富山ライトレールの信用降車

富山ライトレール10月5日付リリース。平日の朝ラッシュ時間帯(始発から9時まで)に実施していた「信用降車」(ICカード利用者を対象としたワンマンカー後方扉での運賃収受)を、10月15日から終日に拡大するという。
一般には信用乗車といわれ、駅員や乗務員による改札や運賃収受を省略し、乗客の自己管理に委ねる方式。欧州等では、LRTを中心に広く普及し*1、旅客の乗降時間の短縮による定時運行の維持に効果がある。無賃乗車が懸念されるが、抜き打ちの検札により、無賃乗車を行った旅客に高額のペナルティ(通常運賃の10倍等)を課すことによって、抑止力としている。
日本で信用乗車方式が普及しない理由として、ペナルティーが通常運賃の3倍までと低く抑えられていることが指摘されている。各社の約款で規定されている3倍のペナルティ(普通旅客運賃とその2倍に相当する額の増運賃)は鉄道営業法に基づく国土交通省令鉄道運輸規定の第19条

第十九条 有効ノ乗車券ヲ所持セズシテ乗車シ又ハ乗車券ノ検査ヲ拒ミ若ハ取集ノ際之ヲ渡サザル者ニ対シ鉄道ハ其ノ旅客ガ乗車シタル区間ニ対スル相当運賃及其ノ二倍以内ノ増運賃ヲ請求スルコトヲ得

に基づいている。
この問題については、西川健氏の論文信用乗車方式と割増運賃制度についてが興味深い。高額ペナルティを法的にいかに位置付けるかを検討し、

この割増運賃の規定の見直しを検討しようとすれば,関係者間での事前合意に基づく違約金の予定額を法令で定めるということは極めて異例であること及び我が国の民事法制では実損額を超える懲罰的賠償を認めていないことに鑑みると,単に省令の改正ということに留まらず,省令の根拠である鉄道営業法が何故にこのような制度を定め省令に委任しているのか等,特に法的に慎重な検討が求められると考えられる.

と、結論付けている。一方、富山ライトレールのラッシュ時の取扱いを例に挙げて、ICカードによる運賃収受方式により、特段の法的制裁措置を設けなくとも実質的に信用乗車制度の導入が可能との見解を示している。

*1:欧州大陸では一般の鉄道も、地下鉄を除き、改札を設置せず、乗客は自由に乗降できる

ICカードで東海道・山陽新幹線乗車

JR東海JR西日本が9月30日、交通系ICカード東海道・山陽新幹線に乗車できる新サービス、スマートEXを開始すると報じられている。
ニュースリリースによると、手持ちのクレジットカードと交通系ICカードを登録し、座席を予約するとチケットレスで乗車できるというもの。決済はクレジットカードで行い、交通系ICカードのSFを支払い手段とするわけではないようだ。
年会費は不要だが、割引額は通常の運賃・指定席特急料金から200円引きにとどまる。ただし、従来の従来のEX-ICサービスと同様、新幹線のみに適用され、在来線へ(から)の乗継は、特定都区市内制度を含めて適用されず、差額はICカード乗車券から引き落とされる。一方、片道の営業キロが 601キロ以上の区間に「スマートEXサービス(往復割引)」 が設定され、こちらは往復割引乗車券と異なり、購入時点において最大1ヵ月先の復路の列車を予約できる。
スマートEXのホームページが開設されているが、まだ会員登録はできず、「規約への同意」の画面から会員規約を見ることもできない。
JR東海ICカード乗車券運送約款は、8月14日に改定され、第2条(適用範囲)の後段に

ただし、ICカード乗車券をEXサービス運送約款(平成20年3月社通達第73号)第2条第3項第13号に定めるEX-ICカード等として使用する場合(以下、「EX-ICカード等としての使用」という。)については、EXサービス運送約款の定めるところによる。

