折返し区間のキロ程通算

相変わらず私鉄の旅規の話。

西鉄の44条2項は、同一方向に連続する限りキロ程を通算するという一般的なルールに対し、折返し区間のキロ程を通算する極めて珍しい運賃計算の特例を定めている。

前項の規定*1にかかわらず天神大牟田線福岡(天神)・味坂間の各駅と甘木・五郎丸間の各駅相互間で久留米経由となる場合のキロ程は通算する*2

西鉄福岡・甘木間(西鉄久留米経由)を乗換案内で検索したところ、たしかに58.6km、1,040円とキロ程が通算されていた。宮の陣通過列車に対する宮の陣・西鉄久留米間の区間外乗車を認める規定はなく、その代替のようだ。

西鉄は、旅規80条で18キロ以上の乗車券で途中下車を認めているから、この乗車券で西鉄久留米で出場できる。ICカードのときはどうするのだろうと、ICカード乗車券取扱規則を読むと、20条3号に「途中下車の取扱いは行わない。」とあった。また、19条2項に

久留米駅を経由して甘木線各駅と天神大牟田線各駅相互間を乗車し出場する場合、前項で減額する片道普通旅客運賃と当該乗換駅経由の片道普通旅客運賃を比較し、不足額がある場合は別途収受する。

と規定されている。西鉄久留米経由で乗車したことをどのように判定するのだろうか。申告しなければ、宮の陣乗換えの最短経路、54.4km、800円が減額されるということか。いちいち申告していたら、ICカード乗車券の意味がないと思うが。

次は、意味不明の規定。南海の旅規は、関連する補則の条項を記載している。実乗車経路による運賃計算の原則を定めた52条の補則

補則 本条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間を通過する場合の普通旅客運賃は、太線区間内の最も短いキロ程によって計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。 (図)

図は、JR西日本大阪環状線と大阪・尼崎・京橋間で形成される環状線区間。2004年3月に69条に移行して廃止された旅規70条特定区間である。この区間内にある南海の路線は、本線の難波・新今宮間と高野線汐見橋・芦原町間で、両線はつながっておらず、最も短いキロ程の意味がわからない。JRの規則をコピーしたのが残っているのだろうか。

相鉄にもある。旅規26条1号の片道乗車券の発売要件。

普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車(以下「片道乗車」という。)する場合に発売する。ただし、その経路が折返しとなる場合又は環状線を1周し、更にこれを超える場合を除く。

相鉄に環状線区間はないから、これもJR旅規のコピーか。なお、68条(鉄道の旅客運賃計算上の営業キロ等の計算方) には、同一方向に連続する場合に限り、営業キロを通算するという規定だけで、折返しまたは環状線1周によるキロ程の打ち切り規定はない。

追記(4月27日):南海の補則について、JRとの連絡運輸の規定ではないかと気が付いた。54条の補則阪堺電気軌道との連絡定期運賃の規定があったからである。相鉄の26条と異なり、まったく関係ないJRの規定をコピーするはずがない。

連絡運輸の規定だとしても疑問が残る。本文に書いたように2004年3月に70条の面的な特定区間が廃止となり、69条7号の大阪・天王寺間の特定区間が設定された。旧70条区間通過のJR運賃が「最も短いキロ程によって計算」され、「経路の指定を行わない」ことはない。同区間大阪近郊区間に含まれ、実質的に最短経路の運賃で乗車できるから、廃止後も削除されずに残っているのか。

なお、新今宮接続のJR運賃は、旧70条時代も特定区間通過ではなく発着だから、70条の最短営業キロによる運賃計算の規定は適用されず、160条の特定区間発着の場合のう回乗車の規定だけの適用だった。

追記(4月30日):乗換案内で検索した西鉄福岡・甘木間(西鉄久留米経由)の運賃は、キロ程通算ではなく、久留米打ち切りで計算されていた(630+410=1,040)。コメントにあったように、正しくは800円。

*1:同一方向に連続する限りキロ程を通算

*2:西鉄の旅規は、福岡(天神)、久留米と自社駅に西鉄を冠していない