JR旅客会社間の旅規の差異(2)

各社の営業内容の違いが旅規に反映されている。第3条第1号の「当社線」は、JR西日本だけ、

(1) 「当社線」とは、当社の経営する鉄道及び宮島口・宮島間航路をいう。

と下線部が挿入されている。1987年の民営化時点の旅規(新会社版)は、

(1) 「当社線」とは、当社の経営する鉄道・航路及び自動車線をいう。

であったが、青函・宇高航路の廃止、自動車営業の子会社移管により、各社の営業範囲は、JR西日本を除き鉄道だけとなった。JR東日本は、初めから航路を持たず、自動車線もいち早く子会社に移管したのに、第3条第1項は90年代までは開業時のままだった。
運賃・料金の支払い方を規定した第4条第2項第1号も各社間で異なる。JR東日本

(1) 旅客運賃・料金については、第302 条に規定するギフトカード、第306 条に規定するオレンジカード及び別に定めるイオカードSuica

の下線部は、JR西日本が「、第306条に規定するオレンジカード及び別に定めるJスルーカード、ICOCA乗車券」であるが、JR東海は「及び第306 条に規定するオレンジカード」だけである。JR東海ICカード乗車券運送約款は、第8条第3項第1号で、他社と同様ICカードのSF部分を乗車券類の購入に使えると規定しているから、旅規の改定を忘れているのだろう。
条見出しの違いもある。JR西日本の第3条の2の見出しは、「消費税等課税の運賃・料金」と等を付け加えている。地方消費税を意識したものだろうが、第3条の3の見出しが他社と同じ「消費税免税の運賃・料金」なのは一貫しない。
大きく違うのは表記法である。旅規は国鉄時代から撥音(っ)を使用していない。しかしJR東海だけは、第1条の「…もって利用者の便利と事業の能率的な遂行を図ることを目的とする。」に始まり、すべて撥音に変更した。
漢字とひらがなの差異もある。JR東日本JR西日本は、端数とは(・)数が混在しているが、JR東海だけはすべては(・)数である。
第3条第3号の表記は三社すべて異なる。JR東日本

(3) 「旅客鉄道会社線」とは、旅客鉄道会社の経営する鉄道・航路をいう。

であるが、JR東海は下線部が「鉄道、航路(宮島口・宮島間航路に限る。)」、JR西日本は「鉄道及び航路(宮島口・宮島間航路に限る。)」と、「(宮島口・宮島間航路に限る。)」の有無の違いだけではなく、「・」が「、」と「及び」に変わっている。
JR西日本の旅規は、「準用」を「適用」に変えている箇所がある。前回引用した第244条の2のほか、第57条第1項第1号イ(ハ) と第58条第7項でも、「に準用する」が「について適用する」となっている。
その他明らかに誤りと思われる差異もある。そのうちに、ウェブページに差異の比較表を掲載しようと思う。