大都市近郊区間の拡大

JR東日本11月29日付リリースで、2014年4月1日からSuica利用範囲を拡大し、これに伴い仙台近郊区間を新設、東京近郊区間新潟近郊区間を拡大すると発表した。
東京近郊区間はとうてい東京近郊とはいえない松本まで拡大する。いわき・松本間の常磐線・中央線経由の乗車券は現在4日間有効だが、来年4月以降「発売当日限り有効、下車前途無効」となる。300キロを超え、遠距離逓減効果が出る乗車券で途中下車を禁止するというのは、改悪である。都内で一泊することはおろか、乗換駅の上野や新宿での途中下車もできなくなる。また、目的地で二泊以上するときは、学割で往復乗車券を購入できず、2枚の学割証を使用して片道乗車券を購入する必要がある。黒磯や水上から松本なら、在来線に乗車するときでも新幹線を乗車券の経路にはさんで「区間内の駅相互発着」を逃れることが可能だが、常磐線ではこれができない*1。同運賃のいわき・北松本などにして、4日間有効途中下車可に戻すことはできるが、日立・上諏訪間ではそれもできない。
大都市近郊区間は、1973年4月1日に初めて東京と大阪に設定されたが、有効期間、途中下車と選択乗車の取扱いについては、それ以前の電車特定区間*2を引き継いだものである。電車特定区間は、通勤電車(下駄電)の運転区間で、東京の場合桜木町、高尾、大宮、取手、千葉までだった*3。1973年大都市近郊区間となった後、1999年の東京近郊区間拡大は首都圏の通勤圏拡大に伴うものだったが、2004年、2008年、2009年とSuica首都圏エリアの拡大にあわせて拡大した*4東京近郊区間は、東京電車特定区間以来の制定の趣旨からいって、都心との直通普通列車がフリークエントに運転されている100キロ圏(1999年に拡大された熱海、大月、新前橋、宇都宮、勝田、成田空港、茂原、君津までの範囲にほぼ合致する)に限るべきだろう。
JR東日本以外は、ICカード乗車券利用エリアを大都市近郊区間とは別に定めている。JR西日本ICOCA近畿圏エリアは大阪近郊区間より狭く、JR九州SUGOCAの福岡・佐賀・大分・熊本エリアは福岡近郊区間よりも広いが、日田彦山線後藤寺線筑豊本線桂川・原田間を含まない。JR西日本は2007年9月1日岡山・広島エリアにICOCAを導入した際、エリア内に環状線区間があるのに岡山・広島近郊区間を新設しなかった。JR東海TOICAエリア、JR九州SUGOCA長崎エリアにも環状線区間があるが、大都市近郊区間は存在しない。これらのエリア内の環状線区間は、ICカード乗車券を使用するときに限り、最低廉経路の運賃を適用する取扱いである。
あらかじめ乗車区間の運賃を支払う普通乗車券(したがって乗車変更の取扱いが生じる)と乗車した区間の運賃を後払いするICカード乗車券とでは、運送契約の成立条件が異なるのだから、環状線区間の運賃の取扱いが違っても問題ないだろう。なぜJR東日本は大都市近郊区間ICカード乗車券の利用区間に一致させることにこだわるのだろう。

*1:日暮里・新宿間は70条特定区間で経路を指定しないから、上野・東京間を新幹線経由とすることはできない

*2:低廉賃率を適用する現行の電車特定区間とは異なる

*3:64/05/19根岸線開業により磯子まで、66/03/05青梅・五日市・横須賀各線に拡大

*4:東京近郊区間内の烏山、鹿島、久留里各線はSuica首都圏エリアに含まれない