続・BRT利用最長片道切符

8月25日の記事でBRT気仙沼線を通過する最長片道切符で旅行中のSHIOSAI_4031さんを紹介した。ほぼ同時に最長片道切符旅行をしている方のブログを見つけた。よいころさんである。
草津駅で発券したよいころさんの最長片道ルートには、BRT気仙沼線が含まれていない。その経緯が第2回 最長片道切符発行までに書かれている。

依頼した最長片道切符のルートにはBRTという形で仮復旧した気仙沼線が含まれていましたが、このBRT区間を他のJR線と乗り継いで乗車する場合にはマルス券など機械で発行された乗車券に限るというのです。つまり、経路があまりにも多い最長片道切符はみどりの窓口マルスで発行することができず、手書きの切符となるために、気仙沼線のBRTで仮復旧した区間は最長片道切符では乗車できないということです。したがって、気仙沼線のBRT区間を最長片道切符のルートに採用するのは難しくなりました。切符を分割するのは片道切符として一つにならないので、そうはできません。そこで、気仙沼線は最長片道切符のルート候補から外して、ルートを変更することにしました。

というわけで、BRT線暫定開業前の2012年4月暫定最長ルートになってしまったという。
昨年12月29日の記事で「漏れ聞こえてきた話」として、旅規第17条の「気仙沼線柳津・気仙沼間の特殊取扱」の「別に定める」通達について紹介した。その後入手した、JR西日本平成24年12月20日付営業本部長通達「気仙沼線BRTでの仮復旧に伴う乗車券類の取扱いについて」には、「2 BRT線での仮復旧に伴う乗車券類の取扱い」の「1 発売」に

(2) 鉄道線とBRT線との相互間をまたがる場合
平成24年12月22日(以下「仮復旧日」という。)以降、マルスでのみ発売する。
注1 マルス発売時は駅名カナ検索を利用する。例)志津川→「志津川BR(着」
注2 旅客がBRT線を通過し、前後の鉄道線にまたがって乗車する場合は、その前後の鉄道線区間営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロ)を通算する。
注3 POS及び車内補充券発行機はBRT線に対応していないため、BRT線に関する乗車券類は発売せず、鉄道線との接続駅(柳津駅又は気仙沼駅)までの乗車券類を発売の上、お客様には当該区間はBRTでの運行となる旨を案内する。ただし、割引適用の乗車券及び旅客がBRT線を通過し、前後の鉄道線にまたがって乗車する場合の乗車券の発売についてはマルス設置駅での発売を案内すること。

とある。草津駅での対応は、この通達に沿った取扱いである。
SHIOSAI_4031さんの最長片道切符は博多駅での発券だが、BRT線通過の乗車券が特別補充券で発券された。BRT線に関する取扱いはJR全社共通だと思うが、JR九州は通達にかかわらずフレキシブルな取扱いをしたということだろうか。

大船渡線BRT

大船渡線BRTは枝線や環状線がある複雑なルートで、オールド「乗り鉄」としては血が騒ぐ。完乗してきた。
複雑なルートになっている理由の一つは、高田中央病院・下船渡間に各駅停車路線と快速線があるため。鉄道で行っていなかった快速運転は速達性向上のため評価できる。もう一つは、気仙沼陸前高田間のルートを鉄道路線からかなり離れた国道45号線としたことによる。この区間にある上鹿折駅には、ミヤコーの気仙沼西高校前・鹿折金山間の路線バスの気仙沼駅前・上鹿折駅前間をBRT区間として運行している。陸前矢作駅は、同駅折り返しのBRTが竹駒駅を経由して陸前高田気仙沼・盛間の路線に合流する。
BRTが鉄道の(仮)復旧であるのなら、気仙沼陸前高田間は線路と平行している県道34号線を走るべきだろう。国道45号線には岩手県交通の路線バスがあり、営業妨害ではないか。新設の長部駅は岩手県交通の上双六停留所に併設されている。それ以前に気仙沼陸前矢作間の路盤は残っている。信号系を整備すれば、鉄道の運行も可能だろう。それなら、陸前矢作・盛間だけをBRTにすればよい。
大船渡線BRTの運賃制度は興味深い。BRT運賃は鉄道の対応駅間の運賃と同額である。気仙沼から陸前矢作に行くのは陸前高田まで行って戻ることになるが、陸前高田までの運賃より安い。東京メトロのラッチ外乗継のように乗継駅までの運賃を徴収するルールはないから、気仙沼から陸前矢作ゆきの乗車券で陸前高田で前途放棄したらどうなるのだろう。
路線バスによって代行している気仙沼上鹿折間の運賃は、BRT運賃を区間内のバス運賃にも内方適用している。停留所の掲示

