国鉄末期とJR発足時の旅規・基準規程対比

旅規ポータルに旅客営業規則対比(1985vs1987)旅客営業取扱基準規程対比(1985vs1987)を掲載した。国鉄末期の1985年7月10日現行の規則・規程とJR発足時の1987年4月1日施行のものとを対比したもの。なお、1985年時点の第9章旅行券はギフトカード及びオレンジカードに変更になり、第11章に旅行業務があったがこれらの章は対比していない*1

この間1986年9月に運賃・料金の改定があったが、旅客制度の大きな変更はなかった。このため、旅規の目次の変更は、次の条項だけである。

削除:第50条(団体旅客の提出する請書)、第56条(横が患者の運送)、第197条(準常備連続乗車券の様式)、第239条(手荷物託送乗車券の旅客運賃の払いもどし)、第325条(遺失物の回送)

新設:第14条の3(他の旅客会社線を通じて連続乗車する場合の営業キロ、賃率換算キロ又は運賃計算キロの通算)、第244条の2(新幹線の特別急行列車の個室に有効な乗車券類を所持する旅客に対する乗車変更の特殊取扱)、第263条の2(新幹線に乗車する場合の特殊取扱)

見出し変更:第78条(東京山手線内等の大人片道普通旅客運賃→電車特定区間内等の大人片道普通旅客運賃)、第326条(遺失物回送の特例→遺失物回送)

これらの変更条項のうち、JR発足時点のものは、旅客会社の分割による14条の3と263条の2*2。244条の2は100系新幹線グリーン個室が運転開始された1985年10月1日、78条は86年9月1日の運賃改定時、その他は国鉄最後の制度改定があった86年11月1日付である*3

基準規程の対比はもっと興味深い。旅規の変更に関連するものとともに、国鉄からJRへの組織変更に伴うものがある。後者はとくに興味深く、JRの基準規程で「別に定める」とされている条項が国鉄時代には具体的に記載されていた。たとえば、25条(定期乗車券等の発売駅の決定)は、旅客局長、鉄道管理局長、地方自動車局部長と、券種ごとの決定者を定めていた。また、245条(回収した乗車券類の処理方)など、「別に定める」を「運輸収入規程に定める」のように準拠規程の名称を記載している。国鉄時代は、内規の規程類の達示も「鉄道公報」に記載されており、情報公開という点では、国鉄時代のほうが進んでいた。

なお、国鉄時代の20条(旅客の非営業線区における臨時取扱方)や150条(新垂井駅発着の場合の区間外乗車の取扱いの特例)は、これまでにもこのブログで取り上げた規定である*4

 

*1:旅行券からギフトカードへの変更及びオレンジカードの新設は86/11/01、旅行業務の廃止は新会社発足時

*2:2007年12月30日記事参照

*3:以上国鉄旅規改訂履歴1958-1987(日付順)参照

*4:垂井駅は86年11月1日のダイヤ改正で廃止

加美・久宝寺・新加美間の区間外乗車

12月28日の記事のコメントがあったが、現在店頭に並んでいる時刻表3月号によると、大阪市内発着の乗車券で加美・久宝寺・新加美間の区間外乗車が認められた。JTB時刻表は、

大阪市内発着の乗車券による市外乗車の特例

大阪市内発または着の乗車券で途中下車しない限り、加島-尼崎-塚本間または、加美-久宝寺ー新加美間にご乗車になれます。

と、JR時刻表

大阪市内」発着となる乗車券による市外乗車の特例
大阪市内」発着の乗車券で途中下車をされない限り、加島~尼崎~塚本間及び加美~久宝寺~新加美間をご乗車になれます。

 と記載し、大阪市内の地図に区間外乗車区間を点線で示している。

基準規程第150条第2項の加島-尼崎-塚本間を第1号とし、加美-久宝寺-新加美間を第2号として挿入すると思われる。おそらく、第155条(併用乗車券による他経路乗車の取扱いの特例)にも第13号、第14号として、大阪市内駅発着の乗車券と新加美駅着発の乗車券の併用による加美・久宝寺間の他経路乗車が追加されるだろう。

ところで、尼崎と久宝寺と同じく、特定都区市内から1駅だけ外れている大船について、JR東日本横浜市内発着の乗車券で戸塚-大船-本郷台間の区間外乗車を認めているという話を聞いた。通達があるのか、単に黙認しているのかはわからないが、それなら、150条2項に記載し、ウェブや時刻表のピンクのページ*1等で周知すべきだろう。

