佐貫駅の改称検討

読売は、龍ケ崎市*1常磐線佐貫駅の改称を検討していることを報じている。

市内唯一のJR駅なのに市の名前なし、改称検討
 茨城県龍ヶ崎市は24日から、同市佐貫町のJR常磐線佐貫駅の駅名改称に向けた市民との意見交換会を始める。
 市は人口減対策として市外からの定住を推し進めるため、「龍ヶ崎」を冠した名称の駅にすることで、市の存在や場所を広く知ってもらうことが必要と判断。市民の理解を得た上で新たな駅名を決定し、2017年4月の改称を目指す方針だ。
 佐貫駅は、市内唯一の常磐線の駅で、市中心部に向かう関東鉄道竜ヶ崎線の発着駅も併設。市の玄関口と位置づけられているが、「佐貫駅では、外から来る人が龍ヶ崎市の駅とイメージできない」という声が多く寄せられているという。
 市とJR東日本水戸支社との話し合いでは、竜ヶ崎線竜ヶ崎駅があることから、「龍ヶ崎市駅」が最有力候補に挙げられている。
 駅名改称にかかる市が負担する費用は、概算でおよそ3億3000万円。通常なら6億3000万円ほどかかる見込みだが、17年4月の消費税率改正に合わせることで、半分程度に抑えられるという。(後略)

最有力候補という「龍ヶ崎市駅」には違和感がある。「*市」駅−駅名接頭・接尾語考(1)で書いているように、「*市」駅は、先行して開業した国鉄駅が市街地から離れた場所にあり、その後私鉄が市の中心部に設置した駅に命名するのが一般的である。
佐貫駅は日本鉄道磐城線時代の1900(明治33)年8月14日、関東鉄道竜ヶ崎線*2の開業と同時に、稲敷郡馴柴村字佐貫に設置された。馴柴村は1954年龍ケ崎町が市制施行した際龍ケ崎市編入され、佐貫駅は市内の駅になった。だから佐貫駅は、記事にあるように市の玄関口であるが、中心駅は関東鉄道竜ヶ崎駅である。佐貫駅竜ヶ崎駅とは、山口駅に対する旧小郡駅と同じ位置づけといってよい。小郡駅は2003年10月1日、小郡町山口市との合併に2年先立って新山口に改称したが、合併後であっても山口市駅にはならなかっただろう。
先行開業していた市の中心部にある伊予鉄道松山駅松山市駅に改称させ、国鉄駅が松山駅を名乗った例がある。また東和歌山が和歌山に、尻内が八戸に、上井が倉吉に改称し、市名駅が中心部から玄関口に移転した例もある*3。これらに倣えば、竜ヶ崎駅龍ケ崎市駅に改称させ、佐貫駅龍ケ崎駅を名乗るのが妥当である。しかし、民営化したJRには私鉄の駅を改称させる力はなくなったとすれば、「『龍ヶ崎』を冠した名称の駅」として「龍ケ崎口」はどうか。1972年の篠山線の廃止により篠山駅が廃止されたが、旧丹南町篠山口駅*4は、1999年の合併による篠山市の誕生後も篠山に改称されず、残っている。
追記1(6月5日):産経の5月27日付記事によると、市はJR東日本水戸支社との間で、改称時期を「平成29年4月を目指す」とする覚書を交わしていたらしい。
龍ケ崎市のサイトを見ると、この話はずいぶん前から検討されていたようだ。コンサルタント会社に委託した影響度調査報告書や、多額のコストがかかる改称に対する市民の反対意見も掲載されている。報告書には、近年の駅名改称の傾向として学校名や温泉名にまつわる名称に変更した例が多いと、筆者が駅名改称の研究で展開した議論が出てくる。糠野目→高畠、川尻→十王、神足→長岡京などの改称例も、筆者が自治体名への改称として紹介している事例である。どうせなら、自治体によって大きくばらつくコスト負担や「イメージアップ」などの定性的効果の検証が必要、というあたりも参考にしてほしかった。
関東鉄道竜ヶ崎駅を市名にあわせて龍ケ崎駅に改称するのが先で、こちらはそれほどコストもかからないだろう。佐貫という駅名に愛着があるという意見もあり、あえて改称するなら、龍ケ崎口ではなく、近年の市名+地名の複合名化傾向にあわせて龍ケ崎佐貫としたほうがよいかもしれない。
追記2(9月14日):9月10日の茨城新聞によると、龍ケ崎市は9日、JR水戸支社と佐貫駅の改称に関する協定を締結した。

佐貫駅 「龍ケ崎市駅」へ改称協定
 市とJR 市民、住民投票請求も
JR常磐線佐貫駅(龍ケ崎市佐貫町)の駅名改称事業で、同市は9日、JR水戸支社と協定を締結したと発表した。協定書には新駅名を「龍ケ崎市駅」とすることが明記された。同支社は国交省関東運輸局に駅名変更を届け、受理され次第、改称作業に着手する。協定締結で改称は実現に向け大きく前進した。一方、改称に慎重な市民グループは同事業の是非を問う住民投票実施に向け、同条例制定を求める署名を市選管に提出している。
協定書によると、新駅名は市の要望を踏まえ「龍ケ崎市駅」とし、改称時期は2017年4月1日としている。乗車券の発券にかかるシステム改修など改称費用は3億2860万円と見込み、改称費は市が全額負担する。
駅名改称を公約の柱として掲げた中山一生市長は「JRの駅名に市の名前が付くことは、計り知れない宣伝効果がある」と期待感を表明。同支社側は「作業日程を考慮し、今回の締結になった。近いうちに改称作業を開始したい」とした。
(中略)
こうした中、改称に疑問を持つ市民グループが7月から住民投票条例制定を求める署名活動を展開、本請求の必要数を上回る8475人分の署名を今月8日、市選管に提出した。署名数の確定後、同グループが市長に本請求し、市長は同条例案を市議会に提出し審議される。
一方、改称事業に賛同する市民も有志の会を立ち上げ、今月に入って署名集めや改称費に充てるための募金活動をスタートさせている。

やはり、市の玄関口にはふさわしくない、既定路線の「龍ケ崎市」である。関東鉄道佐貫駅も同時に改称するのだろうか。起点が龍ケ崎市、終点が竜ヶ崎と字体も異なり、なんとも紛らわしい。市と同一名にこだわるなら、関東鉄道竜ヶ崎駅龍ケ崎市佐貫駅龍ケ崎だろう。

*1:龍ケ崎市の市名は、読売記事の「ヶ」ではなく「ケ」が正式。異体字の竜ヶ崎が混在しているのも紛らわしい

*2:当時は竜崎鉄道。1944年鹿島参宮鉄道に譲渡。1965年鹿島参宮鉄道常総筑波鉄道の合併により関東鉄道

*3:和歌山駅は紀和に、八戸駅は本八戸に改称。旧倉吉駅は打吹に改称した後、倉吉線廃止により廃止

*4:篠山線開業の1944年第1次篠山駅から改称