が追加された。同日付で全面改定されたEXサービス運送約款に、スマートEXも規定されているが、会員規約は記載されていない。なお、第10条第1項第1号に「IC入場」が規定され、ICカードは会員IDと照合・確認する手段であることがわかる。

7月1日施行の旅規改定

いつの間にかJR東日本の旅規が2017年7月1日現在に変更になっている。JR東海運送約款の改正履歴で確認し、JR東日本旅規改訂履歴(条項順)(日付順)を更新した。
111条(団体旅客運賃)の改定で、割引取扱期別の第1期のうち「3月1日から5月31日まで」がJR北海道線内相互発着だけ「3月1日から4月30日まで」となっていたが、この例外が削除された。なお、JR東日本JR東海とでは、「次表のとおり」と「次のとおり」と、わずかの違いがあるが、JR東日本の条文を採用している。

基準規程旧20条

「むさしの」と「しもうさ」の運賃計算経路について書いた2014年8月2日の記事のコメントで、非営業線区を経由する臨時列車に関する国鉄時代の基準規程20条の教示を受けた。「しもうさ」の運賃計算経路について新たなコメントがあった機会に、民営化時に廃止された旧国鉄の旅客営業取扱基準規程20条(1974年4月現行)を紹介する。

(旅客の非営業線区における臨時取扱方)
第20条 旅客の非営業線区を経由する臨時列車を運転し、旅客の取扱いを行う場合は、順路による旅客の営業線を経由したものとして取り扱うものとする。ただし、次に掲げる旅客の非営業駅に着発する場合は、各そのかつこ内のキロ程によりその取扱いをするものとする。

        (参考)
(1) 塩釜港 (陸前山王・塩釜港 4.9km)   (1) 塩釜港 (陸前山王・塩釜港 4.9km)
        (2) 東新潟港 (越後石山・東新潟港間 6.0km)
        (3) 沼垂 (越後石山・沼垂間 4.0km)
(2) 隅田川 三河島隅田川 3.2km)   (4) 隅田川 三河島隅田川 3.2km)
  (北千住・隅田川 4.3km)     (北千住・隅田川 4.3km)
(3) 小名木川 (小岩・小名木川 8.6km)   (5) 小名木川 (亀戸・小名木川 2.1km)
(4) 越中島 (小岩・越中島 11.7km)
(5) 汐留 (品川・汐留間 4.9km)   (6) 汐留 (品川・汐留間 4.9km)
(6) 名古屋港 (名古屋・名古屋港間 8.0km)   (7) 名古屋港 (名古屋・名古屋港間 8.0km)
(7) 白鳥 (名古屋・名古屋港間 4.9km)   (8) 白鳥 (名古屋・名古屋港間 4.9km)
        (9) 浜大津 膳所浜大津 2.2km)
(8) 浪速 (大正・浪速間 3.1km)   (10)浪速 (大正・浪速間 3.1km)
(9) 大阪港 (大正・大阪港間 6.6km)   (11)大阪港 (大正・大阪港間 6.6km)
(10)高砂 高砂高砂港間 1.7km)   (12)高砂 高砂高砂港間 1.7km)
(11)浜多度津 多度津・浜多度津 2.2km)   (13)浜多度津 多度津・浜多度津 2.2km)
(12)坂出港 (坂出・坂出港間 2.9km)   (14)坂出港 (坂出・坂出港間 2.9km)
(13)門司埠頭 (門司・門司埠頭間 5.2km)   (15)門司埠頭 (門司・門司埠頭間 5.2km)
(14)博多港 (香椎・博多港 7.8km)   (16)博多港 (香椎・博多港 7.8km)

参考として右側に記した区間は、「旅客及び荷物営業細則」8条(1962年現行)のものである*1。1962年現行の細則8条は平林喜三造「旅客営業規則解説」に記載されていたもので、同書はこの規定について次のように解説している。

