特定都区市内着の乗車券の運行不能払い戻し

JR西日本は、台風19号の接近に備え13日午後4時から終日京阪神地区の在来線の運転を取りやめた。一方新幹線と私鉄各線は大きな乱れがなく運転していたというから、新幹線駅に到着した旅客は、私鉄などに乗換えて帰宅したことだろう。
特定都区市内着の乗車券を所持する旅客が在来線に乗り継げず旅行を中止したときの払戻しはどうなるか、旅規282条の2、1号ロは次のように規定している。

(旅行中止による旅客運賃及び料金の払いもどし)
第282条の2 前条第1項の規定*1により、旅客が旅行を中止し、乗車券類を駅に差し出して旅客運賃及び料金の払いもどしの請求をした場合は、次の各号に定める額の払いもどしをする。
(1)乗車券
旅行中止駅・着駅間に対する旅客運賃。この場合、原乗車券が次のいずれかに該当するときは、それぞれに定めるところによる。
(中略)
ロ 着駅が第86条及び第87条の規定による特定都区市内及び東京山手線内に関連する乗車券であるときは、旅行中止駅・当該中心駅間に対する旅客運賃とする。
(後略)

京都駅に到着した旅客は、旅行中止駅と当該中心駅がともに京都駅だから払戻額なし、新大阪駅の場合は新大阪・大阪間の運賃160円だけが払い戻される。特別下車制度のある新神戸駅の場合は、新神戸と神戸を同一視したら払戻額なし。乗継駅として認められている三ノ宮で請求すれば、神戸までの120円かもしれない。これでは在来線に乗り継げず、運賃を別に支払って*2私鉄を利用した旅客は、踏んだり蹴ったりである。
ところが基準規程を調べてみると、次の規定があった。

(旅行中止による旅客運賃の払いもどし方の特例)
第354条の2 規則第282条の2第1号ロの規定により旅客運賃の払いもどしの取扱いをする場合で、旅行中止駅が当該特定都区市内及び東京山手線内に所在する駅であるときは、同条の規定にかかわらず、旅客の希望する駅を着駅として旅行中止駅・着駅間に対する旅客運賃の払いもどしをすることができる。

最終目的駅と同一市内の新幹線停車駅で旅行を中止した場合に限るが、市内の最遠駅を着駅として請求すれば、京都市内着は240円(京都・保津峡間)、大阪市内着は390円(新大阪・杉本町間)、神戸市内着は300円(三ノ宮・舞子間)が払い戻されることになる。
問題は、この旅客との契約条件を約款としての旅規ではなく、内規の基準規程で定めていることである。このブログでも何度か指摘しているが、JRは旅客にとって本則よりも有利な取扱いを基準規程で定めるのだから問題ないと思っているのかもしれないが、旅客がそれを知らなければその恩恵にあずかることができない。
今回新幹線駅で旅行を取りやめた旅客のうち、払い戻しを受けた旅客がどのくらいいるだろうか。おそらく新幹線の下車駅で出場したときに乗車券が回収されてしまい、今となっては払い戻しの請求ができない状況だろう。JR西日本は、在来線の運行休止を決めた時点で、この取扱いを周知すべきだった。

*1:列車の運行不能・遅延等の場合の取扱方

*2:大阪市営地下鉄などとは振替輸送があったという報道がある