和久田康雄氏逝去

鉄道ピクトリアル7月号の最終頁に

本誌編集委員として長年にわたりご指導をいただいてきた、私鉄史研究の第一人者和久田康雄さんが逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。次号で追悼文を掲載する予定です。

という、あまり目立たない記事が掲載されている。他のメディアに訃報は出ていないようだ。
和久田氏の著書はけっこう読んでいる。書棚にあったのは(単著のみ)

「私鉄史ハンドブック」は、1968年刊行の「資料・日本の私鉄」の増補版で、和久田氏のライフワークである私鉄史研究の集大成。副題に"Private railways of Japan, Their networks and fleets - 1882 to 1991" とあり、事業者ごとの路線と車両の変遷を記している。巻末に英語のIndexやNoteもある。さらに改稿して2014年に「鉄道ファンのための私鉄史研究資料 1882 to 2012」が刊行されたようだが、これはもっていない。
「日本の私鉄」と「日本の地下鉄」は、岩波新書には珍しい鉄道書である。同じく1980年代に刊行された原田勝正氏の「満鉄」(1981年)、「日本の国鉄」(1984年)と対をなす。当時編集部に「鉄」がいたのかと「あとがき」を調べたが、和久田氏と原田氏の担当編集者は別人だった。
「鉄道をよむ」は、所蔵する鉄道書コレクション*1から100冊を選び、解説している。自著は「日本の地下鉄」を選んでいる。「『日本の私鉄』の方が思い出は深いが、発行された時の反応は、この本のほうが大きかったように感じた」とのこと。「鉄道をよむ」刊行後も、鉄道ピクトリアルに毎号、新刊の鉄道図書を取り上げ、的確な書評を寄稿されていた。

*1:金沢文庫と称し、個人の鉄道関連蔵書としては国内最高を誇るものとして知られる。2009年NPO法人名古屋レール・アーカイブスに寄託された