普通運賃について
・BRT区間の普通運賃は、鉄道に準じたBRT運賃になります。
・BRT区間とミヤコーバス区間を連続してご利用になる場合は従来と変わりません。
*ミヤコーバスの普通回数券でもBRT区間を利用できます。

また、定期運賃について

BRT区間とミヤコーバス区間を連続してご利用される場合、BRT定期券とミヤコーバス定期券を分けて購入したほうが安くなる場合があります。

ミヤコーバスは、BRT代替運行を行うことにより、気仙沼駅前・上鹿折駅前間の運賃を値下げしたことになる。JRはミヤコーに対して運賃割引額を補填しているのだろうか。
大船渡線の専用道路は小本駅付近と大船渡・盛間のごく一部。小本駅付近は、専用道路を走るためにわざわざ迂回しており、時間短縮になっているとは思えない。一方、気仙沼線BRTは、本吉付近と陸前港・歌津間など鉄道のトンネルを利用した専用道路が増えていた。こちらは時間短縮に貢献していると思う。

大船渡線BRT3月2日運行

JR東日本盛岡支社の1月31日付プレスリリースによると、大船渡線のBRTが3月2日から運行される。
BRTの専用路線は、大船渡・盛間の1.9キロのみ。気仙沼陸前高田間は鉄道線路と離れた海岸沿いの国道を運行する(長部駅新設)。陸前高田市内は内陸を走り、陸前高田駅と脇ノ沢駅が移転、その間に高田病院駅が新設される。陸前高田市内と大船渡駅間は鉄道線路に沿ったルートと国道45号線を短絡する二つのルートができる。
そのため気仙沼線のBRTが1系統であるのに対し、大船渡線は次の6系統からなる(カッコ内の数字は往復の本数)。

このうち、気仙沼上鹿折間はミヤコーバスの気仙沼駅前・上鹿折駅前間をBRT区間として運行するもの。他の系統の運行は岩手県交通に委託する。
BRTの運賃は、気仙沼線の取扱を踏襲した。BRTのみの乗車は鉄道と同額(系統間及び気仙沼線BRTとの乗継は通算)。鉄道とBRTとの乗継はそれぞれの運賃を合算するが、合算額から100円割引となる区間が設定される。

続・気仙沼線BRT化に伴う旅規改正

気仙沼線BRT化に伴う旅客営業の取扱に関してウェブで入手できる情報は、JR東日本仙台支社・盛岡支社連名の11月19日付プレスリリースしかない。12月21日の記事で書いたように、JR九州12月17日付旅規改正公告によると、第17条として「気仙沼線柳津・気仙沼間の特殊取扱」が新設されたが「別に定める」とあるだけだ*1
漏れ聞こえてきたところによると、「別」とは旅客営業取扱基準規程ではなく、BRTによる仮復旧の取扱に関する単行の通達のようである。その通達で、
・BRT線内相互発着となる乗車券類は発売しない
・旅客がBRT線を通過し、前後の鉄道線にまたがって乗車する場合は、その前後の鉄道線区間営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロ)を通算する
・「青春18きっぷ」等の特別企画乗車券でBRT線に乗車できる
・12月21日以前に発売した乗車券については、過渡的取扱として1月31日までBRT線に乗車できる
などが規定されたようだ。
このような旅客との契約条項を約款に記載しないのは問題である。とくに、12月21日の記事に対するコメントにあったように「BRT線内相互発着となる乗車券類は発売しない」は、旅規第16条の5を

