旅規第86・87条改定

3月13日の記事のコメントで話題になっているように、4月1日施行の旅規改訂がJR西日本から公示された。第86条の本文と第87条に次のただし書きが挿入される。

ただし、特定都区市内(東京山手線内)にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内(東京山手線内)の外を経て、再び同じ特定都区市内(東京山手線内)を通過するとき、又は特定都区市内(東京山手線内)にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内(東京山手線内)を通過して、その特定都区市内(東京山手線内)の外を経るときを除く。

この条項は、現行の旅客営業取扱基準規程第115条の「単駅指定」条項を旅規に格上げしたものである。

第115条 特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び発駅と同じ特定都区市内を通過となるときの鉄道の普通旅客運賃は、実際乗車線経路が環状線一周となるとき又は折返しとなるときを除いて、その着駅が、発駅に関連する特定都区市内の中心駅から、営業キロが200kmを超えるときであっても、規則第86条の規定を適用しないで発駅から、実際の営業キロ又は運賃計算キロによって旅客運賃を計算することができる。
2 前項の規定は、特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときの当該着駅までの鉄道の普通旅客運賃の計算方に準用する。
3 東京山手線内にある駅を発駅又は着駅とする場合で、着駅又は発駅が東京駅から営業キロが100kmをこえるときであつても、前各項の規定を準用することができる。

基115条は、「規則第86条の規定を適用しないで発駅から、実際の営業キロ又は運賃計算キロによって旅客運賃を計算することができる」という任意規定である。「再び発駅と同じ特定都区市内を通過となるとき」であっても、第86条を適用して「中心駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する」こともできる。この意味を次のような経路の運賃計算で考えてみる。

乗車区間・経路 規86条準拠 基115条準拠
葛西臨海公園から塩尻(京葉・外房・総武・中央経由) 東京都区内−塩尻 305.0キロ、5,250円 葛西臨海公園塩尻 294.4キロ、4,940円
蒲田から松本(京葉・外房・総武・中央経由) 東京都区内−松本 318.3キロ、5,250円 蒲田−松本 332.7キロ、5,460円

上表のとおり、葛西臨海公園から塩尻は、単駅指定で購入したほうが安く、蒲田から松本は、単駅指定せずに、本則どおり購入したほうが安いのである。そしてそのいずれかを選択できる。これが今回の改定で、任意規定から強制規定となる。いったん特定都区市内を出て再び同じ特定都区市内を通過するときは、つねに単駅指定で購入しなければならなくなる。今回の改定の意味はここにある。
この変更を旅規の改定で行うところに、旅規と基準規定の違いが明確に現れている。JRの内規である基準規定は、約款として公示される旅規よりも旅客にとって不利な取扱を定めることができない。従来の基115条は、旅規86、87条の規定に比べて旅客にとって有利な取扱を定めたものである。これを不利な方向に変更するためには、旅規で規定するしかないのである。
ところが、8の字連絡運輸問題では、JRは旅客連絡運輸規則で公示しているものよりも旅客にとって不利な規定を約款以外の内部規定で定め、これを適用している。鉄道営業法及び鉄道運輸規程の違反といわざるを得ない。