連絡運輸乗継割引の歴史

5月9日の記事に西武沿線さんからいただいたコメントを受けて、初乗り運賃区間等の事業者間の乗継割引(急行料金の乗継割引と区別するため、連絡運輸乗継割引と呼ぶことにする)の歴史を調べてみた。
昭和58年度運輸白書に乗継運賃制度の拡充という項があり、次のとおり記述されている。

56年度までに,札幌市営地下鉄と札幌市営軌道,営団地下鉄と東京都営地下鉄,国鉄営団地下鉄(相互直通乗入れ区間),山陽電鉄神戸高速と阪急・阪神(相互直通乗入れ区間),神戸高速神戸電鉄(相互直通乗入れ区間),南海と大阪府都市開発(相互直通乗入れ区間)において乗継運賃制度が既に実施されている。(中略)
57年度においては,58年3月,福岡市営地下鉄1号線の全線開業にあわせて福岡市地下鉄国鉄との相互直通乗入れ区間において普通旅客及び定期旅客について,また,同じく3月,名鉄の運賃改定時に名鉄名古屋市営地下鉄との相互直通乗入れ区間において普通旅客について,新たに乗継運賃制度が導入された。

「交通公社の運賃表」第1号(1981/12)には、このうち営団地下鉄都営地下鉄(当時は合算額から30円引き)と神戸高速関連の乗継割引運賃が記載されている。このいずれかが最初の連絡運輸乗継割引と思われる。
国鉄営団地下鉄との連絡運輸乗継割引は、池田光雅編著「鉄道総合年表1972-93」によると、1982年4月20日の運賃値上げに際し、相互乗り入れ区間に設定された。また、このとき私鉄シフトの区間特定運賃が東京圏・名古屋圏に拡大した。営団との乗継割引は、昭和57年4月19日付の国鉄公示第19号「日本国有鉄道帝都高速度交通営団との連絡特殊割引乗車券の発売方」に基づくものであるが、官報では省略され、鉄道公報(号外)参照となっている*1
福岡市営地下鉄との連絡運輸乗継割引は、1983年3月23日の筑肥線博多・姪浜間の廃止、福岡市営地下鉄への乗入れに伴い、通過連絡運輸とともに設定された。これも昭和58年3月15日付国鉄公示第231号「日本国有鉄道福岡市交通局高速鉄道との連絡旅客運賃の特定」で公示されたが、官報では内容省略となっている。
首都圏の大手私鉄の初乗り運賃区間の乗継割引は、前述の運輸白書に

58年9月6日,名鉄,西鉄を除く大手私鉄12社が運賃改定認可の申請を行ったが,今回の改定の際に,併せて次のような乗継運賃制度を導入したいとしている。
1 対象旅客
  普通旅客
2 連絡切符を持たない旅客の取扱い
  直通乗入れ及びノーラッチ(改札口を通ることなく直接乗り継げる形態)に係る乗継ぎについては連絡切符を持たない旅客も対象とし,連絡ラッチ(改札口を1か所通過することにより乗り継げる形態)及びラッチ外連絡(改札口を出て改めて他社の改札口から入る形態)に係る乗継ぎについては連絡切符を持った旅客のみ割引の対象とする。
3 割引の対象となる乗継回数
  1回に限り割引く。
4 乗継ぎの形態
  直通乗入れ及びノーラッチを対象とし,この他にも一部試験的に実施する。
5 適用区間
  原則として接続駅から初乗り運賃区間相互間
6 割引額
  各事業者それぞれ10円引き(合計20円引き)
7 実施時期
  大手私鉄12社と大手私鉄12社以外の事業者との乗継ぎについては,当該相手事業者の割引は原則としてその事業者の最も早い運賃改定時から実施することとする。

という記述があり、この直後に始まったのだろう。このとき、国鉄は、ノーラッチ乗り継ぎ駅の分倍河原八丁畷菊名、武蔵境、国分寺、拝島*2に限定して参加したものと思われる。
連絡運輸乗継割引を相互乗り入れを含むノーラッチ乗継駅に限定する国鉄JR東日本の態度は一貫している。神奈川県鉄道輸送力増強促進会議の平成20年度鉄道事業者への要望に対し、JR東日本は、次のように回答している(下線は筆者)。

当社の路線と連絡会社線の乗継割引は、すでに各会社で初乗り区間等の普通運賃について実施しております。乗継割引区間の拡大については、「列車が相互直通運転を行っている」、「当社と連絡会社線との接続駅に乗換え改札がない」等の条件を勘案して設定しており、拡大の予定はございません。なお、乗継利便性の向上については、平成20年3月より、より多くのお客さまに1枚のSuica定期券でご利用いただくため、連絡定期券の発売範囲の拡大を行っております。

平成21年の回答もほぼ同じである。それならば、東京臨海高速鉄道との乗継割引がないのは、納得できない。

*1:号外なので国会図書館には所蔵されていないから、その内容を確認できない

*2:その後、八丁畷を除く各駅には中間改札を設置