北総線運賃訴訟、控訴審へ

3月26日の東京地裁判決で敗訴した沿線住民は東京地裁に控訴した。東京新聞の記事

一審敗訴の住民が控訴
 北総線運賃値下げ問題で、沿線住民は九日、国に運賃是正などを求めた訴えを全面的に退けた三月二十六日の東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。
 柴田圭子原告団長は「高運賃が利用者に重大な損害を与えると指摘したにもかかわらず、沿線の千葉ニュータウン十万人の利益が侵害されている現状を放置した」と一審判決を批判した。
 一審判決では、これまで鉄道運賃をめぐる訴訟で認められなかった利用者個人が訴える資格(原告適格)を一部認めたものの、運賃是正の求めはすべて退けた。

3月26日の記事で書いたように、東京地裁北総鉄道と京成との線路使用料については、利用者に直接影響を及ぼすものではないという理由で、原告適格を認めなかった*1。しかし、当ブログの2011年6月29日の記事で書いたように、原告の主張で説得性があるのは、京成が支払う線路使用料の妥当性についてである。原告の主張は、

  • 北総線第1種区間高砂・小室間)で京成が北総に支払う線路使用料は、北総の運賃収入減少分を補填する金額に抑えられている。
  • 一方千葉ニュータウン鉄道(京成の100%子会社)の第3種区間(小室・印旛日本医大間)で、北総は運賃収入の全額を千葉ニュータウン鉄道に支払い、コストの補填だけを受けるのに対し、京成は運賃・料金収入の全額を収受して、京成使用の割合に応じたコストを線路使用料として支払っている。

というもので、線路使用条件がこのように異なるのは、不平等である。控訴審では、京成が支払う線路使用料が低く抑えられているため、北総の利用者が高運賃を負担していることを立証することになるだろう。
北総線運賃訴訟についての情緒的な議論が多い中で「Business Media 誠」の記事なぜ北総線の運賃は高いのか “円満解決”の方法を考えるは、円満解決できるかはともかく、問題の本質をついている。

 北総鉄道の設立は千葉ニュータウンの開発のためだったというが、その千葉ニュータウンの開発が目論見通りに進まなかった。これが北総鉄道の集客にマイナスとなり高額運賃となったという。しかし、その高額運賃が理由で千葉ニュータウンが不人気になっているとも言える。負のスパイラルである。
 住民も北総鉄道も困っているなかで、千葉ニュータウンの事業主体である千葉県と都市再生機構は、2013年度、つまり来年3月まで千葉ニュータウン事業から撤退する予定だ。北総鉄道の高額運賃を招いた責任は誰が取るのだろう?

責任の取り方として、筆者は、北総鉄道を上下分離して、千葉県と都市再生機構が北総の建設費負担約900億円を第3種事業者として負担し、北総は第2種事業者としてスリム化すべきだと主張する。
もともと小室・印旛日本医大間は、都市再生機構の前身住都公団が建設・保有し、第3種事業者となっていた。2004年都市再生機構は鉄道事業から撤退、京成電鉄に譲渡して千葉ニュータウン鉄道となった*2。これを再度戻すという主張である。

 ただし、これは罰ではない。当時は公設民営というアイデアは一般的ではなかった。いまならできる。北総鉄道が安くて便利になれば、千葉ニュータウンは再起動できる。都心と成田空港に便利な地域だから、住民だけではなく、企業にとっても魅力的な立地なのだ。スカイツリーやディズニーランドだって近い。業績を回復した京成電鉄の協力にも期待したい。本来、千葉ニュータウンは宝の山で、ビジネスチャンスに満ちている。それは1966年に描いた夢と変わらない。やり方を間違っただけだ。

と結ばれているが、人口減少、少子高齢化の中で“円満解決”となるかどうか。

*1:北総線値下げ裁判の会は、裁判ニュース、3月27日号外で、第一審判決が原告適格を認めたことについて一定の評価をしている。

*2:この譲渡価格は不明だが、京成が肩代わりしたからには、都市再生機構は一定の損失負担をしたと思う。