続・岡谷・辰野・塩尻三角線の選択乗車

11月17日の記事で岡谷・辰野・塩尻三角線の1985年と2010年の方向別列車本数を比較し、選択乗車区間の改廃について考察した。しかし、なぜ1985年3月の旅規改定で「辰野以遠(宮木方面)の各駅と、岡谷以遠(下諏訪方面)の各駅との相互間」に「小野又は」が挿入され、「川岸又は辰野以遠(宮木方面)の各駅と、塩尻以遠(洗馬又は広丘方面)の各駅との相互間」から「川岸又は」が削除されたかの検討が不十分であった。
1985年3月のダイヤ改正前後の列車本数を比較すると、下図のとおりとなり、この理由が明確になった。なおダイヤ改正前の列車本数は時刻表1984年5月号掲載のもの、改正後は前回示した1985年3月ダイヤ改正時のもので、ともに下りの定期列車の本数である。

図からわかるように、1983年7月のみどり湖経由の新線開業後も、辰野経由の旧線には多くの直通列車が運転されていた。特急「あずさ」はすべて新線経由だったが、急行「アルプス」は5本のうち4本*1が旧線経由であった。普通列車は、新線経由8本、旧線経由10本*2と旧線経由のほうが多かったのである。
したがって、川岸・塩尻間に、距離は長いが列車本数の多い旧線経由の迂回乗車を認める必要があったのだ。一方、小野・岡谷間は、距離の短い旧線経由のほうが列車本数も多く、選択乗車区間とする意味がなかった。これが1985年3月のダイヤ改正で、新旧両線の列車本数が逆転し、川岸・塩尻間を選択乗車区間とする意味がなくなり、小野・岡谷間が必要となったのである。
1983年7月の新線開業時に、「岡谷以遠(下諏訪方面)の各駅と、塩尻以遠(洗馬又は広丘方面)の各駅との相互間」はみどり湖経由で運賃・料金を計算する経路特定区間になった。2001年12月列車特定区間に格下げされたが、旧線経由の急行「アルプス」が廃止された以降もこの列車特定区間は制度上存続しているようだ。

*1:うち3本は、辰野まで飯田線直通急行「こまがね」を併結していた

*2:うち、新宿発長野行きが3本、松本行きが3本あった