旅客の非営業線区に団体又は貸切運送若しくは引揚者等の特殊運送が、臨時列車を運転して行われる場合、いかなる運賃計算をするかについては、すべて順路による旅客営業線*2を経由したものとして取り扱うこととしている。この順路による旅客営業線とは、その臨時列車による運送が行われなければ当然経由するであろう通常の定期列車による運送経路によるのである。

とし、例として、東海道線から千葉方面への臨時列車(東海道線品鶴線山手貨物線→金町→新小岩→千葉)は、東海道線→東京→秋葉原→千葉の順路で運賃計算するとしている。さらに、

旅客の非営業線区を経由する臨時旅客列車による運送営業は若干あるが、まれにはこの非営業線区に発着する臨時列車による旅客運送営業が行われることがある。例えば、小名木川発成田行の臨時列車とか上野発沼垂行の臨時列車等である。
これらの場合には、対応する旅客キロ程がないので、それぞれ貨物キロ程を使用することとしているが、便宜上具体的にその区間とキロ程が本条に明示されている。

旧20条は当時の旅客営業規則14条の「旅客運賃・料金の計算その他の運送条件をキロメートルをもつて定める場合は、別に定める場合を除き、鉄道営業キロ程・航路営業キロ程又は自動車線営業キロ程による。」の「別に定める場合」を規定したものだった。解説から分るように、団体等の臨時列車の運転ルートのキロ程に関するきわめて特殊な規定である。例に挙げている区間は、実乗キロよりも「順路」の運賃計算キロが短い区間であり、旅客にとって有利な取扱いを内規で定めたともいえる。
JR化後、営業キロが「順路」よりも短い短絡線を経由する定期列車が運転されるようになった。旅規は67条で「旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によって計算する。」と定めているが、短絡線を経由する運賃計算の例外規定は存在しない。
現行の旅規14条は、

営業キロ
第14条 旅客運賃・料金の計算その他の旅客運送の条件をキロメートルをもって定める場合は、別に定める場合を除き、営業キロによる。
2 前条の営業キロは、旅客の乗車する発着区間に対する駅間のキロ数による。

1項に「別に定める場合」が残っているが、現在は運賃計算キロ又は擬制キロを指すと解釈される。2項は、1980年4月20日「キロ程」を「営業キロ」に改定したときに挿入されたものである。「駅間のキロ数」は、営業キロが存在しない短絡線を意識しているのかもしれない。湘南新宿ラインは旧蛇窪信号場の短絡線を経由するが、大崎・西大井間に「駅間のキロ数」は存在せず、大崎・品川・西大井間のキロ数を使用すると、読ませようとしているのか。「旅客の乗車する区間」ではないのだが。
しかし、「むさしの」が経由する西浦和・与野間には4.9キロの駅間の営業キロが設定されている、JR東日本の第1種事業区間である。「むさしの」の運賃計算経路(西浦和武蔵浦和中浦和・大宮)は、実乗ルートよりも1.8キロ長い。2014年8月2日の記事に「西浦和・与野(短絡線)経由の運賃計算を認めてしまうと、武蔵浦和経由の運賃計算が有名無実化してしまうので、それを避ける意図があるのでは」とのコメントがあった。たしかに西浦和・与野間を運賃計算経路とすると、東京近郊区間内相互発着の乗車券では、「むさしの」の乗車だけでなく武蔵浦和で乗継ぐ場合にも適用されてしまう。
これを回避するには、旅規の明文規定が必要である。旅規に頻出する「旅客運賃計算経路」を定義し、非運賃計算経路を明示すべきである。6月1日の記事にコメントがあった、新垂井線を運賃計算経路から除外する根拠規定としての意味もある。

