DMV活用策検討

2012年9月19日気仙沼線BRTの記事で、JR東日本DMVを検討したのだろうかと書いた。ウェブを検索して(財)運輸政策研究機構の運輸政策研究所が2011年11月21日発表した三陸地域の公共交通復興に向けた基礎資料作成に関する調査(中間報告)をみつけた。運輸政策研究機構運は国土交通省の外郭団体(運輸事務次官を務めた黒野匡彦氏が代表)だから、JR東日本のBRT構想に影響していると思われる。
調査は、石巻線気仙沼線大船渡線の復旧について、鉄道、LRV、DMV、BRT、バスの4モードの比較検討をしている。それぞれのメリット・デメリットは、次のようにまとめられている(p51)。

そのうえで、鉄道を復旧する案として従来型鉄道、LRV、DMVが、鉄道用地を活用する案として従来型バス、連接バスガイドウェイバスが選択肢となっている。結論は書かれていないが、今後の調査課題として「鉄道敷に他交通システムを導入する場合の技術的検討」が掲げられており、鉄道用地活用案に軸足を置いているようだ。中間報告から2年以上経過したが、最終報告はまだ発表されていない。
DMVについては、輸送力(定員)が小さいことが問題とされている。JR北海道DMVは、たしかに輸送密度がもっと低い路線をターゲットとしている。また、石勝線の特急脱線炎上事故対応のため実用化が中断されており、実績がないことがデメリットとされている。
一方でDMVの活用策を話し合う国土交通省有識者会議が2月6日開催されたという。静岡新聞の記事

線路・道路両用車で富士市などが報告 有識者会議初会合(2013/2/7 07:47)
 線路と道路の両方を走れる新型車両「デュアル・モード・ビークルDMV)」の活用策を話し合う国土交通省有識者会議が6日、初会合を開き、委員から観光客の増加やローカル鉄道の活性化といった効果に期待する声が相次いだ。今夏に中間報告をまとめる。
 DMVは、タイヤと鉄道用車輪を自在に切り替えて走る仕組み。バスと電車の乗り換えの不便がなくなるほか、車両購入や燃料のコストも大幅に抑えられるという。このため、赤字経営に悩む全国のローカル鉄道や自治体で導入を検討する動きが広がっている。
 この日の会合では、試験的な営業運転を始めているJR北海道や、導入を検討している富士市など4自治体が現状を報告。利用者から「乗り換えがなく便利」「イメージアップになる」など好意的な声が寄せられたと紹介した。
 委員からは、バスとして走った場合、鉄道も含めた全体のダイヤが乱れることを懸念する意見も出た。

富士市岳南鉄道へのDMV導入を検討している。高知新聞西日本新聞も報じており、高知・徳島両県(阿佐海岸鉄道)と熊本県南阿蘇鉄道)も有識者会議に参加したようだ。いずれも、これまでにDMVの試験走行を実施している。
2012年9月21日の記事で紹介した「財界さっぽろ」10月号の「JR北海道DMVはどうなった」によると、「DMVは国の指導によりJR北海道がビジネスモデルを確立してから、同社以外の鉄道に導入される」ということだった。国土交通省有識者会議を発足したということは、JR北海道の事業化の前に他の地域で導入する可能性が出てきたということだろうか。
むしろ2015年の北海道新幹線開業時に廃止されようとしている江差線木古内江差間に間に導入してほしいものだ。