*1:JTB時刻表のJR線営業案内のページは、昨年12月号から紙が白紙になり、ピンクのページと呼べなくなった

2019年春の旅規改正

JR九州のサイトに2月5日付の旅規改正公告が掲載された。JR東海運送約款の改正履歴は未掲載である。

大半はおおさか東線開業、中央本線特急の「座席未指定券」導入等すでに周知されている事項である。

第86条第5号の大阪市内の地図に、久宝寺を除くおおさか東線の駅が追加され、第187条第3号のカッコ内が「大阪市内(南吹田駅高井田中央駅JR河内永和駅JR俊徳道駅JR長瀬駅及び衣摺加美北駅を含む。)と表示することがある。」となった*1。また、同条第4号の京都市内に、梅小路京都西駅が追加された。

中央本線特急については、別表第1号の2(列車群)第1項に第3号として、群名「あずさ・かいじ・はちおうじ・おうめ・富士回遊」が追加され、第125条第1号ロ(ハ)の料金表に「400キロメートルまで」の料金が追加された。

その他、特別車両個室料金、寝台料金が一部削除された。

3月24日付の山田線宮古・釜石間の三陸鉄道移管に伴い、別表第1号地方交通線の山田線の区間が変更になった。4月1日石勝線夕張支線の廃止は、旅規には影響しない。1984年4月幹線と地方交通線の賃率が分離された以降の幹線の廃止は、1994年5月の函館本線上砂川支線、1997年3月の片町線京橋・片町間、1997年4月の美祢線大嶺支線、1997年10月の信越本線横川・軽井沢間に続く5件目か (片町線信越本線は、コメントを受けて追記)。

*1:191、195、225、226条の乗車券様式裏面の表示事項もあわせて改定された

基準規程155条と150条2項

基準規程155条の併用乗車券による他経路乗車は、特定都区市内の境界駅から外に伸びる二つの路線が、エリアの近くで閉じているケースに設定されている。12月28日の記事のコメントで、2011年以降2号追加されたという情報があった。最近開業した新線でこのようなケースがあったか考えて、仙石東北ラインに思い至り、あたりだったと確認された。
あらためて155条の設定区間をまとめると、次のとおり。

都区市内 他経路 キロ 券面経路 キロ
1,2 仙台市 岩切・高城町 15.6 中野栄高城町 15.2  0.4
3,4 東京都区内 葛西臨海公園・南船橋 15.4 小岩・南船橋 13.2  2.2
    葛西臨海公園西船橋 13.5 小岩・西船橋  7.8  5.7
5,6   蒲田・武蔵小杉間 11.3 西大井・武蔵小杉間  6.4  4.9
7,8 横浜市 戸塚・大船間  5.6 本郷台・大船間  3.6  2.0
9,10   鶴見・武蔵小杉間  7.8 矢向・武蔵小杉間  4.9  2.9
11,12 大阪市 塚本・尼崎  4.3 加島・尼崎  2.2  2.1
    (加美・久宝寺)  1.7 (新加美・久宝寺)  1.6  0.1

左が他経路乗車区間、右が併用乗車券の券面区間である。短い距離の併用乗車券で、長距離の区間を乗車できる。とくに蒲田・武蔵小杉間は4.9キロ差で、運賃キロ帯が1ランク以上下がるケースもありうる。しかし、都区内着で南武線武蔵中原方面に行く場合、西大井経由のほうが時間的にも早いから、あまり需要がないだろう。また、3,4号に併記されている葛西臨海公園西船橋間は、併用乗車券の小岩・西船橋間より0.2キロ短く、他経路乗車の意味がない。
大阪市内の拡大で155条に追加設定されるとすれば、新加美発着の久宝寺以遠の併用乗車券で、他経路乗車区間が加美・久宝寺間ということになろう。0.1キロの差しかないが、大阪駅から環状線関西本線への直通列車が利用できる駅で、155条適用で運賃キロ帯が1ランク下がる駅があるかもしれない。紀勢本線から関西本線方面は、大阪市内着の乗車券と併用するよりも、目的の駅までの乗車券を購入したほうが安い。
12月28日の記事のコメントで、150条2項の新加美・久宝寺・加美間の区間外乗車は、旅客流動上設定されないという意見、別の特例にしてもよいという意見があった。紀勢本線から新加美までの場合は、たしかに単駅指定にしたほうが安上がりである。155条の適用区間のうち7、8号の大船駅横浜市内から1駅だけ外れていて、*1、尼崎や久宝寺と同じ状況である。東京方面から大船で乗換えて本郷台に戻る需要はあるだろうから、150条2項に追加してもよいと思った。こうしてみると、12月28日の記事の追記2で「150条2項に規定されず、155条だけに規定されることはないと思う」と書いたが、「155条だけ」もありうるかもしれないと考え直した。


