無料入場券

JR東日本は、入場料金を実質無料にする「タッチでエキナカ 入場券ポイントバック!キャンペーン」を期間限定で開始した(4月20日付プレスリリース)。JRE POINTに登録したSuicaで東京、品川、大宮の各駅に入場し、エキナカでの1,000円以上の買い物をSuica決済し、2時間以内に出場するとSuica入場サービスで減額する入場料金相当額の140ポイントを付与するというもの。

JR東日本ICカード乗車券取扱規則の3月改定で、57条の2(Suica入場サービス)が新設されたことに伴うもの。ICカード乗車券を入場券として使用する初めての制度で、JR東日本は、タッチでエキナカと案内している。

ところで入場料金が無料となる制度は、国鉄時代にもあった。新婚旅行客を対象とした全区間1等(モノクラス制移行後は、グリーン車)のことぶき周遊乗車券に、見送り客用の10枚の入場券が無償で交付された。近藤喜代太郎・池田和正「国鉄乗車券類大事典」(JTB、2004)に次のように解説されている。

「ことぶき入場券」とは、昭和42年(1967)2月、新婚旅行に専用された「ことぶき周遊券」の購入者に国鉄からの祝いとして10枚進呈されたものである。「入場券」というが、無賃で特定者(その新婚旅行者の見送り人)を入場させたので本券は入場証だった。しかし10枚以上は有料となったので、本件は入場証でもあり、入場券でもあった。(p449)

入場証とは、旅客営業取扱基準規程389条に無料入場者の範囲として規定されているものである。国鉄末期の1985年7月10日現行の389条は、次のとおりである。なお、2011年当時の規程は、第3号が削除され、第5号の鉄道管理局長が支社長に変更されている*1

(無料入場者の範囲)
第389条 次の各号の1に該当するものには、無料で入場させることができる。
(1) 天皇、皇后、皇太子、皇太子妃又は皇太后ご旅行の際の送迎者
(2) 職務執行中の警察官及び警察吏員
(3) 周遊割引乗車券発売基準規程第43条第1項に定めることぶき入場券所持者
(4) その駅で乗降できる鉄道乗車証所持者。ただし、新幹線停車駅であつて、新幹線用の改札が設けられている場合の当該改札から入場する場合を除く。
(5)前各号に定めるものの他、鉄道管理局長が特に指定した者

 当時の周遊割引乗車券発売基準規程第43条の2(第43条第1項は間違い?)は、次の規定である。

(ことぶき入場券の特殊発売等)
第43条の2 旅客が、新婚旅客に対してセットした周遊割引乗車券を購入して旅行する場合は、入場券に記念事項を表示した券片を附加したもの(以下、「ことぶき入場券」という。)を新婚旅客1組につき10枚を無料で交付する。この場合、入場駅名は記入式とし、旅客の希望によって記入するものとする。
2 前項に規定することぶき入場券を10枚をこえて旅客が希望する場合は、10枚を超えるものについて、所定により発行するものとする。
3 (部内規程のため省略)
(注)無料で交付することぶき入場券については、料金額を表示しない。

なお、この条文はモノクラス制移行時の1969年5月10日の周遊割引乗車券発売基準規程には見当たらず、その後規定されたものと思われる。また同時点の旅客営業取扱基準規程389条も次の3号が規定されているだけである。

(1)天皇、皇后、皇太子、皇太子妃又は皇太后*2旅行の際の送迎者
(2)職務執行中の警察官及び警察吏員
(3)その駅で乗降できる鉄道乗車証所持者

Googleでことぶき入場券を検索すると、はてなブログのページがヒットした。以前コメントをいただいた旅師エストッペルさんのページである。入場日が昭和42年3月5日のことぶき入場券の画像が掲載されている。無料交付制度が開始された直後に発行されたもののようだ。

*1:現行規定は不明だが、第1号に上皇上皇后皇嗣皇嗣妃が追加されているのだろうか

*2:85年当時はひらがなに変わっている