4月1日富士急行が鉄道部門を分社化して、富士山麓電気鉄道に鉄道事業を移管する。バス事業はすでに子会社に移管しており、本体は持株会社となる。富士山麓電気鉄道は1926年創業当時の商号で1960年に富士急行に改称した。これが新たな鉄道事業者の社名として復活する。
1997年独占禁止法が改正され、純粋持株会社が解禁された。それ以降、2004年の箱根登山鉄道、2005年の阪急を皮切りに、鉄道事業者でも本体は持株会社に移行し、会社分割により鉄道事業を子会社に移管したケースがみられる。「鉄道要覧」等で持株会社化と会社分割の例を調べてみた。
旧社名 | 時期 | 本体(持株会社) | 鉄道事業者(子会社) |
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箱根登山鉄道(株) | 2004/10/01 | 小田急箱根ホールディングス(株) | 箱根登山鉄道(株) |
阪急電鉄(株) | 2005/04/01 | 阪急ホールディングス(株) | 阪急電鉄(株) |
2006/10/01 | 阪急阪神ホールディングス(株) | 阪急電鉄(株)・阪神電気鉄道(株) | |
上田交通(株) | 2005/10/03 | 上田交通(株) | 上田電鉄(株) |
茨城交通(株) | 2008/04/01 | (茨城交通(株)) | ひたちなか海浜鉄道(株) |
松本電気鉄道(株) | 2008/05/01 | アルピコホールディングス(株) | 松本電気鉄道(株) |
2011/04/01 | アルピコ交通(株) | ||
相模鉄道(株) | 2009/09/16 | 相鉄ホールディングス(株) | 相模鉄道(株) |
一畑電気鉄道(株) | 2009/09/01 | 一畑電気鉄道(株) | 一畑電車(株) |
岳南鉄道(株) | 2013/04/01 | 岳南鉄道(株) | 岳南電車(株) |
土佐電気鉄道(株) | 2014/10/01 | とさでん交通(株) | とさでん交通(株) |
西日本鉄道(株) | 2015/03/01 | 西日本鉄道(株) | 筑豊電気鉄道(株) |
近畿日本鉄道(株) | 2015/04/01 | 近鉄グループホールディングス(株) | 近畿日本鉄道(株) |
京阪電気鉄道(株) | 2016/04/01 | 京阪ホールディングス(株) | 京阪電気鉄道(株) |
伊予鉄道(株) | 2018/04/01 | (株)伊予鉄グループ | 伊予鉄道(株) |
東京急行電鉄(株) | 2019/10/01 | 東急(株) | 東急電鉄(株) |
富士急行(株) | 2022/04/01 | 富士急行(株) | 富士山麓電気鉄道(株) |
阪神電気鉄道は、村上ファンドによる買収に対抗するため、阪急に対し経営統合を提案。阪急ホールディングスによるTOBを経て阪神を完全子会社化し、持株会社は阪急阪神ホールディングスに商号変更した。
とさでん交通は、鉄道要覧に「土佐電気鉄道(株)から会社分割により軌道事業を承継(平26.10.1)」と記載されている。同社は土佐電気鉄道、高知県交通、土佐電ドリームサービスの3社が経営統合、共同新設分割により設立され、軌道・バス事業を引き継いだ(国土交通省リリース)。土佐電気鉄道は消滅し、大株主には高知県(50%)のほか、高知市、南国市、いの町、土佐市が名を連ねている。
筑豊電気鉄道は、黒崎駅前・熊西間に「平27.3.1西日本鉄道(株)から会社分割により鉄道事業を承継(平27.2.13認可)」と注記されている。西鉄北九州線は2000年11月26日の熊西・折尾間をもって全線が廃止されたが、黒崎駅前~熊西間は第3種事業として存続*1し、100%子会社の筑豊電気鉄道が第2種事業者として運行していた。これを会社分割により筑豊電気鉄道へ承継したもの。
松本電気鉄道は、2008年5月株式移転の方法によりアルピコホールディングスを設立、その子会社となった。10月アルピコ傘下の諏訪バス、川中島バス等が松本電鉄の子会社となり、2011年4月これら各社を吸収合併しアルピコ交通に社名変更した(アルピコHD|沿革)。鉄道要覧に注記がないのは、鉄道事業者が松本電鉄からアルピコ交通に改称しただけで、法人格は変わらなないということだろう。
西武鉄道も西武ホールディングスの100%子会社であるが、会社分割で事業が移管されたものではない。2006年まで上場会社だった*2西武鉄道は、非公開企業のコクドが大株主であった。鉄道事業者としての西武鉄道を所有するコクドはその後、プリンスホテルを経て、西武ホールディングスとなり、2014年上場した。
阪急、相鉄、近鉄、京阪、伊予鉄は、従来の社名を鉄道事業者名に使用し、見かけ上鉄道事業者は変更がない*3。上田、岳南、一畑の中小私鉄3社は本体の商号を変更せず、鉄道事業者を新たに命名した。旧名称を復活する富士急行は初めての例。
追記(4月5日):コメントを受けて、箱根登山鉄道とひたちなか海浜鉄道を表に追加した。箱根登山鉄道は、持株会社による鉄道事業分社化の第1号だった。ひたちなか海浜鉄道について、鉄道要覧は「平20.4.1茨城交通(株)から会社分割により鉄道事業を承継(平20.3.25認可)」と記載している*4。筆頭株主はひたちなか市(50.56%)だが、茨城交通は49.44%の株式を保有している。
ラクテンチは、「(株)岡本製作所から分割(平30.5.28認可)」とあるだけだが、Wikipediaによると会社分割のようだ。しかし、分割後ラクテンチは遊園地と一体で西商店に譲渡され、資本関係はなくなっている。鉄道事業の分社化という趣旨から外れるので、表への追加は見送った。