*1:細則時代は見出しと本文の「旅客」が「旅客又は荷物」となっていた

*2:原文は下線ではなく、傍点

荷物営業規則

国鉄の荷物運送は、鉄道開業とともに始まった。当時の荷物運送規程について「日本国有鉄道百年史」(第1巻、p415)は、

手回り品および手荷物の取扱いは、品川・横浜間の仮開業と同時に開始した。これに関する制度は、「鉄道列車出発時刻及賃金表」中に定められていた。6年9月15日、新橋・横浜間で開始された小荷物の制度は、「鉄道貨物運送補則」第31条に規定されていた。他方、明治7年5月大阪・神戸間で小荷物の取扱いを開始したさいには、「小包荷物運送規則」が制定された。新橋・横浜間では、明治7年11月17日、「小包荷物運送規則」11項が工部省達で定められ、12月1日から施行された。

と書いている。鉄道貨物輸送とともに開始された小荷物は、旅客運送に伴う手荷物とは、区分されていたようだ。
1920年旅客運送関連の単行規程を一本化して制定された「国有鉄道旅客及荷物運送規則」は、第3編として「手荷物、小荷物及旅客付随小荷物ニ関スル規定」を定め、これ以降荷物運送は旅規に規定されていた。旅規ポータルに掲載の旅客及び荷物運送規則(1958年10月1日施行)には荷物編も記載しているが、「国鉄旅規改訂履歴1958-1987」は旅客編だけで、荷物編の改定は省略していた。今回、旅客及び荷物営業規則から荷物編を分離して制定された荷物営業規則(1974年10月1日施行)を掲載した。おそらく国鉄が初めて「ですます体」で書いた規則だろう*1
1949年6月1日公共企業体としての日本国有鉄道の発足以降、荷物運賃制度は次のように推移した*2

施行日 手荷物 通常小荷物
1949/06/01 定額 距離制(距離500km刻み、重量10kg刻み)
1950/06/01 距離制(距離1000kmまで250km刻み、以降500km刻み。重量30kgまで5kg刻み、以降10kg刻み)
1950/06/01 定額(託送は3個まで。2,3個目は通常小荷物運賃)
1951/11/01 距離制(距離同上。重量40kgまで5kg刻み、以降10kg刻み)
1953/01/15 定額(30kg超は通常小荷物運賃) 距離制(距離500kmまで100km刻み、1000kmまで250km刻み、以降500km刻み。重量同上)
1966/03/05 定額(託送は2個まで。30kg超は通常小荷物運賃) 地帯制(都道府県別5地帯。重量10kg刻み)
1969/05/10 地帯制(都道府県別5地帯。30kgまで10kg刻み) 地帯制(都道府県別5地帯。重量10kg刻み)

1969年5月等級制からモノクラス制に移行した旅規の大改定時に、定額だった手荷物運賃に地帯制を導入した。国鉄百年史(第13巻、p165)は、その理由を次のように記述している。

旅客・手荷物の同時輸送が減少し、配達個数の増加などから旅客が携行する代わりに託送するという手荷物の特質が年々失われ、小荷物との品目の差がなくなってきたからである。

掲載した荷物営業規則は、この時点の規定である。5地帯の区分は別表3に記載されている。1985年4月20日施行の荷物営業規則改定で、地帯区分を都道府県単位から地方単位にまとめる一方、運賃区分を5地帯から12地帯に細分化した。

地方区分 都道府県/地方区分 北海道 北東北 南東北 関東 信越 中部 北陸 関西 中国 四国 北九州 南九州 沖縄
北海道 北海道 1 2 4 5 5 6 6 8 10 11 12 12 12
北東北 青森、岩手、秋田 2 1 1 2 2 3 3 4 6 7 8 9 12
南東北 宮城、山形、福島 4 1 1 1 1 2 2 3 5 6 7 8 12
関東 茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨 5 2 1 1 1 1 2 2 3 4 5 6 11
信越 新潟、長野 5 2 1 1 1 1 1 2 3 4 5 6 11
中部 岐阜、静岡、愛知、三重 6 3 2 1 1 1 1 1 2 2 3 4 9
北陸 富山、石川、福井 6 3 2 2 1 1 1 1 2 3 3 4 9
関西 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山 8 4 3 2 2 1 1 1 1 2 2 3 7
中国 鳥取、島根、岡山、広島、山口 10 6 5 3 3 2 2 1 1 2 1 2 6
四国 徳島、香川、愛媛、高知 11 7 6 4 4 2 3 2 2 1 3 4 8
北九州 福岡、佐賀、長崎、熊本、大分 12 8 7 5 5 3 3 2 1 3 1 1 4
南九州 宮崎、鹿児島 12 9 8 6 6 4 4 3 2 4 1 1 3
沖縄 沖縄 12 12 12 11 11 9 9 7 6 8 4 3 -

