11月10日の記事のコメントで「往復で運賃が異なることはよくある」と書いた。
よく知られているのは東京メトロのラッチ外乗継駅に関するもの。営団ラッチ外乗継事件顛末記で紹介した、御茶ノ水→池袋→護国寺の例である。御茶ノ水・護国寺間の運賃は160円だが、PASMOで乗車すれば、往路は池袋出場時に190円減算され、護国寺出場時はそのまま。復路は池袋の減算額が160円となる。根拠は東京メトロのICカード乗車券取扱規則第13条（運賃の減額）第3項。
乗換駅を経由して着駅で出場する場合は、発着区間の片道普通旅客運賃相当額と当該乗換駅における収受額とを比較し、不足額は収受し過剰額は払戻しをしないものとする。
普通乗車券・回数乗車券は旅客営業規程第83条（乗換えの制限）第1項が適用され、ラッチ外乗換駅では発着駅間の普通旅客運賃と比較して、発駅又は着駅から当該乗換駅までの運賃が高額となる場合は、発着駅間の所定運賃による乗換えはできない。「発駅又は着駅から当該乗換駅」の双方向についての規定であるが、営団時代は補則で「発駅から当該乗継駅までの普通旅客運賃以上の場合は乗継を認める」とし、往復で異なっていた。東京メトロの補則は見ていないが、現在も同じ取扱になっている。
割引が絡んで往復の運賃が異なるケースがある。最近見つけた東急のICカード乗車券の特殊な運賃計算ルール その2には、「菊名〜代官山の定期券をお持ちの方が、横浜駅から乗車し、渋谷駅でのりかえて外苑前駅で下車した場合」の運賃計算が紹介されている。まず、渋谷駅では
定期券を使用せず全区間を通算した「横浜〜渋谷」の運賃（260円)と定期券の区間外となる「横浜〜菊名」の運賃(150円)と「代官山〜渋谷」の運賃(120円)の合計額(270円)を比較し、安くなる全区間を通算した運賃（260円）をいただきます。
「横浜〜渋谷」と「渋谷〜外苑前」をそれぞれ１つの乗車区間として運賃を計算しますので乗継割引運賃の適用はせず、東京メトロ線渋谷駅からのメトロ線運賃（160円）をいただきます。
となる。ところが復路は、
「外苑前〜代官山」と「菊名〜横浜」をそれぞれ１つの乗車区間として運賃を計算しますので外苑前駅〜代官山駅は乗継割引運賃を適用します。結果として、ゆきとかえりでは運賃に10円の差額が発生します。
と往復の運賃が異なることになる。
このページは、東横線・副都心線直通運転開始以前に掲載されたものだろう。現在は、渋谷地下駅でノーラッチで半蔵門線に乗換えられるから、外苑前駅での減算額は復路と同じ410円となる。したがって、渋谷駅の乗換えがラッチ外かラッチ内かで、運賃が異なることになる。
ところでパスネットの不思議追記2で紹介した、パスネットが最低運賃を引き落とさない例は、PASMOで改善されたはずである。東急東横線代官山から東京メトロ丸の内線茗荷谷まで、田園調布・目黒（都営三田線）春日というルートでパスネットで乗車し、春日で都営から東京メトロ（後楽園）の連絡改札を通過すると、春日で代官山・春日間のノーラッチ最低廉運賃である、代官山→中目黒(東急、110円)と中目黒−白金高輪→春日(東京メトロ・都営乗継割引、290円)の合算額400円を引き落とし、後楽園で新たに東京メトロの前引き運賃160円が差し引かれたという。これは、乗車経路である代官山→目黒(東急、210円)と目黒→茗荷谷(都営・東京メトロ乗継割引300円)の合算額510円よりも、50円高い。
PASMOでは、標準約款ICカード乗車券取扱規則（鉄道）第14条（当社を含むIC鉄道事業者相互間を乗車する場合の運賃の減額）第4項
IC鉄道事業者が規定する旅客運賃に割引を適用する区間を乗車する場合は、出場時に当該区間の片道普通旅客運賃相当額から割引額を減じた額を減額する。ただし、同一IC鉄道事業者の割引適用区間が重複する場合にあっては、次の各号に定めるとおりとする。
（1）割引額が異なる場合には、旅客運賃が低廉となる割引を適用する。
（2）割引額が同一の場合には、乗車経路において最初に発生する割引を適用する。
の第1号が適用されることになる。したがって代官山→春日＝後楽園→茗荷谷間と乗車した場合、まず春日駅で3780円*1を減額し、茗荷谷駅出場時には、後楽園・茗荷谷間の運賃160円ではなく、春日駅ラッチ外乗換の代官山・茗荷谷間最低廉運賃510円*2から既収額3780円との差額1430円が減額されるだろう。
追記(11月19日)：やまやまさんのご指摘により金額を訂正。
