国鉄連絡運輸規則(1970)

旅規ポータルのアーカイブ日本国有鉄道連絡運輸規則(1970年1月1日現行)を掲載した。旅客連絡運輸規則ではなく、荷物・貨物も含めた規則だが、所持している資料に荷物・貨物編の記載がないため、旅客編のみを掲載した。
等級制からモノクラス制になった1969年5月の旅規改定直後の規則で、特別車両・船室券が旧1等乗車券に限りなく近かった時代である。当時の別表(赤表紙)は所持していないが、本文中に記載されている連絡会社線には多くの地方私鉄やバス、航路が含まれており、おそらく連絡運輸の最盛期の規則と思われる。19条の100キロ以上の乗車船に学割の適用がある社線区間には、現行規則にもある東武近鉄以外に名鉄が、また東海自動車の自動車線と関西汽船など多くの航路が含まれていた。第7章の2(連絡急行券等の発売)も興味深い。
だいぶ前に2010年10月30日の記事で書いた、連絡運輸規則の選択乗車が55条(乗車区間の選択)と56条(接続駅の選択)に規定されている。国鉄近鉄の鶴橋接続の連絡乗車券で、上本町駅から乗車できたというのは、資料を入手するまで知らなかった。
37条(特定都区市内にある国鉄線の駅に接続する社線及びその接続駅)の小田急の接続駅に、「新宿、渋谷」とあるが、渋谷は間違いだろう。その他、「但し」と「ただし」など表記の乱れがあるが原文に忠実に記載したつもりである。

2018年春の旅規改定

例年は1月下旬に発表される春の旅規改定が遅れていたが、JR九州2月5日付公告を掲載した。JR北海道及び新旧対比表を掲載するJR東海は、まだ発表していない。
次の通り、軽微な改定にとどまっている。

ほかに、4年間訂正されなかった139条の4(乗継座席指定券に対する座席指定料金)の改定漏れが2014年3月に遡って改定される。57条の2(乗継急行券の発売)第1号の表を参照しているが、イとロだけになったのに、ハとニが残っていた。
連絡運輸規則の改定も、同日公告された。72条の2の連絡会社線との直通列車の座席指定料金の規定で、第1号のWILLER TRAINS(京都丹後鉄道)の座席指定料金が100円から200円に値上げされた。なぜか富士急行(200円)が消えている。ホリデー快速富士山号、快速山梨富士号などの直通列車は3月17日のダイヤ改正後も残る。条見出しと本文に「富士急行株式会社線」が含まれているが、こちらは変更がないようなので、単なるミスだろう。
連規にも改定漏れの遡及適用がある。昨年7月1日にJR北海道団体運賃の期間区分が他社と統一され、旅規111条が改定されたが、連規63条2号はもとのままだった。

旅規290条

読者からメールをもらった。JR西日本1月31日プレスリリースは、1月29日新大阪で運転取りやめになった特急サンダーバード4号について、指令員が特急料金を払い戻さないとしたのは誤りで、全額払い戻すとしているが、旅規290条に基づけば指令員の取り扱いは正当ではないかとの疑問である。
結論から言えば、本件に旅規290条は適用されず、289条2項の本則に従って全額払い戻しとなる。290条は「新大阪駅着となる急行券、特別車両券」で「大阪駅新大阪駅との区間が乗車できなくなった場合」は「すでに収受した急行料金又は特別車両料金とすでに乗車した区間に対する急行料金又は特別車両料金とを比較して過剰額の払いもどしをする」という規定であり、新大阪・大阪間で運転停止になったサンダーバード大阪駅着の特急券には適用されない。
旅規290条はもともと、東北本線常磐線にあった一部の東京駅着の急行列車が上野駅で打ち切りになったときに適用するため、1968年10月1日の旅規改定で規定された(当時の旅規290条5項として挿入)。大阪・新大阪間に旅規290条が適用されたのは、1970年3月10日の旅規改定時である。当時は、山陽本線の多くの急行列車が新幹線乗継のため、大阪経由新大阪まで運転されており、大阪まで正常に運転され、大阪・新大阪間が運行不能等になったケースに適用されたものである。その後新幹線の岡山・博多延伸開業及びブルートレインの全廃等により、新大阪発着の特急列車の多くが廃止され、現在290条の「新大阪着」が適用されるのは、新大阪発着の「こうのとり」と京都発着新大阪停車の「スーパーはくと」だけである*1
1973年4月1日の旅規改定で、本来の上野・東京間の特例が廃止*2、代わりに品川・東京間が規定され、現行の290条1項となった。民営化後、運転系統の変更にあわせて2、3項が追加され、2015年3月14日の上野・東京ライン開業により、4項としてもともとの東北本線の急行列車への適用が復活した。指令員が勘違いしたように、290条を大阪着の北陸本線特急に適用してもよいと思う。品川・東京間や上野・東京間と比べてバランスが取れていない。なぜ、現在まで旅規に規定されないのだろう。
上記の趣旨を読者にメールしたところ、読者からJR東日本「きっぷあれこれ」の事故などの場合の取り扱い