荷物営業規則は、その後民営化直前の1986年10月1日に全面改定され、大幅に簡素化された現行のJR荷物営業規則に至っている。
追記(5月10日):1974年の都道府県別地帯区分にも、1985年の地方別地帯区分にも、国鉄の線路がない沖縄県が含まれているのは、おそらく、沖縄航路が国鉄の連絡運輸会社線だったためだろうと調べてみた。Wikipedia琉球海運に「1972年5月15日 - 沖縄の本土復帰にともない、鹿児島駅を接続駅とした本土 - 那覇国鉄小荷物連絡輸送を開始」と書かれている。また同日の旅客及び荷物営業規則の改正公示(国鉄公示第56号)に、別表第4号の鹿児島県の次に沖縄県を加えることが記載されていた。
国鉄時代の連絡運輸規則別表は所持していないが、1987年4月JR発足時点の別表に琉球海運株式会社航路が記載され、西鹿児島駅接続(Wikipediaの鹿児島駅と異なる)で、JR九州各駅から那覇港、平良港、石垣港*3までの片道、往復、団体乗車券が発売されていた。
2011年のJR東日本荷物営業規則の荷物地帯区分表には、沖縄は記載されていない。1997年版にもなかった。いつ琉球海運との連絡運輸が廃止され、荷物営業規則別表から沖縄が削除されたのか不明だが、1987年から1997年までの間である。