常磐線北千住・綾瀬間相互発着又は気仙沼線柳津・気仙沼間相互発着となる旅客に対しては、乗車券類の発売を行わないものとする。

と改正して、周知すべきだろう。また、通過連絡運輸については、2002年10月1日のJR四国のバス約款分離まで存在していた、第68条第1項第2号を復活し、

(2) 自動車BRT線が鉄道の中間に介在する場合、これを通じて乗車券を発売するときは、前後の鉄道区間営業キロを通算する。

とすべきである。

*1:本日現在、ウェブに旅規を掲載しているJR四国を除く5社のうち、この改正を反映しているのはJR北海道だけで、他社はいずれも3月17日現行のままである

気仙沼線BRT化に伴う旅規改正

12月22日からの気仙沼線BRT化に伴う旅規改正公告がJR九州のサイトに掲載された。これに伴い、旅規ポータルのJR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)を更新した。
気仙沼線BRT化により、第17条として以下の条項が新設された。

気仙沼線柳津・気仙沼間の特殊取扱)
第17条 気仙沼線柳津・気仙沼間の一部又は全部の区間を乗車する旅客の取扱い等については、別に定める。

「別に定める」とは、基準規程などをさしているのだろうが、中央書院の倒産と日本鉄道図書の廃業により冊子版旅規の発売がなくなってしまい、閲覧することができない。
はっきりしたことは、BRT転換する気仙沼線柳津・気仙沼間が鉄道路線として存続していることである。11月23日の記事で、代行バスから旅客会社直営バスへの移行により、この区間は最長片道切符のルートから外れると書いたが、鉄道路線のままなら、少なくとも「不通承知」で乗車券が発売されるだろう。また、「青春18きっぷ」や「東北ローカル線パス」によるBRTへの乗車については発表がないが、21日まではOKで、22日以降はダメということにはならないと思われる。
一方、2002年10月1日のJR四国のバス約款分離まで存在していた、第68条第1項第2号

(2) 自動車線が鉄道の中間に介在する場合、これを通じて乗車券を発売するときは、前後の鉄道区間営業キロを通算する。

が復活していないので、バスを介した前後の鉄道運賃通算の取扱はないようだ。
旅規第17条は2001年7月1日以来の復活である。廃止されるまで第17条は、「自動車線駅と鉄道駅との特殊取扱」という条項だった。国鉄時代から航路と自動車線の旅客運送約款は鉄道と共通で旅規に規定されていたから、鉄道と航路・自動車線にまたがる1枚の乗車船券が発売された。鉄道とバスとにまたがる乗車券を発売する際、鉄道とバスの駅名が異なる接続駅を同一駅として取扱うことを規定していたのが第17条である。2001年7月1廃止直前の第17条は、

(自動車線駅と鉄道駅との特殊取扱)
第17条 次に掲げる自動車線の駅は、かつこ内の鉄道駅と同一の駅とみなして旅客の取扱をする。
 直方本線 筑前土井(香椎線土井)・箱崎駅前(鹿児島本線箱崎

