国鉄・営団地下鉄の連絡乗車券の接続駅選択

かつて、国鉄営団地下鉄との連絡乗車券は、接続駅を指定せず、発着駅間の最低廉運賃経路で運賃を計算していた。8月12日の記事で書いたように、営団の資料から、この制度が東京地下鉄道時代の昭和10(1935)年にさかのぼることがわかったが、いつまで続いたかは未解明だった。
OSAKA CITYさんから、7月25日の記事に対するコメントで、この制度にかかわる連絡運輸規則第56条(接続駅の選択)を紹介して頂いた。その後連絡運輸規則の関連規定の変遷を鉄道公報で調査した結果をご教示頂いたが、報告が遅れてしまった。
最低廉運賃については連絡運輸規則の第33条の但し書きに規定されていたとのことである。昭和33(1958)年10月1日現行の規定は、次の通り。

(旅客運賃計算上の経路等)
第33条 旅客運賃は、旅客の実際乗車船する経路及び発着の順序によつて計算する。但し、国鉄線各駅と帝都高速度交通営団地下鉄線各駅との間に発着する旅客に対する普通旅客運賃は、運賃総額において最も低廉となる接続駅経由の経路による。

但し書きは、昭和35(1960)年4月10日に次のように改定された。以前は団体旅客運賃にも適用されていたらしい。

但し、国鉄線各駅と帝都高速度交通営団地下鉄線各駅との間に発着する旅客に対する普通旅客運賃(団体旅客運賃を計算する場合の1人当り普通旅客運賃を除く。)は、運賃総額において最も低廉となる接続駅経由の経路による。

さらに、昭和36(1961)年2月8日には、

但し、国鉄線各駅と帝都高速度交通営団地下鉄線の銀座線・丸ノ内線各駅との間に発着する旅客及び銀座線・丸ノ内線を経由して荻窪線各駅との間に発着する旅客に対する普通旅客運賃(団体旅客運賃を計算する場合の1人当り普通旅客運賃を除く。)は、国鉄区間の普通旅客運賃が最も低廉となる接続駅経由の経路による。

と改定された。運賃総額が国鉄区間の運賃に変更になったのは、この日に荻窪線新宿・新中野間及び中野坂上中野富士見町間が開業し、営団の運賃が全線25円均一から、路線別運賃に変更になったためである。
第33条の但し書き及び第56条の営団関連条項が廃止されたのは、昭和36年11月1日とのことである。営団の運賃が対キロ区間制に変更になった日で、OSAKA CITYさんがコメントで予想したとおりだった。
ところで、この制度は、長澤規矩也国鉄を叱る」(s35.11.10法政大学出版局)の連絡運輸の項(p160)にも紹介されていた。

また、国鉄線と東横線が平行して走っている、横浜・桜木町間は、普通乗車券でも、定期乗車券でも、両線のどちらを通ってもよいし、純然たる平行ではないが、小川町・寄居間は、小川町と寄居または寄居接続秩父鉄道各駅との相互乗車券に限って、国鉄八高線に乗っても、東武鉄道東上線に乗ってもよい。こういうことは、連絡運輸規則というものにある(第五十五条)。
ふしぎなのは、国鉄と地下鉄との連絡で、新橋・渋谷・神田・上野どこで乗換えてもよい(同規則第五十六条)ことである。たとえば、大崎から、国鉄十円区間の地下鉄連絡乗車券では、新橋で乗換えずに、上野で乗換えてもよいというのである。しかし、定期券は、接続駅が指定される。

かなり前に読んだはずだが、前段の国鉄と私鉄の選択乗車しか記憶に残っていなかった。連規第55条の国鉄と私鉄の選択乗車については別稿で。