新潟市BRTスタート

新潟市都心部の新たな交通システムとして導入したBRTが9月5日運行を開始したが、遅れや事故、運賃の過収受などのトラブルでさんざんなスタートだったようだ。新潟交通のサイトにはお詫びの記事が立て続けに掲載されている。

そしてICカードシステムの不具合が復旧しないため、【重要】本日(9月7日)一部路線を除き運賃収受を行ないません。という事態に至った。
新潟市のBRTは、気仙沼線大船渡線のBRTや鹿島鉄道廃線跡のBRTと異なり、専用の走行路をもたない。海外で普及している連接バスとバス専用車線による都市型BRTに近いが、道路中央部のバス専用車線は、今回開業した新潟駅〜古町〜新潟市役所〜越後線白山駅〜青山間のうち、新潟駅〜古町間に設けただけである。遅れは連接バスに乗客が殺到したためというが、専用車線の未整備は定時運行の障害になると思う。
新潟市がBRTを導入した意図は、新たな交通システム

BRTの導入と併せて乗り換え拠点などを整備し、まちなかのバス路線を効率的に再編・集約し、生じた余力を郊外路線の維持・拡充にあてながら、全市的なバス路線再編を図る「新バスシステム」により、将来にわたって持続する公共交通の実現を目指します。

というバス路線の再編にあるようだ。これまで都心部に多くの郊外路線が乗り入れ、がら空きのバスが団子運転していたが、これを結節点でBRTに集約し、効率化を図るというものである。このため、路線集約により乗換えが必要となる利用者に対しては、これまでと同額の運賃で利用できる「まち割60」という割引を導入した。バスICカード「りゅーと」または「のりかえ現金カード」で60分以内に乗換えた場合に適用され、東京メトロのラッチ外乗継時と同様、1回目の降車時に乗車区間の運賃を、2回目に既収額との差額を引き落とす。ICカード精算の不具合の一つは、バス停名が異なる乗り換えポイントで「まち割60」が適用されなかったことだという。日比谷駅からラッチ外で有楽町駅に乗継いだ時、改めて初乗り運賃を引き落としたようなもので、このシステムにバグがあったらしい。
なお「のりかえ現金カード」とは、SuicaなどのICカードや現金での利用者が交付を受けて使用するもの。現金カードはポイント付与がないため、多くの利用者はJR用とバス用の2種類のICカードをもつことになるのだろう。
新潟市の「市長への手紙」新潟市交通インフラBRT導入計画についてに、

新潟市BRT第1期導入計画」では、今後の進め方について、平成31年度ごろのBRT第1期完成型の実現に向けて段階的に取り組み、新潟駅高架下交通広場の供用する目処がつくころには、社会環境を十分に考慮し、LRTへの移行を判断することとしています。

という市からの回答が掲載されている。新潟駅の高架化が完了し、交通広場が供用されるは2022年とのことだが、2014年10月13日の記事で書いた、新幹線から羽越本線特急へのホーム対面乗り換えとともに、注目される。
追記(9月8日):新潟交通7日付お知らせによると、ICカードシステムの不具合は解消したが、システム検証のため本日8日も運賃収受を行わなかったらしい。
新潟在住の知人からメールで情報を得たので、昨日の記事を補訂する。
現在は暫定開業ということで、バス専用車線は新潟駅〜古町間にも設けられず、全区間一般道路を通行している。ただしこの区間は、もともと車の流れがよく、専用車線がなくとも定時運行への影響はほとんどないとのこと。今回の遅延は、降車時の運賃精算に手間取っていることと、バス停が集約され、朝のラッシュ時には同じバス停から短間隔でバスが発車するため(同時分に3本の発車もある)、後続のバスがつかえてしまうことの2点だという。
降車時の運賃精算が遅れの原因になるとはある程度予想していた。欧州では、このため信用乗車方式(購入した乗車券をチケットキャンセラーで刻印する自己改札と抜き打ちの検札による高額のペナルティ)を採用している。日本では、ICカードによる運賃収受がこれに代替すると思っていたが、現金支払いや運賃表示のトラブルもあり、うまくいかなかったようだ。知人によると、連接バスの降車口にはICカード読み取り機が左右に2台設置されていて、2列降車ができるようになっている(現在は不具合のため稼働していない)ので、この効果に期待しているという。また専用車線の完成後に主要停留所で運賃の車外精算を行うことが検討されているようだ。
運賃精算の不具合については、今回導入された「まち割60」に加え従来からの30分以内の乗継割引も残っており、かなり複雑なプログラムになっているようだ。3本のバスを乗り継ぐ場合は、往復の運賃が異なることもありそうだという。