JR定期運賃の不思議

読者からメールで、「JRの6カ月の定期運賃には規則性がないが、計算方法について知らないか」と問い合わせを受けた。普通運賃については、ウェブページやこのブログでいろいろ書いているが、定期運賃はこれまで深く検討したことがなかった。
定期運賃は、賃率計算によらず旅規の別表で定めることになっている。本州幹線6カ月通勤定期運賃のキロ刻みは、50キロまでは普通運賃と同じ。51キロ以上は1キロ刻みになるが、55-60キロ、65-70キロ、76-80キロ、85-90キロ、96-100キロが同額である。このため1キロ刻みの1カ月運賃と比較すると、10キロごとにキロを重ねると低廉になる。1カ月通勤定期運賃の26キロから40キロまでも同様で、27-30キロ、32-35キロ、39-40キロが同額である。
国鉄がキロ地帯制を採用した1966年3月以降の定期運賃の推移を調べてみた(国鉄・JR定期運賃推移)。84年以降は幹線運賃、96年以降は本州3社の幹線運賃である。6カ月運賃のキロ刻みは、国鉄時代最後の運賃改定があった86年9月以降変わっていない。1カ月運賃は、4月の消費税率アップに伴う改定でこれまでの33-35キロ同額が32-35キロに拡大した。3カ月運賃のキロ刻みは1カ月定期とほぼ同じである。
66年3月5日の運賃改定で、51キロ以上の普通運賃にキロ地帯制が採用された(5キロまでの初乗り運賃20円の後50キロまでは10円刻みで2-3キロが同額)が、定期運賃は1、3、6カ月とも6キロ以上1キロ刻みだった。それが、68年4月1日改定(普通運賃は据え置き。6キロ以上の定期運賃のみ改定)で、1、3カ月運賃は19キロまで、6カ月運賃は32キロまで、普通運賃と同じキロ刻みになった。6カ月運賃は、82年4月20日改定で50キロまで5キロ刻みになったが、5キロ幅のキロ帯で後半の刻みがなくなり、次第に5キロ刻みに収れんしていったことがわかる。51キロ以降の運賃が10キロ帯ごとに後半が同額になっていった現象と同じである。
質問者は

大昔、何かの資料で、「国鉄時代に値上げを繰り返した結果、何かの上限を上回るためその限度内に収めた。」と聞いたことがありますが、何の上限を上回ったか定かではありません。

という。定期運賃の上昇を抑える要請はあったのだろうが、なぜ5キロ、10キロのキロ帯で後半の運賃を抑制するという不規則なやり方を取ったのか。また6カ月運賃のキロ刻みが1、3カ月運賃に比べ粗いのはなぜか。ご存知の方がいたら、ご教示願いたい。