1月17日の記事で、神戸新交通の旅規の片道乗車券の発売要件には、環状線一周についての制限規定がないこと、これは東京メトロも同じであることを書いた。環状線区間を有する非均一運賃の事業者の片道乗車券の発売要件とこれに関連する運賃計算の規定は、次の表の通りである*1。
片道乗車券の発売要件 | 運賃計算の原則 | 運賃計算キロの通算 | 運賃計算キロの打切り | |
JR | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。キロを打ち切る場合は、打切りとなる駅まで(26条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(67条) | 同一方向に連続する場合(通過連絡運輸は前後のキロを通算)(68条1項) | 環状線一周、復乗、新幹線と在来線を新下関・小倉・博多で直接乗継ぐ場合(68条4項) |
東武 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しまたは環状線一周を超える場合を除く(26条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(67条) | 同一方向に連続する場合(68条) | 環状線一周、復乗(68条) |
西武 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しまたは環状線一周を超える場合を除く(26条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(67条) | 同一方向に連続する場合(通過連絡運輸の前後のキロは通算しない)(68条1項) | 環状線一周、復乗(68条2項) |
京成 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く(26条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(67条) | 同一方向に連続する場合(68条1項) | 復乗(68条2項)。千原線とその他の各線(68条3項)。成田空港線とその他各線(68条4項) |
東急 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車(26条1号) | 原則として旅客の実乗車経路・発着の順序により計算(67条) | 同一方向に連続する場合(こどもの国線、通過連絡運輸の場合の前後のキロは通算しない)(68条) | − |
東京メトロ | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く(21条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(41条) | 別に定める場合を除いて同一方向に連続する場合(42条) | − |
東京都 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く(36条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(14条の2) | 別に定める場合を除いて同一方向に連続する場合。通過連絡運輸定期乗車券(対東京メトロ)は前後のキロを通算(14条の3、1項) | 環状線一周、復乗(14条の3、2項) |
名鉄 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しまたは環状線一周を超える場合を除く(21条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(40条) | 同一方向に連続する場合(41条1項) | 環状線一周、復乗(41条2項) |
名古屋市 | 乗車経路の連続した最短経路により片道1回乗車(28条1項) | 最短経路により計算(最短経路によりがたい場合は、実乗車経路)(10条2項) | − | − |
近鉄 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しまたは環状線一周を超える場合を除く(27条1号) | 実乗車発着区間・経路の順序により計算(55条) | 同一方向に連続する場合。通過連絡運輸定期券の場合及び異名乗継駅(田原本・西田原本、王寺・新王寺)では前後のキロ程を通算(56条1項) | 環状線一周、復乗(56条2項) |
阪急 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しまたは環状線一周を超える場合を除く(18条1号) | 実乗車経路・発着の順序により計算(38条1項) | 同一方向に連続する場合(38条2項) | 環状線一周、折返し(38条2項) |
大阪市 | 乗車経路の連続した区間を片道1回乗車(25条) | 最短経路により計算(最短経路によりがたい場合は、実乗車経路)(39条2項) | 異名乗継駅(梅田・東梅田・西梅田)では前後のキロ程を通算(39条の2) | − |
神戸市 | − | 実乗車経路のキロを通算して計算(2条2項) | 環状線一周、復乗(2条3項) | |
神戸新交通 | 運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車。折返しを除く(21条1号) | 別表3で個別に規定(46条) | − | − |
神戸市以外の旅規には、片道乗車券(名古屋市と大阪市は普通券)の発売要件についての規定がある。片道乗車券は「運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車する場合」に発売し、その運賃計算経路は「実乗車経路及び発着の順序」によるというのが、JR、大手私鉄と東京都に共通している。環状線内発着・通過の場合の最短経路による運賃計算やう回乗車は、あくまでもその例外規定なのである。ところが、名古屋市と大阪市は、「実乗車経路及び発着の順序」ではなく、「最短経路(最短経路によりがたい場合は、実乗車経路)」による運賃計算を原則としている。そのため、普通券(片道乗車券)は「乗車経路の連続した区間*2を乗車する場合」に発売するという、わけのわからない同語反復規定となっている。
多数派の片道乗車券の発売要件の規定には、運賃計算キロの打切り規定に対応した、ただし書きがある。東武、西武、東京都、近鉄のただし書きは、「折返しとなる場合または環状線を一周し、これを越える場合を除く」であり、運賃計算キロの打切り規定、「環状線一周となる場合または経路の全部若しくは一部が復乗となる場合」に対応している。JRも実質的に同じである。京成、東京メトロ、東京都、神戸新交通は、ただし書きで「折返し」だけを除外している。成田空港線の開業によって環状線が形成された京成は、成田空港線についてその他の路線とは別立ての旅規を適用し、他の路線と運賃計算キロを通算しないから、「環状線一周」を除く例外規定がないのは理解できる。東京都は、運賃計算キロの打切りには、「復乗」に加えて「環状線一周」が規定されているのに、片道乗車券の発売要件は「折返し」だけというのがよくわからない。
神戸市は、片道乗車券の発売要件が存在しないが、運賃計算キロの打切り(環状線一周及び復乗)は規定されている。東京メトロは逆に、運賃計算キロ打切りの規定が存在しないが、片道乗車券の発売要件のただし書きで「折返し」だけを例外としている。東急は、片道乗車券の発売要件のただし書きも、運賃計算キロの打切り規定もない。これについては、別に書く。
追記(1月29日):知人より提供を受けた2000年当時の旅規により、表に阪急を追加した。このような基本条項に変更はないと思われるが、いずれ最新版を閲覧して確認したい。
追記2(2月7日):旅規を閲覧して表に名鉄を追加した。阪急の規定は、最新版でも変わっていないことを確認した。