない解釈運用をしていることについての質問が掲載されている。種村氏は、JR東に「この見解を改める考えはないか」とただしたところ、「認める方向で再検討する」との回答を得たという。しかし、その後JR東の解釈が変更になったとは聞こえてこない。種村氏にはフォローをよろしくお願いしたい。

*1:運輸機関どうしの連絡運輸協定に基づき、その駅で接続となる連絡切符を発売する駅

*2:市販されている最新の「旅客制度単行規程集」(2001年JR四国版)で確認した。その後規則が改定されている可能性もわずかながらある。