青函航路自動車航送規則

旅規ポータルの旅規アーカイブ青函航路自動車等航送規則・取扱基準規程(1970)を掲載した。青森・函館間航路自動車等航送規則及び同取扱基準規程が施行されたのは1967年6月1日(昭和42年5月16日国鉄公示第257号)だが、所持する基準規程が1970年6月1日現行版なのでこれと対比した。67年の制定施行時は等級制の時代であり、70年版で「削除」となっている規則第13条は、旅客の上級変更の規定だった。また航送料金は67年当時から3.3-13.5%値下げされている*1

青函航路の自動車航送について、日本国有鉄道百年史(第13巻、p393-394)は次のように書いている。

 昭和30年代末期からの自動車の急速な普及と道路整備の進展から、必然的に青函航路における自動車航送の要請が高まり、41年2月から、その本格的な検討が開始された。道南海運および東日本フェリーの両民営業者からの反対もあったが、両者と折衝を重ねた結果、同年12月には、「青函連絡船による乗用車航送については、片道1船6両、1日2往復とし、42年6月から実施する」ことで合意に達した。
 そこで津軽丸型客貨船の遊歩甲板船尾に乗用車6両を搭載できるスペースを取るなどの各種工事を施し、また42年5月16日には青森・函館間航路自動車等航送規則及び同取扱基準規程を制定したうえで、同年6月1日より乗用車航送を開始した。
 当初は2往復であったが非常に好評で輸送要請も高まったため、次第に増便され、現在平常時6往復、繁忙期8往復の航送を行なっている。また1船あたりの搭載両数も44年度に8両、47年度には12両と増強し、航送需要の増加に対応している。

時刻表1970年10月号のピンクのページ「青函航路の自動車等航送切符」では、1便当たり6両、1日8往復と若干異なる。また発売箇所に一戸駅と交通公社盛岡営業所が追加されている。なお、昭和45年5月30日国鉄公示第229号(6月1日施行)で、規則第6条1項は次のように改定されている。おそらく発売箇所の規程が基準規程に移行したものと思うが、参照した70年6月版の規則と基準規程は、これを反映していない。

自動車等航送切符は、当該連絡船が出航する日の14日前の9時から国鉄が別に定める個所で発売する。

国鉄の連絡船による自動車航送は、青函航路以前に大畠・小松港間航路(1954年7月29日開始)、宮島口・宮島間航路(1962年11月1日)及び仁方・堀江間航路(1965年7月1日)で行われていた。しかし、規則を制定して実施したのは青函航路が初めてである。国鉄百年史が規則と基準規程の制定について書いているのはこのためだろう。それ以前の3航路は、次のような簡単な公示だけだった。

日本国有鉄道公示第176号

昭和29年7月15日から大畠・小松港間航路において自動車類を航送することとし、その取扱方を次のように定める。
昭和29年7月12日
日本国有鉄道総裁 長崎惣之助
1 取扱範囲
大畠・小松港相互間に限る。
2 取扱方
(1) 自動車類の積卸しは、貨主の負担とし、積込は出港5分前までに、取卸しは到着後10分以内に終了するものとする。
(2) 自動車類には、火薬類、圧縮ガス又は液化ガスの類を積載しないものとする。
(3) 積載自動車は、長さ10.8メートル、高さ2.3メートルをこえないこと。
(4) 付添人は1両につき2名以内とし(付添人以外の乗車は認めない。)、付添人料は回航路の旅客運賃と同額とする。
3 航送料金
トラツク
(1) 標記積載トン数1トンをこえるもの 1台につき 2,000円
(2) 〃1トン以下のもの       〃    1,000円
乗用車(3輪乗用車を含む。)   〃    1,500円
バス及び消防自動車        〃    2,000円
オート3輪車           〃     700円
この公示に定めない事項については、一般貨物運送の例に準じて取り扱うものとする。

 青函航路についても、乗用車の航送開始の1年前の1966年8月18日に、トラックについてこのような公示が出た。期間は当分の間となっているが、8月26日の公示第524号で当日限りで廃止された。百年史によれば、民営業者との協議のさなかである。もちろん百年史には記載がない。いったい何だったのだろう。

日本国有鉄道公示第509号

青森・函館間における自動車類の航送の取扱方を次のように定める。
昭和41年8月18日
日本国有鉄道総裁 石田 禮助
1 取扱範囲
青森・函館相互間に限る。
2 期間
昭和41年8月18日から当分の間
3 取扱方
(1) 自動車類の積卸し並びに自動車類及び積載貨物の防護及び保管は、荷主の負担とする。
(2) 荷主は、運送中の自動車類の移動を防止するために、制動機による制動を施すものとする。
(3) 自動車類(貨物を積載した場合は貨物を積載した状態における自動車類)は、幅3メートル又は高さ3.5メートルをこえないものとする。
(4) 自動車類には、貨物運送規則(昭和24年9月日本国有鉄道公示第125号)別表貨物等級表に定める危険品を積載しないものとする。
(5) 付添人は、1台につき2名以内とし、付添人料は収受しない。
4 航送料金(積空にかかわらず1台につき) 
車種別 自動車の長さ 料金
トラツク 3メートルまで  6,000円
4 10,000 
5 12,000 
6 18,000 
7 21,000 
8 24,000 
9 27,000 
10 30,000 
11 33,000 
以上1メートルまでを増すごとに  3,000 
5 航送料金の収受
諸料金切符により収受する。
6 その他
この公示に定めてない事項については、一般貨物運送の例による。

 追記(8月30日):本文に書かなかったが、気になっていたことがある。青森・函館間航路自動車等航送規則の「自動車等」の意味。第2条第1号に

(1) 「航送」とは、青森・函館間航路において自動車及び旅客(以下これらを「自動車等」という。)を同時に運送することをいう。

 とあり、自動車と旅客を合わせて「自動車等」と定義している。自動車の航送規則ではあるが、モノを主にヒトを従とした当時の起草者のセンスを疑う。

*1:往復の復路料金の割引率は10%から5%に低下