運転をとりやめた列車の特急・急行料金は全額お返しいたします。ただし、品川〜東京間(東海道新幹線を含む)、上野〜東京・品川間、大阪〜新大阪間及び東北、上越北陸新幹線の大宮〜上野・東京間または上野〜東京間のみ運転をとりやめた場合は、特急・急行料金の差額のみのお返しとなります。

と書かれている(下線筆者)ので、誤解していたと返事があった。JR西日本の説明も全く同じである。JR西日本の指令員が誤った案内をしたのも、情状酌量の余地がある。
追記(2月4日):混乱があるようなので、あらためて290条の差額払い戻しの適用範囲を整理する。

路線 下車駅 不乗区間
1項 東海道本線(含む新幹線) 新橋、東京 品川・東京間
1項 東海道本線 新大阪 大阪・新大阪間
2項 東北・上越新幹線 上野、東京 大宮・上野、上野・東京間
3項 東海道本線・山手線 品川・池袋間各駅 品川・池袋間
4項 東北本線東海道本線 上野・品川間各駅 上野・品川間

いずれも一方向のみの適用である。双方向であれば、サンダーバードにも適用されることになる。東京駅で下車する(東京駅までの特急券を所持する)成田エクスプレスの旅客はいないと思うが、品川で打ち切られば、1項を適用して差額の払い戻しとなる。
本文で「品川・東京間や上野・東京間と比べてバランスが取れていない」と書いたのは、1項の品川・東京間と2項の上野・東京間を意識していた。
3項は、池袋・新宿着のスーパービュー踊り子・踊り子で品川駅を経由しないが、ここでも仮想品川駅が想定されている。

*1:上りの「サンライズ瀬戸・出雲」は大阪に停車するが、新大阪に停車しない

*2:東北新幹線建設工事の開始に伴い、東京・上野間の回送線が使用できず、東北本線の特急列車が東京駅を発着することがなくなったたため

タッチでGo!新幹線

JR東日本ICカード乗車券で新幹線自由席が乗車できるタッチでGo!新幹線の詳細を発表した(1月25日付リリース)。
サービスエリアはSuica首都圏エリアに相当する、東北新幹線那須塩原上越新幹線上毛高原北陸新幹線安中榛名までの区間東海道・山陽新幹線のスマートEXは登録したクレジットカードで決済するが、「タッチでGo!新幹線」はICカード乗車券のSFから減額する。
4月1日のサービス開始から「当分の間」は、新幹線の運賃と自由席特急料金の合計額から最大240円を割引く*1。しかし、在来線を乗り継ぐ場合は在来線区間IC運賃を別途減額し、東京山手線発着の運賃も適用されない。そのため、

在来線を含むご利用区間によっては、「タッチでGo!新幹線」ご利用のお値段が「タッチでGo!新幹線」を利用しない場合の精算額よりも高額になる場合があります。

と注記している。むしろ、窓口での乗車券類購入が不要になる利便性を売り込んでいる*2
「タッチでGo!新幹線」のサービス開始に伴い、新幹線自由席回数券の発売が2018年12月22日で終了する*3。東京(山手線内)・小山間の新幹線自由席回数券の1枚当たり2,980円に対し、「タッチでGo!新幹線」で渋谷・小山間を乗車すると、東京乗換3,694円(194円+3,500円)、上野乗換3,284円(194円+3,090円)。2015年3月の常磐線の座席未指定券導入時にひたち回数券、フレッシュひたち料金回数券及び定期券用月間料金券が廃止されたのと同様の措置で、リピーターにとっては痛い。

