鉄・軌道事業者の回数券(1)

回数券は、定期券を購入するほどではないが、ある程度の頻度で利用する旅客を対象に設定され、普通乗車券と定期券の中間に位置づけられる。国鉄・JRの回数券制度の歴史に見たように、その発売条件(券片数、割引(割増)率、有効期間等)は時代とともに変化してきた。現在の回数券の基本形は、10回分の運賃で11回乗車可、3ヶ月有効であるが、その他、使用可能日時・対象区間等発売条件を異にする各種回数券が設定されている。
全国の鉄・軌道事業者が現在発売している回数券(特急券との一体型を除く)を数回にわたって紹介する。まずは、JR、大手私鉄と公営企業から。なお、「11/10」は、11券片を10回分の運賃で発売することを示す。

事業者 回数券の名称等 タイプ 有効期間 普通*1 時差*2 土休日*3 備考
JR6社 普通回数乗車券 区間 3ヶ月 11/10 - -  
  通学用割引回数乗車券*4 区間 3ヶ月 11/5*5 - - 通信制高校
  通学用割引回数乗車券 区間 3ヶ月 11/8*6 - - 放送大学
JR西日本   区間 3ヶ月 11/9 - - 京阪神の一部区間
  昼間特割きっぷ 区間 3ヶ月 - 12/9 - 京阪神の一部区間
JR四国 6枚回数券 区間 3ヶ月 6/5.4*7 - -  
JR九州 ミニ回数券 区間 1ヶ月 6/5.4 - -  
東武   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
西武   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
京成   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10 スカイアクセス線は、普通回数券のみ*8
京王   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
小田急   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
東急   金額式 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
京急   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
相鉄   区間 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
東京メトロ   金額式 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
名鉄 一般・時差・土休日           2012/02/29発売終了
  身体障害者割引回数券 区間 3ヶ月 11/5*9 - - 第1種身体障害者(本人および介護者)
  知的障害者割引回数券 区間 3ヶ月 11/5 - - 第1種知的障害者(本人および介護者)
  蒲郡線回数きっぷ10テン 区間 3ヶ月 10/9 - -  
  広見線回数きっぷ10テン 区間 3ヶ月 10/9 - -  
近鉄 回数券カード 金額式 3ヶ月 11/10 12/10 14/10 磁気カード式
南海   金額式 3ヶ月 11/10 12/10 14/10 磁気カード式
京阪   金額式 最大4ヶ月((購入日の翌月から3ヶ月。以下同じ 11/10 12/10 14/10 切符式(京阪線・ケーブル)・磁気カード式(大津線)
阪急   金額式 最大4ヶ月 11/10 >12/10, 6/5 14/10, 7/5 切符式・磁気カード式。阪神の同一金額区間に乗車可
阪神   金額式 最大4ヶ月 11/10 12/10, 6/5 14/10, 7/5 磁気カード式。阪急の同一金額区間に乗車可
西鉄   区間 3ヶ月 11/10 - -  
  パルチケット6 区間 3ヶ月 6/5 - - 福岡(天神)駅または久留米駅を発着駅とする区間
札幌市 地下鉄昼間割引カード 金券式 期限なし - 25%割増 -  
  市電専用回数券 金券式 期限なし 10%割増 25%割増 -  
函館市   金券式 期限なし 10%割増 - -  
仙台市 ジョイカード 金券式 期限なし 10%割増 - -  
東京都 地下鉄・日暮里舎人ライナー 金額式 3ヶ月 11/10 - -  
  荒川線 金券式 期限なし 12%割増 - -  
横浜市   金額式 3ヶ月 11/10 12/10 14/10  
京都市   金額式 最大4ヶ月 11/10 12/10 -  
大阪市 回数カード 金券式 期限なし 10%割増 - - 磁気カード式
  1区特別回数券 金額式 最大4ヶ月 12/10 - -  
神戸市   金額式 最大4ヶ月 11/10 6/5 7/5  
福岡市             2001/10/01発売休止
熊本市 TO熊カード 金券式 期限なし 10%割増*10 - - 磁気カード式。市電・市営バスほか5バス事業者共用
鹿児島市             2005/03/31廃止

回数券のタイプとして、区間式と金額式がある。区間式は使用区間を券面記載の駅間に限定したもの、金額式は同一運賃区間で使用可能なものである。乗越しの場合、区間式は乗越し区間の運賃を収受するが、金額式は差額精算となる。関西ではほとんどの事業者が金額式を採用しているが、関東では区間式が一般的である。
軌道から出発した関西私鉄の多くは、ある時期まで区間制運賃*11を採用していたが、回数券も区数ごとの金額式だったと思われる。対キロ区間制に移行した際にも、この金額式を継承したのではないかと推定される。経緯をご存知の方、ご教示いただければ幸いです。

*1:使用日時の制限なし

*2:10-16時、土休日終日使用可

*3:土休日使用可

*4:以下の表に記載していないが、JR以外も同じ割引率で発売している。西武、東京メトロ近鉄、東京都、横浜市等の旅規で確認した

*5:普通回数旅客運賃の50%引き

*6:普通回数運賃の20%引き

*7:6回分運賃の10%引き。以下同じ

*8:北総鉄道併走区間は、北総鉄道の昼間割引回数券・土・休日割引回数券(ともに15/10)が使用可能

*9:普通回数旅客運賃の50%引き。以下同じ

*10:5000円カードは12%。通学カードは30%

*11:ほぼ等距離の複数の区に分割し、通過する区数に応じて運賃を定める