乗車券の発売範囲

2011年4月23日の記事

駅に設置されている指定券券売機では、指定券と同時使用する場合でなくても、他駅発や翌日以降を有効開始日とする普通乗車券を単独で購入できる。おかげで乗車券の分割による運賃の節約が容易になったが、旅規上の取扱いはどうなっているのだろう。

と書いた。これに対し、読者からメールで「これは東日本エリアだけで、JR西日本みどりの券売機では、他駅発や翌日以降を有効開始日とする普通乗車券は単独で買えない。北海道と九州も同じ」との指摘を受けた。メールをもらったとき、たまたまJR西の管内にいたが、指定券券売機が設置されている駅はあまりない。当日立ち寄った山陽新幹線の停車駅2駅にはなく、その後別の駅でMV機を見つけ、乗車券単独の購入をトライしたら、日付の選択は可能だが、発駅は指定できない。JR東海の駅でも同じだった。
JR東日本以外は旅規の規定に忠実で、他駅発の乗車券は券売機だけでなくみどりの窓口でも単独で購入できないのことである。その規定とは、

(乗車券類の発売範囲)
第20条 駅において発売する乗車券類は、その駅から有効なものに限つて発売する。ただし、次の各号に掲げる場合は、他駅から有効な乗車券類を発売することがある。
(1) 指定券と同時に使用する普通乗車券を発売する場合。
(2) 乗車券(通学定期乗車券を除く。)を所持する旅客に対して、その券面の未使用区間の駅(着駅以外の駅については、途中下車のできる駅に限る。)を発駅とする普通乗車券を発売する場合。
(3) 駅員無配置駅から有効となる普通乗車券、定期乗車券又は普通回数乗車券を、その駅員無配置駅に隣接する駅員配置駅において発売する場合。
(4) 団体乗車券又は貸切乗車券を発売する場合。
(5) 急行券、特別車両券、寝台券、コンパートメント券及び座席指定券を発売する場合。ただし、立席特急券及び特定特急券にあつては、別に定める駅からのものに限つて発売することがある。

8年ほど前、鶴橋駅のMV機で、鶴橋・大津間の乗車券を、大阪、京都で3分割して購入したことがある。記憶は定かでないが、このときは「乗り換え案内から購入」で新幹線経由として発券したのかもしれない。しかし購入したのは3枚の普通乗車券だけで、特急券は購入しなかった。
ところで最長片道切符の旅行記を読むと、乗車券を発駅で購入したケースはないようだ。国鉄時代の宮脇俊三氏(1978年)は交通公社(渋谷駅旅行センター)。まず渋谷駅の出札窓口で発券を頼んだところ

...窓口氏が戻ってきて
「ここでは売れません」と言った。なぜかと訊ねると、
「指定券と同時発行の場合以外は当駅では東京都区内駅を起点とする乗車券以外は発行できないことになっておりますので」
と「旅客営業規則」のどこかの条文を暗誦してきたような口調で答えた。

と断られた。同じく国鉄時代の種村直樹氏(1985年)の発券は「蒲田駅旅セ」。

国鉄本社旅客局勤務時代に顔なじみだった島野和昭蒲田駅長に無理をお願いし、蒲田駅旅行センターに発券を引き受けてもらった。

と、VIP待遇を受けたようだ。旅客営業取扱基準規程の第27条

(乗車券類の発売範囲の特例)
第27条 次の各号に掲げる乗車券類は、規則第20条第1項の規定にかかわらず、他駅から有効となるものを発売することができる。
(1) 普通乗車券
  駅長において特に必要と認めたとき
(後略)

が適用された。
原口隆行氏(2005年)はフレキシブルなJR東日本南船橋駅である。最近の最長片道切符旅行のブログ記事(ともに2013年)によるとよいころさんJR西日本草津駅SHIOSAI_4031さんJR九州博多駅と旅規の規定に厳密な会社だが、特急券の同時購入により発券されたのだろう。

追記(8月31日):最長片道切符を出発駅で購入したケースはないと書いたが、実例を見つけた。8月20日に最長片道切符旅行を完了したAsaPi!さんは乗車券を稚内駅で購入したようだ。また1992年様似から肥前山口までのルートで旅行したまるよしさんは、様似駅に現金書留を送り発券を依頼したが、様似駅委託駅のため長距離切符は発行できず、管理駅である浦河駅の発行となったという。