JR旅客会社間の旅規の差異

「JR旅客鉄道会社の旅客営業規則は、各社ほぼ同じ内容である」ということになっている。「ほぼ同じ」ということは、異なった箇所も存在するわけだが、それがどの条項なのかはあまり知られていない。本州三社の旅規はウェブで最新版を閲覧できるので、読み比べてみた。
容易に想定できるのは、会社名が記載されている条項である。第1条の

この規則は、東日本旅客鉄道株式会社(以下「当社」という。)の旅客の運送及びこれに附帯する入場券の発売、携帯品の一時預り(以下これらを「旅客の運送等」という。)について合理的な取扱方を定め、もつて利用者の便利と事業の能率的な遂行を図ることを目的とする。

の「当社」は当然、旅客会社ごとに異なる。同様に、旅規で引用される各種規則の名称、第28条の「東日本旅客鉄道株式会社学校及び救護施設指定取扱規則」や第312条の「東日本旅客鉄道株式会社荷物営業規則」も、JR東日本だけの規定である。「学校及び救護施設指定取扱規則」は、JR東海JR西日本では、規則名に社名を冠していない。一方、「荷物営業規則」については、JR西日本が社名を冠していないのに対し、JR東海は社名を冠した「東海旅客鉄道株式会社荷物営業規則」となっている。
2007年12月19日の記事に書いたとおり、JR西日本の旅規には昨年12月まで、JR東日本ではかなり前に廃止された、遺失物の回送の取扱規定が存続していた。このような各社の旅規間の条項の欠落は、現行の旅規にも存在する。
JR東日本旅規の第126条の2(自由席特急券に指定料金券を添付して発売する場合の指定料金)は、JR東海JR西日本の旅規にはない。JR西日本では、「第126条の2 削除」となっており、JR東海では、第126条の3、第126条の4がそれぞれ、第126条の2、第126条の3に繰上げられている。JR東日本旅規の第126条の2で参照されている第57条第9項も、当然ながらJR東海JR西日本には存在しない。
第57条第9項は、

北海道旅客鉄道会社線四国旅客鉄道会社線又は九州旅客鉄道会社線内の停車駅相互間について、第1項第1号イの(イ)の指定席特急券を発売する場合は、自由席特急券に別に定める指定料金券を添付し、指定席特急券として発売することがある。ただし、当該取扱いは、北海道旅客鉄道会社線内、四国旅客鉄道会社線内又は九州旅客鉄道会社線内における別に定める駅又は乗車券類の発売を委託した箇所に限つて取り扱う。

という条項である。各社の旅規の第2条(適用範囲)の注に、

他の旅客鉄道会社相互発着となる旅客の運送等については、当該旅客鉄道会社の定めるところによる。

と書かれているから、本州三社の旅規に第57条第9項は必要ない。JR東日本がこれを自社の旅規に規定しているのは、国鉄一家の長男として、四男坊以下の弟たちの面倒も見ますよということなのか。
第244条の4(特別急行列車の個室に有効な乗車券類を所持する旅客に対する乗車変更の特殊取扱)は、JR東日本JR東海の旅規には規定されているが、JR西日本にはない。そのかわり、JR西日本の旅規の第244条の2(特別急行列車のコンパートメント個室に有効な乗車券類を所持する旅客に対する乗車変更の特殊取扱)第4項が他社と異なっており(下線部)、ここで第244条の4の内容を規定している。

前各項の取扱いは、第57条第1項第1号イ(ハ)及び第58条第7項に規定する個室並びに第60条の3に規定するコンパートメント個室に有効な乗車券類を所持する旅客に対する乗車変更の取扱いに準用する(について適用する)。

(この項続く)