で、JR九州直営バスの子会社移管によって削除された。

気仙沼線BRTの正式運行

JR東日本仙台支社・盛岡支社連名の11月19日付プレスリリースによると、

2012年12月22日(土)より当社が事業者となってBRTの運行を開始します。なお、BRTの運行に関する業務は、(株)ミヤコーバスに委託します。

とのことである。
8月21日の記事で書いたように、気仙沼線は、8月19日までミヤコーバスによる振替輸送、8月20日から当分の間代行バス実施だった。「12月22日より当社が事業者となって」とあるが、代行バスもJRの運行で、ミヤコーバスに委託していたはずである。
BRTの正式運行によって大きく変わるのは、運賃体系である。BRTと鉄道を乗り継ぐ場合の運賃は、両者の運賃の合算額となる。ただし、図の区間については、合算額から100円(小児50円)を差し引くという。定期運賃は、図の区間を連続して利用する場合は、従前の運賃で1枚の定期券を発売するが、それ以外の区間は、BRTと鉄道の定期券が別個に発売される。
代行バスは、鉄道の代行であるからJR線の乗車券で乗車できた。9月19日の記事代行バスの乗車報告を書いたが、そのとき使用したのは東北ローカル線パスである。12月22日以降青春18きっぷや東北ローカル線パスでBRTに乗れるのだろうか。
日経11月19日の記事によると、大船渡線気仙沼・盛間でも、BRTによる仮復旧のための専用道工事に着手したとのことである。JR東日本は、BRTはあくまで仮復旧の手段と地元に説明してきた。仮復旧のBRTの運賃を鉄道と通算しないとはこれまで言っておらず、鉄道代行バスに比べて乗客が不利になるというは納得できない。
いずれにせよBRTの正式運行で、気仙沼線がまた最長片道切符ルートから外れることになる。

DMV vs BRT

北海道の経済誌財界さっぽろ」10月号の「JR北海道DMVはどうなった」という記事を知人から送ってもらった。19日の記事で書いたことが取り上げられているので、紹介する。
特急炎上事故後の実用化計画の中断については、

 JR北海道広報は「計画再開のめどはたっていません」と話す。理由は事故再発防止のための「安全基本計画」策定が遅れているためだ。
 今年3月にDMVを実用化する予定だったが、小池明夫社長は1年以上送れることを明言している。

江差線DMV化については、「ある運輸関係者」の発言として

「(前略)JRは廃止路線地域にバスなどの代替交通手段の確保に協力すると沿線自治体に伝えているが、なぜDMVの導入は検討されなかったのか疑問に思う。14年まで猶予があるなら、十分に実用化できる。せっかく世界初の技術なのに、宝の持ち腐れにはならないか」

また、道外からのDMVの導入については、阿佐海岸鉄道津軽鉄道の例を紹介し、

 ただ、これら道外で実用化される時期はまだまだ不透明だ。DMVは国の指導によりJR北海道がビジネスモデルを確立してから、同社以外の鉄道に導入される。道内で実用化されない限り、道外でDMVが運行することはできない。そのため、導入を計画している自治体や鉄道会社は、JR北海道に対し早期実用化を要望している。

と書かれているが、JR北海道の実用化先行という国の指導は、本当だろうか。岳南鉄道は、DMVの実証実験走行をした路線だが、3月16日限りでJR貨物との連絡運輸が休止となり、貨物列車の運行を終了した。収益源だった貨物輸送がなくなり、廃止の危機に陥っているが、旅客輸送だけなら、DMV化はしやすくなる。JR北海道の実用化をまたずに、先行すべきではないか。
近鉄も内部線・八王子線を廃止、BRTに転換する方針を打ち出した。762ミリのナローゲージの軌道敷では、スピードはますます出ない。ローカル線は自動車に対抗するためにスピード(表定速度)が重要との指摘もある(「のんびりゆったり」はローカル鉄道を潰す)。
繰り返しになるが、線路が残っている区間はレール上を、流された区間は一般道路を運転できるDMVは、気仙沼線等の復旧にもっとも早く対応できる方法だと思う。JR東日本はBRT化を地元に提案する前に、DMVも検討したのだろうか。もともと並行する国道の渋滞は少ないのだから、仮復旧としているBRT化のために、レールを外すのはやめてほしい。
JR東日本近鉄のBRT化をどう思うか、柿沼会長に聞いてみたい。どこかの新聞が取材してくれないだろうか。