*1:同日全面改定して制定された貨物営業規則も「ですます体」

*2:国鉄百年史(第13巻、pp164-167)、時刻表復刻版、旅規改正国鉄公示などによる

*3:Wikipediaによると、1976年に鹿児島−那覇−先島航路の直行便を開設した

1999年の名鉄旅規掲載

阪神1962年旅規、西武の1999年旅規、阪急の2000年旅規に続き、旅規ポータルの旅規アーカイブスに名古屋鉄道旅客営業規則(1999年2月1日現行)を掲載した。岐阜市内線など600V線区が廃止される前の旅規で、運賃制度面でも興味深い規定がある。
39条に対キロ区間制運賃の区間と均一運賃の区間が記載され、この両者にまたがるときは、43条でそれぞれの運賃を合算すると規定されている。均一区間を中間に介して対キロ区間区間を乗り継ぐときは、前後のキロ程を通算する。25条の2の「乗継特定普通乗車券」の発売区間は、岐阜市内線揖斐線や、美濃町線の均一区間と対キロ区間区間にまたがる区間などが細則で定められており、56条の2で20円引きとされている。
名鉄は、名古屋本線以外の区間擬制キロを採用し、ローカル線の運賃を割増ししている。42条の線区の区分は擬制キロの換算率によるものだが、旅規に換算率は規定されていない。「運賃計算キロ程」自体が換算率で除した擬制キロになっているのだろうが、旅規には駅間ごとの運賃計算キロ程表が記載されていない。
当時高山本線直通の特急「北アルプス」があり、117条の5に車内券発行機で発行する「北アルプス号」用車内券の様式が規定されている。様式は省略したが、社線内用として新名古屋・犬山間の、連絡用として新名古屋・高山間の特急券が記載されている。しかし、旅規には急行券の発売や、急行料金の条項がない。単行規程の「北アルプス号の旅客の取扱いについて」で名鉄線内の乗車についても、規定していたようだ。
追記(4月29日):名鉄の旅規には、構成上大きな特徴がある。ウェブに旅規を掲載しているJR・私鉄各社の編・章構成と異なり、名鉄は、各社の第1編総則と第2編旅客営業の第1章通則を統合して、第1章総則としている。なお、長崎電軌の旅客運送規則及び公営地下鉄の旅規に相当する料金条例施行規程も章が最大の単位で、編はない*1
JRをはじめとする各社が第1編総則、第2編旅客営業という構成をとっているのは、もちろん旅客及び荷物営業規則の時代に第3編として荷物営業が存在していたためである。国鉄は1974年10月1日施行の改定で、荷物編を荷物営業規則として分離、旅客営業規則と改称して第3編を削除した*2。旅客営業だけになったのに、第1編、第2編の構成を変えなかった。
旅客及び荷物営業規則時代には、第14条の旅客営業キロ程とは別に、荷物編の第370条に荷物運賃計算キロ程が定められていた*3。第7条の営業キロの端数処理が第1編総則に規定されているのは、旅客キロ程と荷物キロ程に共通であったためである。しかし、旅客編だけになったのに、営業キロの端数計算が第14条の営業キロの前に出てくるのは順序が逆だ。
名鉄の旅規は、第8条を「キロ程」とし、第1項で営業キロ程を、第2項で端数処理を定めている。IGRいわて銀河鉄道は、第1編と第2編の構成はJR等と同じだが、第10条の「営業キロのは数の計算方」の前に、第2編から移行して第9条「営業キロ」を置いている。

*1:札幌市と神戸市は章立てせず、条を連ねている

*2:荷物編にあった携帯品の一時預り及び遺失物の回送を旅客営業編に移管

*3:鉄道のキロ程は旅客と同じだが、航路は青函が113キロに対し300キロ、宇高が18キロに対し50キロと3倍弱、自動車線は鉄道の5倍となっていた

第3セクター旅規目次

3月22日旅規ポータルに掲載した大手私鉄旅規目次に続き、第3セクター旅規目次を掲載し、ウェブに旅規を掲載している第3セクター道南いさりび鉄道IGRいわて銀河鉄道北越急行長良川鉄道4社の目次を対比した。
あらためて各社の旅規を読み比べると、会社の独自性が出ている部分があり、興味深い。長良川鉄道を除く各社には、JRから直通する急行列車が運転されていた。廃止後も急行料金の規定が(北越急行には、特別車両券、座席指定券も)残っている。長良川鉄道は旅規で各種割引運賃を規定している。JRなどにもある被救護者割引のほか、身体障害者割引、知的障害者割引、精神障害者割引が設定され、さらに高齢運転免許自主返納者割引がある。身体障害者割引、知的障害者割引、精神障害者割引は、定期券、回数券についても適用される。ただし、第2章「乗車券の発売」で乗車券ごとに割引率(いずれも50%)を規定し、第3章「旅客運賃」の条項(71条)とダブっている。
各社も限られた人員で旅規を整備するのは大変だと思うが、そのほかにもおかしな条項がけっこうある。国鉄時代に転換した長良川鉄道は、2条の適用する法令に地方鉄道法地方鉄道法施行規則を記載している。国鉄改革で鉄道事業法及び鉄道事業法施行規則に統合されたのに、30年たってもそのまま残っている。
JRでは基準規程に定める条項が旅規に定められているケースがある。長良川鉄道の113条(回収乗車券の処理方)と道南いさりび鉄道の124条(手回り品持込みに関する規定違反を発見した場合の処理方)などは、社員に対する指示事項であり、それぞれJRの基準規程245条と409条に相当する。約款としての旅客営業規則にはそぐわないが、特定運賃や急行料金などの契約条件を基準規程で定めるのに比べ、情報公開の観点からは問題ない。