旅規290条

読者からメールをもらった。JR西日本1月31日プレスリリースは、1月29日新大阪で運転取りやめになった特急サンダーバード4号について、指令員が特急料金を払い戻さないとしたのは誤りで、全額払い戻すとしているが、旅規290条に基づけば指令員の取り扱いは正当ではないかとの疑問である。
結論から言えば、本件に旅規290条は適用されず、289条2項の本則に従って全額払い戻しとなる。290条は「新大阪駅着となる急行券、特別車両券」で「大阪駅新大阪駅との区間が乗車できなくなった場合」は「すでに収受した急行料金又は特別車両料金とすでに乗車した区間に対する急行料金又は特別車両料金とを比較して過剰額の払いもどしをする」という規定であり、新大阪・大阪間で運転停止になったサンダーバード大阪駅着の特急券には適用されない。
旅規290条はもともと、東北本線常磐線にあった一部の東京駅着の急行列車が上野駅で打ち切りになったときに適用するため、1968年10月1日の旅規改定で規定された(当時の旅規290条5項として挿入)。大阪・新大阪間に旅規290条が適用されたのは、1970年3月10日の旅規改定時である。当時は、山陽本線の多くの急行列車が新幹線乗継のため、大阪経由新大阪まで運転されており、大阪まで正常に運転され、大阪・新大阪間が運行不能等になったケースに適用されたものである。その後新幹線の岡山・博多延伸開業及びブルートレインの全廃等により、新大阪発着の特急列車の多くが廃止され、現在290条の「新大阪着」が適用されるのは、新大阪発着の「こうのとり」と京都発着新大阪停車の「スーパーはくと」だけである*1
1973年4月1日の旅規改定で、本来の上野・東京間の特例が廃止*2、代わりに品川・東京間が規定され、現行の290条1項となった。民営化後、運転系統の変更にあわせて2、3項が追加され、2015年3月14日の上野・東京ライン開業により、4項としてもともとの東北本線の急行列車への適用が復活した。指令員が勘違いしたように、290条を大阪着の北陸本線特急に適用してもよいと思う。品川・東京間や上野・東京間と比べてバランスが取れていない。なぜ、現在まで旅規に規定されないのだろう。
上記の趣旨を読者にメールしたところ、読者からJR東日本「きっぷあれこれ」の事故などの場合の取り扱い

運転をとりやめた列車の特急・急行料金は全額お返しいたします。ただし、品川〜東京間(東海道新幹線を含む)、上野〜東京・品川間、大阪〜新大阪間及び東北、上越北陸新幹線の大宮〜上野・東京間または上野〜東京間のみ運転をとりやめた場合は、特急・急行料金の差額のみのお返しとなります。

と書かれている(下線筆者)ので、誤解していたと返事があった。JR西日本の説明も全く同じである。JR西日本の指令員が誤った案内をしたのも、情状酌量の余地がある。
追記(2月4日):混乱があるようなので、あらためて290条の差額払い戻しの適用範囲を整理する。

路線 下車駅 不乗区間
1項 東海道本線(含む新幹線) 新橋、東京 品川・東京間
1項 東海道本線 新大阪 大阪・新大阪間
2項 東北・上越新幹線 上野、東京 大宮・上野、上野・東京間
3項 東海道本線・山手線 品川・池袋間各駅 品川・池袋間
4項 東北本線東海道本線 上野・品川間各駅 上野・品川間

いずれも一方向のみの適用である。双方向であれば、サンダーバードにも適用されることになる。東京駅で下車する(東京駅までの特急券を所持する)成田エクスプレスの旅客はいないと思うが、品川で打ち切られば、1項を適用して差額の払い戻しとなる。
本文で「品川・東京間や上野・東京間と比べてバランスが取れていない」と書いたのは、1項の品川・東京間と2項の上野・東京間を意識していた。
3項は、池袋・新宿着のスーパービュー踊り子・踊り子で品川駅を経由しないが、ここでも仮想品川駅が想定されている。

*1:上りの「サンライズ瀬戸・出雲」は大阪に停車するが、新大阪に停車しない

*2:東北新幹線建設工事の開始に伴い、東京・上野間の回送線が使用できず、東北本線の特急列車が東京駅を発着することがなくなったたため