電車特定区間内等の運賃

消費税増税に伴うJRの運賃改定で、東京山手線内と大阪環状線内、東京附近と大阪附近の電車特定区間内の運賃が異なることになる。東京ではIC乗車券の運賃を1円単位とし、電車特定区間内では常にIC運賃が安くなるように調整したためだが、その結果旅規78条の規定がきわめて複雑になった。
改定後の第78条第1項第1号は

電車特定区間内等の大人片道普通旅客運賃)
第78条 次の各号に掲げる区間内相互発着の場合の大人片道普通旅客運賃は、第77条の規定にかかわらず、当該各号の定めによつて計算した額とする。
(1) 第86条第1号に掲げる図中の太線区間(以下「東京山手線内」という。)及び同条第5号に掲げる図中の太線区間(以下「大阪環状線内」という。)の駅相互発着の場合
イ 東京山手線内相互発着の場合
 次に定める賃率によつて第77条第1項第1号の規定を適用して計算した額と、その額に100分の8を乗じ10円未満のは数を円位において切り上げた額とを合算した額
300キロメートル以下の営業キロ(第1地帯) 1キロメートルにつき 13円25銭
ロ 大阪環状線内相互発着の場合
 前イに定める賃率によつて第77条の規定を適用して計算した額

となる。山手線内と大阪環状線内の運賃計算の違いは、消費税額の加算方法である。第77条第1項第1号の規定により「10円未満の端数を10円単位に切り上げ」て計算した税前運賃に、山手線内は消費税を加えて10円単位に切り上げ、大阪環状線内は四捨五入する。第2号の東西の電車特定区間内の運賃計算も同じである。
ところで、第77条には第2項がある。キロ帯区分(幹線の場合、11-50キロ:5キロ刻み、51-100キロ:10キロ刻み、101-600キロ:20キロ刻み、601キロ以上:40キロ刻み)の中央値を運賃計算に用いるキロ地帯制の規定である。山手線内及び東京附近の電車特定区間内の運賃は「第77条の規定にかかわらず、当該各号の定めによつて計算」するのだから、第2項のキロ地帯制を適用せず、1キロごとに賃率をかけて税前運賃を計算すると読むことができる。
昨年5月27日の記事1円刻みより1キロ刻みにで書いたように、キロ地帯制を併用した対キロ制運賃というJRの運賃計算ルールが乗車券を分割したほうが運賃が安くなる矛盾の原因となっている。78条の条文は旅規起草者の単純なミスだろうが、キロ地帯制を廃止したほうが、分割購入問題が緩和される方向であり望ましい。