周遊割引乗車券発売基準規程

7月13日の記事は周規改訂履歴の情報源である鉄道公報の話だったが、今日は周規の改定内容について書く。今回追加した期間の改定内容を見ると、周規で定めていた契約条項を「別に定める」とした変更が散見される。例えば、普通周遊券と均一周遊券の旅客運賃は、1974年10月1日施行の改定で「別に定める」とされた。
普通周遊乗車券の運賃は、第8条第1号の

一般周遊乗車券及びワンポイント周遊乗車券の旅客運賃は、普通旅客運賃を1割引し、旅客規則第74条の2に規定するは数計算(以下「は数計算」という。)をした額とする。(後略)

が、

普通周遊乗車券及びこれと一括発売する周遊船車券の旅客運賃は別に定めるところにより、割引の旅客運賃とする。

と改定され、均一周遊券は、第20条で

一般用均一周遊乗車券(第16条第4項の規定により発売するもの*1を除く。)の旅客運賃・期間及び発地帯の国鉄線駅と自由周遊区間の入口の駅との区間の乗車船経路は、別表第6号の通りとする。

と規定していたが

第16条第1項から第3項までの規定により発売する均一周遊乗車券の旅客運賃、有効期間及び発地帯の国鉄線駅と自由周遊区間の入口の駅との区間の乗車船経路は、別に定める。

と改定された*2
旅客営業規則(旅規)に旅客営業取扱基準規程があるように、単行規程にも約款を補完する基準規程がある。周遊割引乗車券発売規則(周規)に対応するのが周遊割引乗車券発売基準規程(周基)であった。「別に定める」とは、普通周遊券の運賃規定が周規第8条から周基第9条の2に移行し*3、均一周遊券については周基第26条で「ワイド周遊券は別表第7に、ミニ周遊券は別表第7の2に掲げるとおり」と定めたことを意味する。
もっとも重要な契約条項である運賃が約款から外れた一方、運賃払戻しの手数料は周規本文に残されるという奇妙な事態になったのである。その他、それぞれの様式も最後まで周規別表に残った。
均一周遊券の運賃等は、時刻表のピンクのページに記載され、周知されていたが、普通周遊券の割引率について直後のJTB時刻表1975年3月号には記載がない。その代わり、オーダーメードの普通周遊券のモデルコースをレディーメード化し、1972年7月誕生したルート周遊券13コース(サブルート3コース、レンタカールート7コースを含む)の運賃が記載されている。
そのルート周遊券だが、周規にも周基にも全く規定されていない。「国鉄乗車券類大事典」(JTB、2004年1月刊)には

昭和47年6月30日(公示120、7月15日施行)、「周規」に基づいた通達(旅総221)で「ルート周遊券」が生まれた。

とあるが、公示120号は7月1日付の旅規の改定公示であり、通達旅総221号は鉄道公報の6月30日号にも、7月1日号にも掲載されていなかった。周遊券と称しているが、個別の通達による特別企画乗車券の先駆のようである。「周規の改定内容について書く」と言いながら、また情報源の話が多くなってしまった。
追記(7月25日):知人から、「ルート周遊乗車券の発売について(通達)」という出所不明の文書のコピーをもらった。昭和48年8月28日付旅総第332号で、

周遊割引乗車券発売規則(昭和30年1月日本国有鉄道公示第20号。以下「周遊規則」という。)に定める普通周遊乗車券の1種として、特定の観光地を周遊できるルート周遊乗車券を下記により発売する。

という、旅客局長、自動車局長と経理局長の3者連名で国鉄の各部署に送達された文書である。内容は、種別、発売箇所、効力、様式、乗車変更、払いもどし等、周規の各条項を網羅している。「普通周遊乗車券の1種として」とあるが、内容的には普通周遊券と均一周遊券の折衷版であった。例えば、普通急行(指定席・グリーン車・寝台を除く)には急行料金不要で乗車できた。また、「一部の券片の区間内については、別表に掲げるところによりその乗車回数を制限しない」という規定もあった。
附則の第2項に

この通達の施行に伴い、ルート周遊乗車券の発売について(昭和47年9月21日付旅総第467号)は、昭和48年8月31日限り廃止するほか、旧様式となるルート周遊乗車券は当分の間、訂正して使用することができる。

と書かれており、先行の通達があったことがわかる。ところが、「国鉄乗車券類大事典」に書かれていた通達旅総221号と同様、この二つの通達も鉄道公報に掲載されていない。普通周遊券、均一周遊券に次ぐ第三の周遊券を発売するのだから、本来は周規を改定して公示すべきであるのに、なぜ鉄道公報にも掲載しない通達*4で行ったのだろうか。

*1:準発地帯・発地帯間を附加して発売するもの

*2:特殊用均一周遊券(ミニ周遊券)については、70年10月1日の発売開始時から「別に定める」であった

*3:国鉄線(国鉄バスを除く)が2割引きになったのは、1984年4月20日の運賃改定時だったと思うが、この通達が記載された鉄道公報も号外であり、確認できていない

*4:昭和47年9月21日の公報には、旅客局長の荷物関連の通達が3件掲載されている。昭和48年8月28日は通達が1件も掲載されていない