続・つり革の形と数

7月28日の記事にコメントいただいたさくら夙川さんは、△型つり革に関する二つの文献を紹介してくれた。
一つは、「地下鉄 ―ただ今モグラ族1000万― 毎日新聞社会部・編」(コーキ出版、昭和53年)によると、△のつり革は1960年代後半、営団地下鉄が起源らしい。

 四十二年、新造車両にユリア樹脂の吊り輪が登場した。「握る部分が細く、握りにくい」「なぜか疲れる。」これまたあまり評判がよくなかった。当時、営団車両・運転担当理事だった石原米彦地下鉄ビルディング社長が「デパートの電気売り場に行ってアイロンの握りを握ってこい」と車両部設計課に命じた。握りやすい、疲れない”地下鉄名物の第二の吊り手”をつくれというのだった。
 「アイロンの握り、確かにあの太さが一番握りやすかった。で、アイロン式を採用。このほか、人間工学的な面から一年がかりで研究しました」(里田設計課長)
 この結果、――まん丸の吊り輪は握りにくい。むしろ窓に向かって立った乗客が、目の高さあたりで吊り手を握り、手の甲が進行方向か後部方向に向くと、余り疲れない。こうして新型は、おむすび型とし、握る部分を窓に直角に付けた。樹脂のなかでも強く、またつくりやすいポリカーボネート製。これだと四四〇キロの重量に耐えられるという。
 四十三年、新造の銀座線車両に初採用。その後、丸ノ内線東西線日比谷線などの新造車両に広がっていった。好評。実用新案登録もした。札幌、神戸、横浜各市営地下鉄でも使い始めた。
 ただ欠点は、値段が高いこと。吊り輪一体三〇〇円に対し、おむすび型は一一〇〇円。で、「経済的に全車両をおむすび型にできない」(営団検修課)とか。

もう一つは、鉄道技術研究所の雑誌RRRの2012年12月号の記事

1972年(昭和47年)から旧国鉄で、広告付きの三角型のものが使われるようになりましたが、ひと月もたたずに壊れるケースが頻出し、鉄道技術研究所で原因が調査されました。破損部分は、ベルトと手掛けの境目や三角形のコーナーであり、ユリア樹脂の割合が高い製品で破損が大きいことがわかりました。その後旧国鉄の手掛けは丸型に戻っています。(中略、ポリカーボネート素材との比較検討を行い)このような素材の改良を受けたものか、1986年頃には、三角型も標準的に用いられるようになっています。

ところで、△型の採用は東高西低である。JR東日本では、キハ48など旧型車両のつり革が続々△型に改造されているのに、JR東海313系JR西日本の223系などの主力車両の新造車はいまだに○型である。当時と比べると、ポリカーボネート樹脂の生産量は飛躍的に増加し、値段も下がっていると思うのだが。