短絡線経由の運賃

武蔵野線の短絡線、国立・新小平間と西浦和・与野間を経由する八王子・大宮間の「むさしの」という列車がある*1。毎日運転される定期列車であるが、JTB時刻表では本文の武蔵野線のページではなく、巻頭の臨時列車のページに掲載されている。
「むさしの」の八王子日野・大宮間の営業キロ44.139.3キロだが、運賃計算に使用される営業キロは、西国分寺武蔵浦和与野本町経由の47.941.3キロである。その結果、運賃(電車特定区間)は、41-4535-39キロの720640円ではなく、1ランク上の800720円となる。
実は「むさしの」ルートの二つの短絡線は性格が異なる。西浦和・与野間は、JR東日本の第1種事業者区間であり、JR貨物が第2種事業者として貨物輸送を行っている。一方、国立・新小平間は、武蔵野線の他の短絡線、流山・北小金間と流山・馬橋間と同様、JR貨物の第2種事業区間だが、JR東は第1種事業者になっていない*2。しかし、線路の所有者(第1種または第3種事業者)が存在せず、他人の線路を使用して運送を行う第2種事業者だけが存在するというのは、考えられない。第1種事業区間から漏れているが、JR東の旅客営業路線であることは間違いななく、現に国立・新小平間の「むさしの」だけでなく、流山・北小金間には臨時急行「ぶらり鎌倉」などが運転されている*3
JRの旅客営業規則第67条は、

(旅客運賃・料金計算上の経路等)
第67条 旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によつて計算する。

と定めている。「実際の乗車経路」がJRの運賃計算の大原則である。これに対し、経路特定区間や特定都区市内などの運賃計算の例外が定められているが、短絡線を経由する場合の例外規定は、旅規にも基準規程にもみあたらない。したがって、実乗経路の営業キロによって計算をせず、過剰な運賃を徴収するのは、運送契約に違反している。百歩譲って、JR東の第1種区間ではない国立・新小平間は西国分寺経由のキロでの計算を認めるとしても、西浦和・大宮間は短絡線経由のキロ(武蔵浦和与野本町経由に比べ1.8キロ短い)にすべきだろう。
とは言え、この取扱いは国鉄時代から一貫しているようだ。短絡線に営業キロが設定され、この営業キロで運賃計算したのは、特急「あすか」が運転されていた阪和貨物線八尾・杉本町間だけだった。しかし当時は、基準規程の前身の「旅客及び荷物営業細則」に短絡線経由の営業キロによらない運賃計算の例外規定が存在したと聞いたことがある。これは、どんな規定だったのか、また、いつ、なぜ廃止になったのか、ご存知の方、ご教示願いたい。
追記(8月3日):やまやまさんの指摘を受けて、運賃計算に使用した八王子・大宮間を日野・大宮間に変更。時刻表にJTBを追加。

*1:府中本町から大宮行きの「むさしの」もあるが、逆方向には設定されていない

*2:同様の区間は7区間ある。駒鉄太郎のデータベースの旅客会社が営業キロを持たないJR貨物2種区間参照

*3:「しもうさ」が運転されている別所信号場・武蔵浦和間は武蔵浦和駅構内扱で営業キロがない