東急の営業規則

パスネットの不思議で、私鉄各社の環状線区間の運賃計算・迂回乗車の規定について書いている。東急の旅規を入手し本日の改訂に反映した。

先日、渋谷駅で営業規則の閲覧を頼んだ。駅員は、「何を調べたいのですか」と聞く。環状線区間の運賃計算について知りたいと答えたところ、いったん奥に引っ込んでイントラネットからプリントアウトしたらしいA4の用紙を3枚くれた。

(旅客運賃の特例)
第70条 第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間内にある駅発または着もしくは通過となる場合の普通旅客運賃または回数旅客運賃は、太線区間内の最も短いキロ程によって計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。
  図の太線区間:旗の台−蒲田−多摩川−自由が丘−大岡山−旗の台を外周とする区間
2 前項の規定によるもっとも短いキロ程により計算した普通旅客運賃または回数旅客運賃が他経路のキロ程により計算した普通旅客運賃または回数旅客運賃よりも高額となる区間については最も低廉となる普通旅客運賃または回数旅客運賃とする。この場合においても太線内は経路の指定を行わない。

(特定区間を通過する場合の選択乗車)
第157条 旅客は、乗車券(定期乗車券を除く。)によって、次に掲げる区間(略図中太線区間)を通過する場合には、いずれか一方の経路を選択して乗車することができる。
  図の太線区間:大岡山−田園調布−自由が丘−大岡山を外周とする区間

(特定区間発着の場合の選択乗車)
第158条 前条に規定する区間(略図中太線区間)にある駅発または着の乗車券(定期乗車券を除く。)を所持する旅客は、その区間においてはいずれか一方の経路を選択して乗車することができる。
  図の太線区間:旗の台−蒲田−多摩川−田園調布−大岡山−旗の台を外周とする区間

ここで注目すべきは、70条の運賃計算と157条及び158条の選択乗車の規定との間に整合性が取れていないことである。70条は特定区間発着及び通過の場合の運賃計算の特例であるが(JRの旅規70条は通過のみ)、選択乗車については、区間内発着の乗車券では70条のすべての区間で認めているが、通過の乗車券では一部の区間にしか認めていないのだ。
157条の選択乗車によって、たとえば、都立大学から洗足に行く際、運賃計算経路の自由が丘(大井町線)大岡山経由ではなく、田園調布経由のルートをとることが認められる。これによって自由が丘と大岡山で2回の乗り換えをせずに、田園調布の1回の乗換えで済み、距離は長いが所要時間が短縮される。
また、旗の台−多摩川間の太線区間を経由する五反田−武蔵小杉の乗車券は、70条に従って最短キロの旗の台・大岡山・田園調布の経路で発売され、運賃計算経路だけでなく、五反田(池上)旗の台(大井町)自由が丘(東横)武蔵小杉という経路(いずれも2回の乗換えを要す)で乗車できる。しかし、70条の太線区間のうち、157条の太線区間以外では、発着の乗車券でしか迂回乗車ができないので、同じ2回乗り換えの五反田(池上)蒲田(多摩川多摩川(東横)武蔵小杉と乗車することはできない。このルートで乗車しようと思っても、蒲田経由の乗車券は発売されない。
途中下車が認められていないから、五反田・武蔵小杉間で蒲田経由の迂回ルートをとる意味は、ほとんどない。しかし、旗の台発武蔵小杉行の乗車券であれば、蒲田経由の乗車が可能となる。発着と通過によってこのような差をつける意味がよくわからない。
また、70条2項は何を意味するのだろう。擬制キロが採用されているわけではないから、最短キロの運賃が最も低廉となるはずである。もしかしたら、事業者間の相互乗り入れやラッチ内乗り換えの場合、乗車経路にかかわらず最低運賃を引き落とすパスネットの使用を考慮した条項かもしれない。