続・亀有・金町の運賃訴訟

10月22日の記事の続報。弁護士ドットコムニュースに原告の記者会見の模様が掲載されていた。新聞が報じたとおりの内容だが、特記事項は西日暮里乗換え時のメトロ北千住・西日暮里間の「二重取り」について。「二重取り」になっていないメトロ南北線(第一種事業者)と都営三田線(第二種事業者)の例をあげて、メトロが綾瀬ー西日暮里間をJRに貸与すれば(JR東日本が第二種事業となれば)解消する問題と主張している。

亀有・金町の鉄道問題を考える会のサイトには、メトロ南北線都営三田線白金高輪・目黒間のほか、和倉温泉・七尾間、清音・総社間(以上第一種・第二種化)、谷上・新神戸間(北神急行電鉄から神戸市に移管)、OTS大阪市OTSが第三種・大阪市が第二種)などが(初乗り運賃の二重取りを回避した)成功事例として記載されている。

記者会見に同席した中村弁護士によるプレゼンテーション常磐緩行線・千代田線問題(金町・亀有問題)について(2019年11月17日)が掲載されている。これが原告の訴状に盛り込まれているのだろうが、乗継運賃制度や初乗り運賃の値下げでなく、通算運賃による運賃の改定を求めている。また、地下2階の千代田線ホームから地上2階の常磐線ホームまでの移動を要する北千住乗換えについて、鉄道事業法22条3(乗継円滑化措置等)、23条(事業改善の命令)に基づき、「国土交通大臣は、運賃の変更だけでなく、列車の運行計画自体の変更について改善命令を発令することができる」と主張している。

会のサイトに掲載されている鉄道ピクトリアル1984年8月号記事、曽根悟「常磐線と千代田線の"相互乗り入れ"」は、亀有・金町駅の利用者に北千住又は西日暮里での乗換えを強いることになった「迷惑乗り入れ」の問題点を綾瀬接続の不自然さと系統分離の失敗として、次のように指摘している(筆者による大要)。

営団の検査区が綾瀬にできるため国鉄との接続を綾瀬にし、綾瀬にも北千住にも快速線との間に渡り線を設けないという基本的設計ミスを犯した。快速停車駅の客は日暮里、上野に、快速通過駅の客は千代田線に向かうということを前提に設備やダイヤが作られ、需要動向を無視した系統分類になった。方向別ホームで快速⇔千代田線、緩行⇔上野の直通も可能とし、同一ホーム向い側乗換えの原則を守っておけば、問題がなかった。

上記の中村弁護士によるプレゼンテーションは、次のように結んでいる。

鉄道事業者や国に対する損害賠償請求訴訟は、権利救済訴訟ではなく、政策形成訴訟であることを理解しておかねばならない。訴訟は本来の目的は権利救済である。しかし、訴訟を行うことで、鉄道事業者や国を被告とし、当方の主張・立証に対して答弁や反証を余儀なくさせ、鉄道事業の正当性の見直しを余儀なくさせるとともに、世論に訴えるという方法にもなり、沿線住民の関心を高め、よりよい鉄道事業を推進しなければ、利用者の信頼を失うということを理解させるための訴訟は取りうる手段である。

亀有・金町の鉄道問題を考える会のサイトは、更新が途絶えており、まだ提訴について記載していない。