2000年の阪急旅規掲載

阪神1962年旅規、西武の1999年旅規に続き、旅規ポータルに阪急電鉄旅客営業規則(2000年3月20日現行)を掲載した。
2000年現行の旅規にしてはかなり古めかしい。連続乗車券は回遊乗車券、有効期間は通用期間のままである。国鉄は前者を1958年10月、後者を1968年6月に改定している。
西武の旅規を掲載した5月4日の記事に「全体的にJRの旅規を基にしているが、大手私鉄の旅規としてはかなりずさんな表記である。」と書いたが、阪急は国鉄・JRの旅規にとらわれない独自の表現が多い。第40条(年令による旅客の区分および運賃の収受)、第98条(無札旅客に対する運賃・増運賃の収受)、第100条(定期券不正使用旅客に対する運賃・増運賃の収受)は、表形式でケースを分けて規定しており、わかりやすい。
一方、西武同様、規則としてずさんな箇所も多い。10円未満のは数を10円単位に切り上げる「は数計算」は第44条で定義しているが、初出はその前の第41条である。また同じ内容の繰り返しが多い。省略した「10.荷物」は、第135条から第162条まで27箇条*1を費やしているが、ほとんどが特別扱いの新聞紙輸送に関する条項が整理されずに、繰り返されている。
阪急には、十三−宝塚−西宮北口−十三の環状線区間があるが、この区間の選択乗車は旅規に規定されていない。パスネットの不思議の脚注2からリンクしている環状線の旅規規定に記載しているように、これは、規則第62条の(注)に

規則第62条の規定にかかわらず、次の場合には乗車券を有効として取り扱うことができる。
環状線内を発着または通過となる場合で、環状線内運賃区間数が3区(10キロ) 以上の乗車券(定期券を除く。)を所持する旅客は、運賃計算経路によらないでう回して乗車することができる。

と規定されている。これは2011年に閲覧した当時の旅規でも同じだったが、さらに「(営業関係達示)う回乗車の取り扱い補足」として

環状線内9キロ以内発着区間(150円または180円区間ゆきのとき)は、本来う回乗車を認めないのが原則であるが止むを得ずう回乗車する場合は、う回乗車普通運賃360円として、取り扱うこととする。
(注)180円区間ゆき普通券を所持する旅客が運賃計算経路によらないでう回して乗車する場合は、360円から既収運賃180円を差引いた残額180円を追収し、特別補充券(記事欄「う回」と追記する。)を発行のうえ認める。
◎う回運賃計算根拠
環状線一周キロ程(43.1km)−2区最長キロ程(9km)=34.1km(7区360円)

と記載されていた。しかし、当時阪急のウェブで運賃検索すると10キロ以下でも「う回」を選択すれば最短経路の運賃が表示された。現在のウェブ運賃検索では、普通券の運賃に経由が表示されない。
追記(7月9日):入場券の制限時間を超える場合の入場料金の追加按分収受(125条)は、JR旅規が1992年4月1日に導入したもの。阪急旅規では「掛ける」・「割る」を使っているが、ここだけ「乗じる」・「除す」としているのは、JRに倣ったのだろう。近鉄にも同じ規定がある。実際に按分収受している事例があるのだろうか。
京急の旅規は、JRと同様、制限時間超過を入場券を無効として回収する事由の一つ(297条)としているが、無効・回収の場合は入場料金を収受するとし(300条)、按分収受の規定はない。東急旅規は、他社と同様「入場券の使用時間を制限して発売することがある」という規定があるが、制限時間超過を297条の無効事由に含めていない。なお、東京メトロ営団時代から、旅規に入場券の条項がない。

*1:第141条は削除