続々・初期グリーン料金制度の矛盾

またまた1969年5月のモノクラス制導入時の話である。当時の新聞記事を縮刷版で読んでいて、朝日新聞5月10日夕刊に掲載された記事を見つけた。

国鉄値上げお粗末スタート くい違う払戻し額 一等券 グリーン券への変更
きょう十日から国鉄運賃値上げ。そのなかでも、一等車が廃止されてグリーン車になったため、これまでの一等料金より逆に”値下げ”になる場合もある。では、いくら払戻しされるか―国鉄の各機関や現場に聞いてみたところ、三つの答えが返ってきた。どれが”正解”なのだろう?

新幹線東京・新大阪間の一等乗車券・特急券を購入していた旅客がグリーン券への変更に伴い、払戻しされる金額の話である。5月10日の記事に書いたとおり、同区間の運賃・料金は、次の通り6,700円から6,130円に値下げされた。その差額は570円。

旧運賃料金新運賃料金
運賃
急行料金
G料金
3,180
3,520
-
6,700
2,230
1,900
2,000
6,130
新聞記事によると、払戻し額は、東京駅八重洲中央口精算所が570円、新幹線東京車掌所?が380円。国鉄本社で計算してもらった”正解”は950円だったという。

国鉄の説明では「ひかり」の場合、旧一等特急券(三千五百二十円)がそのまま新しいグリーン券(二千円)と特急券(千九百円)に使え、旧一等運賃(三千百八十円)と新運賃(二千二百三十円)の差額九百五十円を払戻すことになる、という。

東京車掌所の380円の根拠は不明だが、国鉄本社の見解が正解だとすると、運賃と料金を分けて、それぞれ過剰額は払戻し、不足額は収受しないという取扱いである。限りなく一等運賃に近かったグリーン料金は、ここでは一人前の「料金」として扱われている。
旅規第5条の「運送契約は運賃・料金を支払い、乗車券類の交付を受けた時に成立し、契約時の規定によって取り扱われる」という原則は当時も同じだから、値上げ前に乗車券を購入するという自衛手段は広くとられていた。引用した記事のとなりに、「切符の売上はガクン」という記事があり、「(運賃値上げ法案が成立した)9日の指定券売上座席数は8日の2割増、とくに午後4時以降は5割増」と書かれている。
しかし、値下げのとき差額を、それも旅客にとって最も有利となる金額を払い戻すというのは、どんな規程に基づくものだったのだろう。当時の乗車変更は、「不足額は収受するものとし、過剰額は払いもどしをしない」だったから、国鉄としては破格の取扱いである。このような取扱いを予想して、事前購入した旅客もいたのだろうか。