*1:大船駅鎌倉市横浜市の市境にまたがっている

最近のJR旅規改定公告

JR東海運送約款の改正履歴はこまめにチェックしていたのだが、12月20日付と12月27日付の「旅客営業規則の一部改正」が掲載されていた。
12月27日付は、4月1日施行の「持ち込み禁制品の一部見直しに伴う改正」で、12月28日の記事で取り上げた旅規の改定条文が明確になった。12月20日付は、「グランクラス(A)を設備した特別急行列車の運転区間変更等に伴う改正」とされ、別表第1号の3は「はやぶさ」「はやて」の運転区間に仙台発着を追加削除、1月1日施行としている。また、2018年3月17日遡及適用で183条(乗車券類の表示事項)と223条(特殊指定共通券の様式)が改定された。183条は、3月17日施行の改正時に第2項が挿入されたのに、第3項に残っていた「前項」を「第1項」に訂正したもの。223条は各様式の改正から漏れていた、西暦表示への改定。
ウェブに掲載しているJR北海道JR九州の旅規改定公告とJR東日本JR西日本JR四国のウェブの旅規(日付は最終更新日)をあわせてチェックしたところ、次のような差異があった。


 
JR東海
公告
JR北海道
公告
JR九州
公告
JR東日本
18/06/29
JR西日本
18/11/20
JR四国
18/04/01
183条 2018/12/20付 2018/11/21付 2018/08/20付 反映 反映 反映
223条 2018/12/20付 2018/11/21付 2018/11/26付 様式省略 様式省略 様式省略
別表1号の3 2018/12/20付 なし 2018/11/26付 未反映 省略 省略

JR九州の223条改定は2018年3月17日遡及適用ではなく、2019年1月1日2018年10月1日施行となっている。また、別表1号の3に仙台発着が記載されていない。JR東日本の旅規は、2018年6月29日現在となっていて、別表1号の3に仙台発着も記載されている。6月29日は、昨年4月時点で未反映だった183条2項及び290条を訂正した日だろうか。なお、2016年3月26日の85条1号の改定(JR北海道に係る加算運賃の規定に、北海道新幹線の開業によって生じた「幹線相互を乗車する場合」を追加)をいまだに記載していない。
よくわからないのは、別表1号の3の改定。グランクラス車両を連結した仙台発着の「はやぶさ」は以前から運転されている。別表1号の3は北海道新幹線開業の2016年3月26日に新設されたものだが、当時のJR東海の改正履歴では仙台発着が記載されており平成28年2月24日付参照)、旅規ポータルのJR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)に反映している。その後削除された形跡はなく、JR東海は過去の条文を忘れているのだろうか。
183条と223条については、JR東日本旅規改訂履歴を更新し、2018年3月17日付改定に追加した。

来春の旅規改正項目

来春のJR旅規改正に関係するリリースが2件出た。一つは、おおさか東線に適用する運賃について国土交通省近畿運輸局認可申請したというJR西日本のリリース。新規開業区間は、特定都区市内、電車特定区間および大都市近郊区間に含まれることになった。特定都区市内の拡大は認可申請で、他は報告という扱い。
南吹田駅吹田市に立地するが、既開業区間東大阪市内のJR河内永和高井田中央JR俊徳道、JR長瀬、衣摺加美北とともに大阪市内駅となる。八尾市の久宝寺は除外された。旅規86条の大阪市内は、

大阪市内(新加美駅を除く南吹田駅高井田中央駅JR河内永和駅JR俊徳道駅JR長瀬駅及び衣摺加美北駅を含む。)

