続・短絡線経由の運賃

国鉄時代に短絡線を経由する臨時列車の運賃を旅客営業路線の営業キロで計算するルールがあったことが、前記事へのコメントで確認された。約款としての営業規則ではなく、基準規程というところに若干の疑義があるが、臨時列車に限定したのであれば、とくに問題がある取扱いとは思わない。どういうわけか、この規定はJRになってから削除された。
「むさしの」は、毎日運転されている定期列車で、列車番号も2000番台である。大宮から与野・別所信号場・武蔵浦和経由の「しもうさ」も2000番台の定期列車である。こちらは、南浦和経由で計算されるから、逆に運賃計算キロが短縮される。「むさしの」も実キロとの差は2.0キロであり、目くじらを立てるほどではないかもしれない。しかし分割民営化以降、旅規67条の実乗車キロによる運賃計算の原則に対し、臨時列車・定期列車を問わず短絡線経由のキロを適用しない旨の規定が存在しないことが問題である。

もっと問題なのは、湘南新宿ラインである。大崎・西大井・品川の位置関係と駅・信号場間のキロ程を図に示す。旧目黒川信号場、旧蛇窪信号場と大崎駅の3点を頂点とするデルタ線があり、特急「つばめ」と「はと」が展望車を連結した客車列車の時代に、方向転換に使用された。蛇窪と目黒川の両信号場は、1965年7月大崎駅に統合、廃止された*1営業キロが設定されているのは、品川・西大井間と品川・大崎間で、大崎・西大井間には設定されていない。
湘南新宿ラインの電車は、大崎から旧蛇窪信号場への短絡線をとおり西大井に向かう。大崎・西大井間の実キロは2.5キロ、140円であるが、運賃は品川経由の5.6キロで計算され、160円である。西大井・渋谷間は170円が220円に、新川崎・池袋間は390円が470円になる。
湘南新宿ラインの運転は、2001年12月1日のダイヤ改正で、25往復が設定されてからである(当時東京臨海高速線乗り入れの工事を行っていた大崎駅には停車せず)。それ以前から、スーパービュー踊り子などがこの短絡線を走っていたが、新宿・横浜間ノンストップで、運賃は距離の短い品川・川崎経由で計算したので、問題はなかった。新宿湘南ラインが西大井と新川崎に停車することになり、品川経由運賃計算の問題が顕在化したが、設定当初は昼間だけの試行運転期間であり、大崎駅に停車し、本格運行となる2002年12月のダイヤ改正時に、大崎・西大井間の営業キロを設定するだろうとの観測が多かったようだ。しかし、その後も是正されず、2010年3月の武蔵小杉駅の設置により影響範囲が拡大した。
旅規の原則に反した取扱いを12年も続けているのは、問題と思う。なお、湘南新宿ライン駒込・田端信号場間も営業キロ設定のない短絡線を通過するが、池袋・赤羽間ノンストップで、基準規程110条の列車特定区間で十条経由の運賃で計算されるから問題は生じない。

*1:以上、駅間のキロ程と廃止時期はJTB「停車場変遷大事典」による