*1:大宮・小山間や上野・熊谷間など無割引の区間もある

*2:初回のみ事前の利用登録手続きが必要

*3:旅規第41条の2の急行回数券は1992年9月25日の改定で廃止されたが、特別企画券として発売されている

東急の12か月間定期券

東急は、3月17日から有効期間が12か月の定期券を発売する、鉄軌道旅客運賃の設定認可申請を行った(1月9日付リリース)。「定期券の多発期を分散させることにより定期券売り場などの混雑を緩和するとともに、購入回数の減少によるお客さまの利便性向上を図る」ことを目的としている。
運賃は1か月定期券の1割引で、現行の6か月定期券の割引率と変わらない。ただし、どちらも10円未満の端数を切り上げるので、6か月定期運賃の2倍額より10円安くなるキロ帯がある。
他社に先駆けての発売なので、連絡定期券は発売せず、利便性は疑問である。PASMO協議会などで、連絡運輸各社と調整できなかったのだろうか。
追記(2月3日):コメントがあった国鉄の12か月定期について、旅規を調べてみた。1966(昭和41)年3月5日の改定*1で、第35条(通勤定期乗車券の発売)に第2項が挿入され、

2 前項の規定によるほか、6箇月の通勤定期乗車券を継続して同時に購求する旅客に対しては、これを2倍して通用期間を12箇月とした1枚の通勤定期乗車券を発売することがある。

と規定された。別表第1号の2イの2(鉄道の大人通勤定期旅客運賃(2等))に12箇月定期の運賃は記載されておらず、「これを2倍して」は運賃を意味していると思われる。
コメントのとおり、1968年4月1日の旅規改定で第35条2項は削除されている。

*1:この日の改定で、普通定期券が廃止され、通勤定期券に一本化された

国鉄の再建

昭和45(1970)年出版の「国鉄の再建」を古書店で見つけた。日本国有鉄道審議室編で、交通協力会出版部の発行。
前年の「日本国有鉄道財政再建特別措置法」(S44.5.9法律第24号)の施行を受け、運輸省の「日本国有鉄道の財政の再建に関する基本方針」(S44.9.12閣議決定)に基づき、国鉄は「日本国有鉄道の財政の再建に関する経営の基本的計画」(S45.2.19)を策定した。この本は、国鉄の基本的計画に関する部内向けの解説書として刊行されたようだ。
旅客運賃制度について、興味深い記述があるので紹介する。

 現在は上野から札幌へグリーン車で行く場合、札幌までの乗車券とグリーン券、青森までの特急券・寝台券、連絡線の座席指定券、函館から札幌までの特急券といった具合に、5枚もの切符をもたないと行けないし窓口もひとつの窓口では用が足りない場合が少なくない。最近、電算端局装置で乗車券と指定券が1枚の切符で売れるようになり、また手作業の場合にも乗車券と急行券の1枚化がすすめられたりしているが、まだ不十分な点が多い。また運賃・料金の制度上も、例えば急行列車を乗りかえるごとに別に急行料金がいるなどの問題もあって、旅客にとって不便であるのはもちろん、国鉄にとっても取扱いがそれだけ複雑となり、切符の発売を機械化する場合のあい路にもなっている。
 そこで、今後は切符類はできるだけ1枚で売れるように、運賃料金制度を検討して改善を図る。

ヨーロッパのようにインターシティ運賃と都市圏内運賃を分離して、都市間運賃は急行料金込みにする構想*1だと思うが、実現しなかった。実際に検討されたのだろうか。それをいうなら、特別措置法が成立した1969年5月9日の運賃改定時点に、運賃の等級制をやめてグリーン料金制度に変更したのも、切符の1枚化に逆行する動きだった。

 現在は、全国どこでもキロ当たりいくらという運賃制度(全国一律対キロ運賃制)を採用しており、この制度は、全国鉄道輸送網の確立、地域開発の促進等に大きな役割を果たしてきた。
 しかし近年、大都市の発展が著しく、対キロに基づく運賃制度では、同一都市内発着の場合でも、駅が異なることによって運賃が相異し、運賃算定上煩雑であるばかりでなく、今後輸送の近代化をはかる上にも障害となっている。
 したがって、今後の輸送体制の近代化に即した運賃制度を考える必要があるので、例えばゾーン運賃の拡大、線区内均一運賃制度等について検討することとする。

このページには「ゾーン運賃の拡大」と題した地図がある。都区市内発着の共通運賃の六大都市が「現行」として示され、他に「拡大」として旭川地区、札幌地区、函館地区、青森地区、盛岡地区、仙台地区、秋田地区、山形地区、新潟地区、長野地区、金沢地区、鳥取地区、島根地区、広島地区、高松地区、福岡地区、熊本地区、鹿児島地区が記載されている。このうち、1972年9月1日の旅規改定で実現したのは、札幌、仙台、広島、北九州、福岡の5市にとどまっている。市内共通運賃がなぜ「輸送体系の近代化に即した運賃制度」なのか、また「線区内均一運賃制度」が何を意味するのかも不明である。
なお、この法律は第一次「日本国有鉄道財政再建特別措置法」で、昭和44年度から10年間を再建期間とする再建計画を定めているが、赤字額の増加に歯止めがかからず、昭和51年11月5日廃止された。その後第二次「特別措置法」(S55.12.27法律111号)が制定された。新法で地方交通線における割増運賃が規定され、全国一律運賃が崩れた。