となるのだろう。
もう一つは、手回り品ルールの改正に関するJR6社連名のリリース。2018年6月9日に発生した東海道新幹線「のぞみ265号」車内における刃物による殺傷事件を受けて鉄道運輸規程昭和17年2月鉄道省令第3号)が改正されるのに伴い、19年4月1日から刃物を持ち込み禁止の対象にするもの。2017年6月の新幹線車内ガソリン焼身自殺の結果、2016年4月28日から旅規別表4の可燃性液体の適用除外項目が縮小されたことに続く改正。

追記(12月30日):コメントを受け、高井田中央を挿入した。
おおさか東線久宝寺を除き大阪市内駅となることで、「大阪市内」発着の乗車券で、久宝寺経由の加美・新加美間の区間外乗車が認められるか注目される。認められれば、基準規程150条2項

規則第86条第5号の規定により発売した大阪市内発又は着の普通乗車券を所持する旅客に対しては、次の図に掲げる太線区間(注:塚本・尼崎・加島間)の全部又は一部について、別に運賃を収受しないで、乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。ただし、尼崎駅が券面区間外である場合は、尼崎駅で下車しないで太線区間の全部を乗車する場合に限る。

に追加されることになるだろう。
もう一つ、鴫野・放出間は、片町線おおさか東線の二重戸籍になるのだろうか。

追記2(1月2日):12月31日のコメントについて。
基準規程155条は(現在も2011年当時の規定どおりであれば)、特定都区市内発着の乗車券と境界駅まで(から)の乗車券とを併用して、券面経路と異なった境界駅まで(から)の乗車を認める規定である。この条項は2006年1月現行版基準規程にはなく、2009年4月現行版に初めて記載された*1。この規定により、実際の乗車経路の運賃よりも安い乗車券を併用して他経路の乗車ができる(JR旅客制度特例の変遷「その他の他経路乗車」参照)。155条9、10号に大阪市内着(発)の乗車券と加島駅発(着)の乗車券(尼崎以遠立花、塚口方面)と併用して、塚本・尼崎(尼崎・塚本)間の他経路乗車ができると規定されている。
150条2項に塚本・尼崎・加島の区間外乗車が規定された*2のは、1997年3月8日のJR東西線開業時であり、155条よりも早い。久宝寺が1駅だけ大阪市内から外れるのは、尼崎と同じ状況であり、区間外乗車が本筋と思う。150条2項の区間外乗車に規定されれば155条にも規定されるだろうが、150条2項に規定されず、155条だけに規定されることはないと思う。

*1:以前からローカルルールとして存在したかは不明

*2:現行規定とは若干条文が異なる

東急の旅規改定

東急の運送約款・規約のページが更新され、12月14日改定の旅客営業規則が掲載された。大井町線有料座席指定サービスQシートの導入に伴うもの。10月23日リリースの「列車指定券」の用語は記載されておらず、東横線S-train座席指定券に統一された。また、「車内で列車指定券は販売しませんのでご注意ください。」と記載されていたが、車内でも発売されるようだ(以上、10月28日記事参照)。
第61条(座席指定券の発売)は、「団体旅客に対する座席指定券大井町線座席指定列車は除く。)は、団体用座席指定券兼補充団体乗車券によって発売する。」となっただけで、第3項の「座席指定列車に、座席指定券を事前に購入しないで乗車した旅客に対しては、当該列車の車内で、座席、乗車駅及び乗車区間を指定した座席指定券を発売する。」は改定されていない。
第139条の2(座席指定料金)第1項に、第2号として大井町線座席指定列車の「大人・小児 400円」が記載された。第182条の4(座席指定券の効力)第1項は、

座席指定券を所持する旅客は、その券面指定された当該列車に限って、東横線座席指定列車においては、券面に表示されている区間を乗車することができる。また、大井町線座席指定列車においては、乗車駅からたまプラーザまでの区間とする。ただし、たまプラーザ以遠においても当該座席は、旅客の降車駅まで継続して使用することができる。

と改定された。第219条(座席指定券の様式)に大井町線座席指定列車の改札窓口発行の指定券の様式が、第221条(車内座席指定券の様式)に「車内座席指定券および座席変更券」と「座席変更券(現金購入)・ 座席変更券(web 購入)」の様式が、第221条の2(座席指定特別補充券の様式)に「大井町線座席指定列車 座席指定特別補充券」が追加された。