都道府県別無人駅比率

駅の無人化が全国で拡大していると報じられている(NHK朝日)。国土交通省が11月6日に開催した「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者国土交通省意見交換会資料)」を受けてのようだ。

気になったのは、都道府県別の無人駅比率。 朝日は

 都道府県別の無人駅の割合(20年3月時点)をみると、最も割合が高いのは高知の93・5%。徳島(81・6%)、長崎(79・6%)と続いた。30道県で無人駅の比率が5割を超え、特に北海道、東北、北陸、中国、四国、九州などの地方が目立った。

 無人駅の割合が低いのは埼玉(3・0%)、東京(9・9%)、大阪と神奈川(ともに16・0%)。沖縄は、県内を唯一走るモノレールの19駅すべてが有人で無人駅はなかった。

と書いている。高知や長崎の比率が高いのは、路面電車の停留所を無人駅に計上しているからではないか。東京と大阪が意外に高いのも同様だろう。改札口がなく、車内で運賃を収受する路面電車は、もともと停留所に駅員の配置を想定しない。これを無人駅の比率に含め、無人駅が増加していると書くのは、ミスリーディングだと思う。

朝日の記事は、国土交通省の資料にはない都道府県別の無人駅数・駅総数(2020年3月)を記載している。これをもとに、路面電車の停留所はすべて無人駅という前提で、路面電車の停留所数を分母と分子から差し引いて無人駅比率を再計算した(下表の比率B)。路面電車の停留所に含めたのは、東京都電、札幌、函館、熊本、鹿児島の各市電と、東急世田谷線富山地方鉄道市内線(富山港線を含む)、万葉線阪堺電軌、岡山電軌、広島電鉄(軌道)、伊予鉄道市内線、とさでん交通、長崎電軌。京阪京津線石山坂本線は自動改札機や券売機を設置しているようなので含めていない。 

都道府県 無人駅数 駅総数 比率A 順位 停留所数 比率B 順位 事業者別駅数
北海道 365 512 71.3% 10 49 68.3% 14 513 -1
青森県 106 154 68.8% 16   68.8% 12 160 -6
岩手県 126 180 70.0% 14   70.0% 10 181 -1
宮城県 74 175 42.3% 36   42.3% 36 176 -1
秋田県 93 147 63.3% 24   63.3% 21 147 0
山形県 85 122 69.7% 15   69.7% 11 122 0
福島県 117 189 61.9% 26   61.9% 23 191 -2
茨城県 58 133 43.6% 34   43.6% 34 138 -5
栃木県 48 113 42.5% 35   42.5% 35 118 -5
群馬県 68 140 48.6% 31   48.6% 31 139 1
埼玉県 7 237 3.0% 46   3.0% 46 241 -4
千葉県 71 353 20.1% 42   20.1% 42 359 -6
東京都 75 761 9.9% 45 39 5.0% 45 774 -13
神奈川県 61 381 16.0% 44   16.0% 43 387 -6
新潟県 124 200 62.0% 25   62.0% 22 206 -6
富山県 135 192 70.3% 12 62 56.2% 27 198 -6
石川県 46 72 63.9% 22   63.9% 19 77 -5
福井県 101 133 75.9% 6 6 75.9% 6 130 3
山梨県 40 73 54.8% 29   54.8% 28 74 -1
長野県 149 258 57.8% 28   57.8% 26 267 -9
岐阜県 144 188 76.6% 5   76.6% 4 189 -1
静岡県 107 224 47.8% 33   47.8% 33 226 -2
愛知県 240 496 48.4% 32   48.4% 32 503 -7
三重県 152 230 66.1% 20   66.1% 17 240 -10
滋賀県 51 125 40.8% 37   40.8% 37 126 -1
京都府 80 251 31.9% 40   31.9% 40 250 1
大阪府 83 518 16.0% 43 40 9.0% 44 525 -7
兵庫県 118 383 30.8% 41   30.8% 41 391 -8
奈良県 46 130 35.4% 39   35.4% 39 131 -1
和歌山県 78 123 63.4% 23   63.4% 20 125 -2
鳥取県 53 75 70.7% 11   70.7% 9 75 0
島根県 70 93 75.3% 8   75.3% 5 94 -1
岡山県 124 165 75.2% 9 16 72.5% 7 166 -1
広島県 156 252 61.9% 26 56 51.0% 30 248 4
山口県 118 152 77.6% 4   77.6% 3 154 -2
徳島県 62 76 81.6% 2   81.6% 2 77 -1
香川県 69 102 67.6% 19   67.6% 15 102 0
愛媛県 100 146 68.5% 17 27 61.3% 25 146 0
高知県 159 170 93.5% 1 76 88.3% 1 173 -3
福岡県 138 358 38.5% 38   38.5% 38 360 -2
佐賀県 52 79 65.8% 21   65.8% 18 81 -2
長崎県 109 137 79.6% 3 38 71.7% 8 138 -1
熊本県 113 161 70.2% 13 35 61.9% 23 161 0
大分県 47 87 54.0% 30   54.0% 29 87 0
宮崎県 52 76 68.4% 18   68.4% 13 76 0
鹿児島県 94 124 75.8% 7 35 66.3% 16 124 0
沖縄県 0 19 0.0% 47   0.0% 47 19 0
合計 4564 9465 48.2%   479 45.5%   9585 -120

高知県無人駅比率トップは変わらないかったが、93.5%から5.2ポイント改善した。長崎県は7.6ポイント改善して、2位から8位になった。比率Bのトップ3は、高知、徳島、山口となった。また、東京は4.9ポイント、大阪は7.0ポイントそれぞれ改善した。

なお、上表の駅総数は、筆者が事業者別に集計しているデータと異なっている。一致したのは、秋田、山形、鳥取、香川、愛媛、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の10県だけ。複数事業者の共用駅のうちJR2社の共用駅や相互乗り入れの境界駅を同じ駅とカウントしているためだろうが、その基準がわからない。山梨県が-1なのは、甲府を共用駅として数えているためだろうが、直通列車がある大月は別駅か。岩手県のJRと3セクの共用駅は盛岡、好摩、釜石、宮古、久慈と5駅あり、うち盛岡と好摩は直通列車があるが、-1の駅はどこ。石川県の-5は、金沢、津端、七尾、和倉温泉とあと1駅はどこかなど、推測できないところが多い。また、群馬、福井、京都、広島の総数が事業者別の数字より多いのも謎。筆者の集計が間違っているのか。

追記(11月25日):表に順位を記載した。

追記2(11月27日):停留所数に漏れていた福井鉄道福武線の軌道区間6駅を追加して、比率Bを再計算した。

予告:第12回全国のJR駅五番勝負は、12月4日(金)21時開始します。