*1:都市圏内運賃は他の輸送モードとの共通のゾーン運賃

あしかがフラワーパーク駅

JR東日本高崎支社が、2018年4月1日両毛線富田・足利間にあしかがフラワーパーク駅を開業するとリリースした。駅所在地が小山起点32km0mと記載されているだけで、営業キロを設定するかどうか不明だが、当面の間運賃は富田駅営業キロにより計算する。2016年3月26日開業した小田栄駅川崎新町駅営業キロによるのと同じ特例。あしかがフラワーパーク富田駅相互間乗車にSuicaが使えず、乗車券を購入する必要があるのも小田栄駅と同じ。一方、小田栄駅と同日開業の石巻あゆみ野駅、2017年4月1日開業の郡山富田駅にはこのような特例はない。
小田栄駅の特例の理由として、「需要動向把握と適切な駅整備を図ることを目的とした社会実験駅で、常設駅ではないから」と説明されていたが、営業キロが設定され、旅規86条の横浜市内駅にも追加されている。実際は、Suicaのソフトウェア改修のコストを抑えるためということがいわれていた。PAGEというサイトのJR東日本の小田栄駅開業で注目「戦略的新駅」ってなに?という記事によると、小田栄駅の設置費用はJR東日本川崎市が折半したが、約5.5億円と従来より一桁少ないという。その理由のひとつとして、「運賃計算システムの改修費用を節約するため、運賃計算上は小田栄駅を隣の川崎新町駅と同じ駅という扱いにした」と書かれている。「当面の間」とは2019年10月の消費税増税による運賃改定時までということだろう。石巻あゆみ野駅郡山富田駅も仙台Suicaエリアにあるが、首都圏Suicaエリアと比べて駅数が少なくソフトウェア改修コストは許容できる範囲ということか。
ところで、リリースに記載されていない、あしかがフラワーパーク・富田間の乗車券の運賃はいくらなのか。レスポンスの記事運賃は「隣の駅」と同じ…両毛線新駅「あしかがフラワーパーク」2018年4月1日開業によると

富田〜あしかがフラワーパーク間のみ乗車する場合は、富田〜足利間7.1kmを基準に運賃額を計算。普通運賃(大人)は200円だ。

とある。あしかがフラワーパーク営業キロが設定されない「駅と駅との中間に旅客の乗降を認める乗降場」であれば、旅規71条1項1号を適用して、外方駅までの運賃でよい。小田栄は正式の駅だが、小田栄・川崎新町の運賃を外方の川崎新町・浜川崎間で計算されても、初乗りの140円だから大きな問題ではなかった。しかし、あしかがフラワーパークの場合は0.9キロの乗車で7.1キロ分の運賃が課されることになる。運賃徴収の根拠を旅規できちんと規定する必要がある。
追記(12月19日):基準規程で特定運賃を規定するのではとのコメントがあったので、あらためて本件の旅規と基準規程の条文を掲げておく。

営業キロを定めていない区間の旅客運賃・料金の計算方)
第71条 営業キロを定めていない区間について旅客運賃・料金を計算する場合は、次の各号による。
(1)駅と駅との中間に旅客の乗降を認めるときは、その乗降場の外方にある駅発又は着の営業キロによる。ただし、別に定める場合は、その乗降場の内方にある駅発又は着の営業キロによる。
(後略)

基準規程の条文は、2016年5月10日の記事で紹介した「叩け!マルス」の5月3日記事による。

営業キロを定めていない区間の旅客運賃・料金の計算方の特例)
第110条の2 規則第71条第1項第1号ただし書の規定は、小田栄駅八丁畷以遠(尻手方面)の各駅相互間の旅客運賃・料金を計算する場合に適用する。

この条文にあしかがフラワーパークを追加すると

小田栄駅八丁畷以遠(尻手方面)の各駅相互間及びあしかがフラワーパーク駅と佐野以遠(岩舟方面)の各駅相互間の旅客運賃・料金

となり、これにあしかがフラワーパーク・富田間の特定運賃を加えると、かなり複雑になりそう。
また、小田栄駅は「駅と駅との中間に旅客の乗降を認める乗降場」ではなく、86条の横浜市内駅にも記載されている正式な駅*1であるという不整合は解消しない。

*1:基準規程110条の2でも小田栄駅といっている