上場鉄道事業者の時価総額

先週月曜日4月4日から東京証券取引所の市場区分が再編された。上場している鉄道事業者持株会社)は25社あるが、その所属市場と時価総額は次のとおり。

鉄道事業者 上場会社 コード 新市場 旧市場 時価総額*1
東武鉄道 東武鉄道 9001 プライム 1部 612,241
相模鉄道 相鉄HD 9003 プライム 1部 217,785
東急電鉄 東急 9005 プライム 1部 991,044
京浜急行電鉄 京浜急行電鉄 9006 プライム 1部 345,252
小田急電鉄 小田急電鉄 9007 プライム 1部 734,047
京王電鉄 京王電鉄 9008 プライム 1部 620,901
京成電鉄 京成電鉄 9009 プライム 1部 574,129
富士山麓電気鉄道 富士急行 9010 プライム 1部 205,543
秩父鉄道 秩父鉄道 9012 スタンダード JASDAQ 3,414
新京成電鉄 新京成電鉄 9014 スタンダード 1部 23,149
東日本旅客鉄道 東日本旅客鉄道 9020 プライム 1部 2,592,994
西日本旅客鉄道 西日本旅客鉄道 9021 プライム 1部 1,204,148
東海旅客鉄道 東海旅客鉄道 9022 プライム 1部 3,228,020
西武鉄道 西武HD 9024 プライム 1部 406,593
西日本鉄道 西日本鉄道 9031 プライム 1部 204,035
広島電鉄 広島電鉄 9033 スタンダード 2部 25,331
近畿日本鉄道 近鉄グループHD 9041 プライム 1部 660,644
阪急電鉄阪神電気鉄道 阪急阪神HD 9042 プライム 1部 859,471
南海電気鉄道 南海電気鉄道 9044 プライム 1部 260,826
京阪電気鉄道 京阪HD 9045 プライム 1部 303,216
神戸電鉄 神戸電鉄 9046 プライム 1部 25,757
名古屋鉄道 名古屋鉄道 9048 プライム 1部 402,056
京福電気鉄道 京福電気鉄道 9049 スタンダード 2部 6,000
山陽電気鉄道 山陽電気鉄道 9052 プライム 1部 46,001
九州旅客鉄道 九州旅客鉄道 9142 プライム 1部 390,894

旧1部上場の新京成電鉄を除く21社が最上位のプライムに、新京成、2部の広島電鉄京福電気鉄道及びJASDAQ秩父鉄道がスタンダードに移行した。プライム市場の上場基準は、株主数800人以上、流通株式数20,000単位以上、流通株式時価総額100億円以上である*2。過渡的措置の適用も含めて旧1部上場2177社のうち1839社(84.5%)がプライムに移行したが、この基準は欧米市場と比較してきわめて甘いと言われている。

神戸電鉄時価総額はプライム上場鉄道会社で最小の258億円だが、時価総額ランキング44位で鉄道会社トップ、JR東海の3兆2280億円の0.8%*3である。また神戸電鉄は、阪急阪神HDが株式の27.2%を所有しており、流通株式の時価総額は100億円台。

富士急行時価総額が2,055億円と高いのが意外だった。大手私鉄で最小の西鉄の2,040億円を上回り、相鉄の2,178億円に迫る。2021年3月期の3社の決算は次のとおり(単位百万円)。

会社 売上高 純利益 総資産 純資産 PBR 予想PER
富士急行 30,451 -2,786 101,601 24,682 8.38倍 167.9倍
西日本鉄道 346,121 -12,074 707,804 169,946 1.23倍 28.7倍
相鉄HD 221,136 -13,057 619,410 139,309 1.57倍

売上高、総資産、純資産ともに大手2社と比べ少ないのに時価総額がほぼ同じということは、富士急行の株価が高いということ。富士急行はPBR(株価純資産倍率)、予想PER(株価収益率)*4ともに圧倒的に高い(株予想Proによる)。富士急行の株価が高く評価されているのはなぜだろうか、ウェブで検索して次の記事を見つけた。

  • コロナ前の2019年の記事だが、2019年8月27日の週刊エコノミスト Onlineに「09年8月を起点に(鉄道会社)各銘柄の騰落率を見ると、最も上昇率が高いのは富士急行で、3月に一時4・8倍を超えた」とある。
  • 2013年6月24日の日経は、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)が富士山の世界文化遺産への登録を正式決定したのを受け、24日の東京株式市場では関連銘柄の売買が膨らんだ。富士山を訪れる観光客が増えるとの見方から、周辺でレジャー施設を運営する富士急行株が年初来高値を更新。」と報じている。
  • 2021年2月15日の東洋経済ONLINEの記事によると、「(富士急の)株高の理由として、富士山に次世代型路面電車LRT)を走らせる「富士登山鉄道」の構想が進んでいることを挙げる見方もある」とのこと。

追記(4月16日):コメント頂いたとおり新京成はスタンダード市場だった。本文及び表の誤記を訂正するとともに、JR東海及びトヨタ自動車との時価総額の比較を新京成からプライム市場で最少の神戸電鉄に変更した。

*1:単位百万円、4月11日終値

*2:スタンダードはそれぞれ、400人、2,000単位、10億円

*3:時価総額トップのトヨタ自動車の34兆2859億円の0.07%

*4:2022年3月期は各社とも黒字転換が予想され算出できるが、相鉄の予想はない